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詐欺被害に遭いながらも田中光学Tanar 35mm F2.8 L39マウントのオールドレンズを手に入れた

私はアンチ・ライカ派である。いかにライカが素晴らしいカメラであるか、みなさんは口々に声高に大はしゃぎで語っている。確かに歴史があり、技術があり、ファンがいる。大メジャーである。野球なら巨人軍。だから私は大嫌いだ。
自分がそんなに大枚をはたいたことを自慢したいのだろうか?
ビートルズが世界中の音楽シーンで大メジャーであった時代を、私は同時代として経験していた中学生から高校生だったが、みんなが誉めまくり、夢中になって大騒ぎするのを、冷ややかな目で眺めていた。嫌味で生意気なガキである。ビートルズよりストーンズ、さらにTーREXを敢えて聞いていた。
カメラ選びも同様で、オールドカメラを、レンジファインダー機を買う時も、ライカは高価だから、メジャーすぎるから、という理由で、フランスのFOCA、ロシアのFED、KIEV、国産ではニッカとかミノルタ35などを使っていた。安価な偽ライカである。
そして現在使用中なのが国産最後のレンジファインダー機・キャノン7Sである。L39マウントはそれこそ世界中のレンズが使える。そしてズブズブとL39のレンズ沼にはまってしまった、というわけである。

買ったり、ヤフオクに流したりして、結局現在の私の手元にあるのはこの4本である。フォクトレンダー28mmF3.5、タナー35mmF2.8、フジノン50mmF2.8、キャノン100mmF3.5である。いずれも出来るだけコンパクトで軽いレンズを探し求めた結果だ。それもライカ系のレンズを一切嫌ってのことである。
ライカが徹底的に嫌いになったのはパナソニックにライカがOEM生産を依頼していたという事実を知ったからである。パナソニックLUMIXの高級コンデジが外装を換え、ロゴを張り付ければ一桁上の超高級コンデジに化けるからだ。
伊勢丹メンズ館の最上階や銀座のど真ん中になるライカショップを眺めてみると良い。ただ単にフィルムに画像を記録するだけの機械がなんであんなに高いのか。撮影のために機材をガンガン駆使する写真家、カメラマンの本来の使い方が出来ない。カメラはたかが道具なのである。

珍品レンズを探す中で、一番難しかったのが35mmの広角である。最初は安価なロシアンレンズを使っていたが、後玉が強烈に飛び出しているので、取り扱いに神経を使う。写りも良かったのだが、愛着が湧かなかった。そしてヤフオクで売却し、次の35mmレンズを日々あれこれとヤフオクで探していたのである。
やはり珍しいレンズがいいわけで、キャノン、コムラーは安いけれども愛せない。キャノンには妙な私的偏見があって、どうもチャラい感じである。(7Sや100mmを使っているにもかかわらず、だ)ライカの35mmはクソ高いから論外である。
そんな時に、戦後数年しか存在しなかった幻のようなカメラ・レンズメーカーの田中光学という会社を知るわけで。このタナー・レンズはあまり知名度はないが珍品なのでありました。
ある日、ヤフオクをネットサーフィンしていたら、田中光学タナー35mmが出品されていた。「おお、これがあの田中光学か・・・」と思い、ぎりぎりで入札してゲットしようと考えていた。しかしほんのわずかな気のゆるみから締め切り時間を忘れてしまい、締め切りの何分か後に大慌てでサイトを見ると約1万9千円で見事落札されていた。ああああーー、ミスった!何度悔やんでも悔やみきれないミスを経験したのだった。
その後、田中光学の35mmを何度も何度も検索して、出品されていないかどうかを調べる、虚しいネットサーフィンを続けていた。
またまたある日、田中光学タナー35mmが1万6千円だか1万8千円かで出品されていた。大喜びで飛びついてさっそく落札。お金を支払って待っていたが、一向にレンズが届かない。後で、この出品者の他のヤフオク出品を調べるとほとんどまともなものがない。変だなーとさらに調べてみると、その会社のサイトはうわああ・・・怪しげな雰囲気で、タナー35mmはすでに売り切れと表示が出ていた。会社所在地は静岡県、電話番号があったので電話してみると怪しい日本語で「わからない」と繰り返す。たぶん中国人である。欲に釣られて騙された、見事に詐欺にやられたのである。2万円以下の金額ではじたばたしても手数ばかりかかって、時間もエネルギーも無駄にする。結局、あきらめて、放置しておいた。
時々、ヤフオクを眺めていたが、ニッコールの35mmぐらいしか、そそられるレンズはなかった。ちゃんとしたレンズの価格は4万円くらいだったか。ニッコールのL39、35mmレンズだって十分珍品なのだけれど。 

その痛手もケロリと忘れて、1-2年ほど過ぎたが、つい先日、またまたタナー35mmを発見したのである。約4万8千円である。タナーの広角ならこれくらいの価格はするだろうと予測していたので、まあまあ納得しつつ、出品者の他の出品もチェックする。カメラ類を大量に出品し、返品可能とあるので大丈夫かなー、ということで落札し、振り込んだ。

無事到着しました。きれいなレンズであった。作動も円滑。さっそくSONY α7Ⅱに取り付けて試写してみたのだった。よかった!

なぜかレオタックスの純正レンズキャップがはまるのです。

試写の写真で、自分の子どもとか愛犬とか、女の子とかを撮るのはやっぱりやめた方が良い、と個人的に思う。私が試写するのは、森や林、天然物が中心だ。その方が細かい描写や空気感、色調や雰囲気が分かるのである。



35mmが欲しかった理由は、キャノン7Sは35mmの画角のファインダーを内蔵しているから。この機構があるので、広角を付けても、アクセサリーシューに外付けファインダーを付けなくてもいい。一応、他の50mmしかないレンジファインダー機を使うことも予想しつつ、小型の外付けファインダーを持ってはいるが、やはりかさ張るものだから。

結局このタナー35mmF2.8を入手するのに、詐欺で盗み取られた金額も加算すると、¥66,000-もかかってしまった。




逆光で撮ったり、モノクロで撮ったり、こんな感じの写りである。苦難の末に入手した田中光学製タナー35mmF2.8レンズである。満足しているけれど、それはたぶんみっともない自己満足に過ぎない。言ってみればL39レンズ沼での情けない泥んこの格闘としが見えないことだろう。






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