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〈22〉福祉施設での法要

※文化時報2021年12月6日号の掲載記事です。

 「クリスマスやハロウィーンよりも、ご利用者さまにとってはお盆やお彼岸の方がよほど大事ではないでしょうか?」

 先日、認知症介護指導者に向けて講義をした。オンラインなので参加者の顔はほとんど分からない。主催者によると80人ほどが聴講してくれていたようだ。

 多くの福祉施設では、クリスマス会は定番だろう。最近はハロウィーンも盛んになってきた。そこへ「それは誰のためにしているのでしょうか?」と疑問を投げ掛けたのである。

 実際に福祉施設で盂蘭盆会(うらぼんえ)法要を勤めた実例を、写真を示しながら伝えた。認知症が進んで息子や娘の顔も分からなくなった高齢者もたくさんいる。その高齢者がお焼香をする姿や震える手を合わせようとする姿を見て、若い職員が感動したという話を紹介した。

 後日、主催者から参加者の感想が送られてきた。「信仰の押し付けにならないかと考えて仏事を避ける傾向があるが、大事なものが何かを考え直すきっかけになった」「重度の認知症の人でも、仏様に手を合わせるということが最後まで残っている事例があった」など反響の大きさを感じた。また「うちではお花まつりや報恩講も施設の行事としている」という頼もしい感想もあった。否定的な意見は一つも見当たらない。

 福祉施設にはクリスチャンや無宗教という人も入所されているだろう。もちろん配慮は必要だと思うが、だからと言ってお盆やお彼岸に法要をしない理由にはならない。ただ多くの福祉施設は、クリスマス会はできるが法要は職員だけではできないのが本音だろう。要はお坊さんの協力が必要ということだ。

 お坊さんが病院を訪れるのはまだまだハードルが高いかもしれない。しかし、福祉施設なら歓迎してくれるところも多いはずだ。

 今回のような講義の後には必ずこんな感想がくる。「うちの施設にも来てくれるお坊さんはどこにいるのですか?」。気持ちがあるお寺は、ぜひチャレンジしてほしいと思う。(三浦紀夫)

 三浦紀夫(みうら・のりお)1965年生まれ。大阪府貝塚市出身。高校卒業後、一般企業を経て百貨店の仏事相談コーナーで10年間勤務。2009年に得度し、11年からビハーラ21理事・事務局長。21年には一般財団法人安住荘の代表理事に就任した。上智大学グリーフケア研究所、花園大学文学部仏教学科で非常勤講師を務めている。真宗大谷派瑞興寺(大阪市平野区)衆徒。
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