万聲緑下に満ちて(xissa)

最後にすずめはクスノキの
みんなと暮らしたなつかしい
やさしい枝を探し当て
ようやく羽根を休めました

町のあかりがつき始め
あたりは暗くなりました
葉かげはほのかに温かく
すずめは少しなきました
そうして力尽きました

すずめはいなくなりました
だいじにしていた思い出も
エーテルのように消えました
ひとつの命はあっけなく
消えたことさえ消えました

いくつも生まれいくつも去り
あたらしい声が満ち 引いて
うたわれた歌もうたわれなかった歌も
みんな等しく消えました
クスノキは
今年の若葉をつけました

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