アウシュビッツ銭湯 (g-udon)

丸刈りで縦縞の服を着た若者が舞台袖から登場
「ここがアウシュビッツかぁ。さっそく入ってみよっと」
(ガラガラッ)と言いながら両手で扉を開ける
番台「ようこそアウシュビッツへ」
若者「オヤっさんお代いくら?」
番台「大人600円だよ」
若者「じゃあハイっ」
番台「毎度ありぃ」
(脱衣所にて)
若者「いやぁ、ホロコースト線の電車激混みだったなぁ。すし詰めってもんじゃないよ、オヤっさん」
番台「みんなああやってここに来るんだよ。そら風呂にでも入りたくなるわな。ははは」
若者「ほんとほんと!もうナチスやばいよ、、」
番台「(周りを警戒する素ぶりをしながら)しーっ、聞こえたらまずいよ、アンタ!ナチスだけに、ヒットラーえられるよっ。なんつって」
若者「がははっ、おもしれぇ。一本取られたよ~オヤっさん」
若者「それはそうと、この銭湯、湯船無いの?この先何にもないじゃん」
番台「ああ、やっと気づいた?そこから壁なんだよ。富士山の絵が描いてあるだけ」
若者「えっ!するってえとこれがあの有名な『富士の壁』?」
番台「アタぼうよっ。気分は天国、なんつって!」
若者「うわっ、やっべー。記念写真撮ってもらっていいっすか?」
(直立不動、無表情、正面から)カシャッ
(直立不動、無表情、右90度で)カシャッ
(直立不動、無表情、左90度で)カシャッ
若者「オヤっさん、ありがとう。もうこれで思い残すことは無いわ」
番台「そりゃあ良かった。じゃあ次そこの扉がサウナだから入んな」
若者「うひゃあ、みんなあっちで待ってたんだっ。バイバイ、オヤっさん!」
番台「おうよっ」
(バタンとサウナ室の扉が閉まる)
番台、トランシーバー片手にレバーをおろす
「ガス噴射準備完了~」
(暗転。サイレンの音が鳴り響く)

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