距離感(伊勢崎おかめ)

私には、現在、小学生の息子がいる。やむを得ず、2度もPTA関係の役員になってしまい、他の役員である保護者(主に母親)と連絡を取らなければならないことがあった。その際、メールやLINEを使用するのだが、相手がどういう人だかよくわからないまま、いきなり連絡をとらないといけない。簡単な文章のやりとりといえども、全く知らない人との距離感がつかめず、意外と難しいものであると痛感した。

文章のやりとりでは、保護者は、以下のパターンに分類される。
1.丁寧な文章に対し、丁寧な文章で返してくる人
2.丁寧な文章に対し、くだけた文章で返してくる人
3.くだけた文章に対し、丁寧な文章で返してくる人
4.くだけた文章に対し、くだけた文章で返してくる人

1.について
全く知らない者同士なので、至極真っ当な大人の対応である。絵文字も何もなくシンプルで、用件のみを伝え合うのでわかりやすい。いわばビジネスメールである。

2.について
こちらの防御を破ってこようとする人である。「私は敵ではありません」アピールのためなのか、絵文字やスタンプを乱発するため、非常に読みづらく、質問へのはっきりとした返答が記載されていない場合が多い。こういった人は、純粋に心根の良い人の場合もあるし、ただ頭が悪いだけの場合もあるし、モンスターペアレント気質の人である場合もある。ちなみに、余談ではあるが、こういう人が使いがちなLINEスタンプは「かわいい主婦の一日」シリーズである(実際の本人は、うっすら口ヒゲが生えていたりして、たいしてかわいくはないことがほとんどであるが)。

3.について
「この人は話が通じそうだ」という感じの人に対して、絵文字を使い、ちょっとフレンドリーな文章を送ってみるも、タイトルは「Re:○○の件」とこちらが送信したタイトルと文章が残ったままで、絵文字も何もない「了解」と書かれただけの非常にそっけない返信がくることがある。残念ではあるが、その人なりのよく知らない人への防御態勢なのであろうから、やむを得ない。以後は、相手の対応に合わせて対応するほうが無難である。

4.について
「この人は話が通じそうだ」というこちらの読みが当たった場合である。どこまで冗談が通じるのか、掘り下げて試してみる価値はある。うまくいけば、友達になれる可能性もある。大博打ではあるが、「ガスコンロの火が衣服に燃え移って死んじゃった、ほら、あの…」とふってみて「浦辺粂子」と返ってくる人であれば、大当たりである。

以上の分類について述べたが、実際に会って話してみると、そっけない文章を送ってくる人が非常にフレンドリーであったり、くだけた感じの文章を送ってくる人がカタブツだったりして、戸惑うこともある。

が、そもそも、よく考えると「同じ年度に子供を産んだ」ということしか共通点がない者同士で、仲良くなれるほうがおかしいのだ。いずれにせよ、保護者同士の付き合いから思わぬトラブルに発展することもあると聞くので、たとえ、相手が理不尽な態度をとってきたとしても、相手を刺激せぬよう、穏便にやり過ごすのが無難かもしれない。いくら腹が立っても、「あなた口ヒゲ剃ったらどうですか?」等と言ってはいけない。以上が、2度の役員経験から私が学んだことだ。お悩み中のどなたかのお役に立てば幸いである。

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