アップルのiMessageにポスト量子暗号が登場する理由とは

アップルは、量子コンピューターの脅威に備えて、iMessageに新しい暗号化プロトコル「PQ3」を導入すると発表した。これは、iMessageの歴史上最も重要なセキュリティのアップグレードと言われている。

量子コンピューターとは何か？ 量子コンピューターとは、従来のコンピューターとは異なる原理で動作するコンピューターのことである。量子コンピューターは、量子力学の法則に従って、0と1の両方の状態を同時にとることができる量子ビットと呼ばれる単位を使って、複雑な計算を高速に行うことができる。量子コンピューターは、新薬の開発やバッテリーの改良など、さまざまな分野で革新的な発見をもたらす可能性があるが、一方で、現在の暗号化技術を破ることもできると考えられている。1

ポスト量子暗号とは何か？ ポスト量子暗号とは、量子コンピューターによる攻撃に耐えることができる暗号化技術のことである。現在、多くのメッセージングアプリやウェブサイトは、RSA暗号や楕円曲線暗号などの公開鍵暗号方式を使って、データのやりとりを保護している。しかし、これらの暗号は、量子コンピューターが実用化されれば、簡単に解読されてしまう可能性がある。そのため、量子コンピューターの脅威に対応するために、新しい暗号化アルゴリズムが必要となる。2ポスト量子暗号は、そのような新しい暗号化アルゴリズムの総称である。

アップルのPQ3とは何か？ アップルのPQ3とは、iMessageに搭載されるポスト量子暗号プロトコルのことである。3PQ3は、既存の楕円曲線暗号と、Kyberと呼ばれるポスト量子暗号を組み合わせたハイブリッドなデザインを採用している。4これにより、攻撃者は、両方の暗号を解読しなければ、iMessageの通信を傍受できない。また、PQ3は、メッセージの送り手と受け手がオフラインでも、安全に鍵を交換できるようになっている。5さらに、PQ3は、継続的にポスト量子暗号鍵を変更し続けることで、将来的に量子コンピューターが進化したとしても、過去のメッセージが漏洩するリスクを低減することができる。

アップルのPQ3の意義とは何か？ アップルのPQ3の意義は、量子コンピューターの実用化に先駆けて、iMessageのセキュリティを強化することである。iMessageは、世界中で何十億もの人々が使っているメッセージングアプリであり、医療記録や金融取引など、機密性の高いデータもやりとりされている。6そのため、量子コンピューターによって暗号が破られることは、個人のプライバシーや社会の安全に大きな影響を与える可能性がある。アップルは、そのような危機を防ぐために、PQ3を導入することで、iMessageのユーザーに対して、最高レベルの暗号セキュリティを提供することを目指しているのである。

アップルがiMessageに「ポスト量子暗号」を導入する理由