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忖度のできる”気の利く相棒”のようなAIを作りたい。【2020/11/8放送_慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授 栗原 聡さん】

Fm yokohama(84.7MHz)から毎週日曜日深夜24:30~25:00にお送りするラジオ番組『文化百貨店』。今週は、慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授 栗原 聡さんをお迎えして、AI研究の今、AI技術を使って手塚治虫さんの作家性を蘇らせるプロジェクト『TEZUKA2020』について、たっぷりお話をお伺いしました。

【パーソナリティ】
セイタロウデザイン代表・アートディレクター 山﨑晴太郎(@seiy

【今週のゲスト】
慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授 栗原 聡さん

慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。博士(工学)。NTT基礎研究所、大阪大学大学院情報科学研究科、電気通信大学大学院情報理工学研究科などを経て,2018年から現職.電気通信大学に国立大学では初となる人工知能先端研究センター(初代センター長)を設立。 株式会社オムロンサイニックスエックス・株式会社オルツ・株式会社VOST技術顧問、情報法制研究所・上席研究員など.人工知能学会理事・編集長などを歴任.著書『人工知能と社会』(オーム社),翻訳『群知能とデータマイニング』(東京電機大学出版),編集『人工知能学事典』(共立出版)等多数。

【今週のダイジェスト】

▶︎現時点でのAIの技術

人工知能・AI研究の第一人者で、大学での研究や指導などをされている栗原教授。

“人工知能・AI”と聞くと、目新しい言葉と思いがちですが、65年ほど前にはこの言葉があったのだとか。コンピューターの開発と歩調を合わせるように発展していった分野なのだと言います。

また、現在は“第三次人工知能ブーム”と言われているそうです。これまでの2回のブームは、技術にインフラが追い付いていなかったので、ブームがすぐに下火になったという歴史があるようですが、今回はコンピューターの処理能力がアップして技術を使えるようになったので、研究者だけではなくビジネスサイドやエンジニアリング界隈でも話題になっているようです。

人工知能というと自ら考えて行動するものを想像しがちですが、栗原教授は「現在のAIは、IT技術の延長線と思った方が良い」とのことで、電卓の延長上にあるものなのだとか。AI脅威論なども囁かれていますが、現時点では人間が使いこなすしかなく“便利な道具”程度に考えおくのが、ちょうど良いようです。

▶︎栗原教授が目指すAI

現在、人工知能=AIと呼ばれているものも、まだまだ道具の域を出ていないということですが、栗原教授は命令されてから動くのではなく、忖度のできる”気の利く相棒”のようなAIを作りたいと考えていらっしゃるそうです。

その1つが、人間が無意識のうちに起こしている行動パターンを読み取り、そのパターンをロボットが認識し、人よりも少し先に行動するという『デスクトップ作業支援システムAIDE』。

例えば、ホチキスが欲しいと思ったタイミングで、先にホチキスを用意して持ってきてくれるというものなのだとか。

また、みじん切りなど料理の過程で面倒に感じたりする作業を、手伝ってくれるアシスタントロボットも研究開発されていて、便利というだけではなく、料理をする楽しみを保ちながらお手伝いをしてくれるロボットを目指して研究を進めていると言います。

栗原教授が目指す人工知能は、本当の意味で人間と”相棒”という関係になれるものだそう。単に目的を果たすための道具ではなく【メタ目的な行動】、つまり人間の行動の意図を読み取り、人間を支えるような自主性を持つロボットが必要だと考えているのだとか。

例えば、来客前に部屋の片づけを頼んだ時に、窓のサンを掃除し始めるのではなく、目立つ部分の片づけを優先できる気の利いた相棒にするためには、このメタ目的を理解できるAIを目指していらっしゃるのだそうです。

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▶︎世界初AI×人間のコラボレーション『TEZUKA2020』

TEZUKA2020』は、手塚治虫さんの作家性を蘇らせるというプロジェクト。栗原教授はAI技術の監修で参加をされました。

現在のAI技術では、クリエイティブは苦手な分野ということで、人間にとっても難しい“0からの発想”のきっかけになる部分を生み出すことに焦点を当てて、AIを役立てたと言います。

とは言え、手塚治虫作品を読ませようにも、AIは漫画を理解できないため、人間がノベライズ化したものを読み込ませストーリーを学ばせたのだとか。そういった苦労を重ねながら、AIが100個のあらすじを作り、プレゼンをし、そこから作られたのが『ぱいどん』。

実は、栗原教授をはじめとするAIチームが出来の良いと思っていたものではなく、奇抜だと感じていたあらすじが採用されたのだとか。

これには、手塚治虫さんのご長男であり、TEZUKA2020の総監督的な役割を果たした手塚眞さんの意向が大きかったようで、創造性を掻き立てるには、完成されたものを与えられるのではなく、粗削りな部分を埋め合わせるようなことが必要という理由があったそうで、この言葉に「人間と共存する人工知能を作るには完全なものを作ってはダメかもしれない」という風に考えさせられる出来事だったようです。

このようにAIが生み出したあらすじとキャラクターデザインを基に、人間が展開とコマ割りなどの作画を行い完成した『ぱいどん』。下記のサイトで公開されていますので、未読の方はぜひご覧ください。

【今週のプレイリスト】

▶︎栗原 聡さんのリクエスト

『空が高すぎる』 小田和正

▶︎山崎晴太郎のセレクト

『We wanted less』 Nick Zammuto

といった所で、今週の文化百貨店はここで閉店。

山崎がぜひお話を聞きたいと思っていた漫画『ぱいどん』の創作プロセスを聞くことができて、とても面白かったですね!次回も栗原聡教授をゲストにお迎えしてAIとヒトの関係性についてたっぷりお話を伺いたいと思います。

【次回11/15(日)24:30-25:00ゲスト】
慶應義塾大学理工学部管理工学科 教授 栗原 聡さん

また日曜深夜にお会いしましょう!

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