書き出し自選・不眠の5作品(不眠)

大体の人は初めまして。一部の人はお久しぶりです。

書き出し小説大賞が始まった序盤に細々と送らせて頂いておりました不眠です。
twitterのアカウント名を適当に不眠なんかにしたせいで、疾患や精神についてのアカウントにフォローされがちです。
この度はヌーちゃんからお声掛けを頂きまして、自選に参加させて頂きました。
 当時、天久さんに「常に採用のボーダー上で待機しつつ時に鮮やかな秀作を繰り出す」と寸評を頂いた時は、喜びとともに「俺いつもギリギリやないか…。」という焦燥を感じたことを今でも覚えています。
 
それではそんなに掲載数は多くないですが、自選、始めていきたいと思います。


「もうちょっと男らしい名前を付けてくれても良かったと思うんだよね、ほら、字面だけ見ちゃうと勘違いして期待しちゃうでしょ?」

転校してきた小野の自己紹介は自虐から始まったが、皆の心を掴むには十分効果的だった。
(第10回規定部門 「妹」)

第4回か5回あたりから送り始めて、記念すべき初掲載はこれでした。第10回より規定部門というものが設けられたことで、お題があると少し気楽だなと思う反面、きっと小野妹子ネタは渋滞するという確信がありました。
「仕方ないなぁ、沢山来たから一つくらい選んでおくか…」という審査員の方たちの(少し投げやりな)気持ちに応えられた気がします。
そして、この頃から常に採用のボーダー上まで出張ってはすごすごと帰っていく習慣ができました。


虎穴に入らずんば~の、ズンバのリズムで今宵も僕は踊る。もちろん独りでだ。

(第45回自由部門)

 そもそもズンバというダンスが実在することを知らぬまま、脳内に郷ひろみを降臨させて想像上のズンバを躍らせていました。脳内で鳴り響くコンガ?ボンゴ?まあどれでもいいや。そんな打楽器のリズムがブレイクされる度、「郷です」と脳内のひろみにジャケットプレイをさせていると、謎の高揚感に包まれたことを今でも忘れていません。
 また、この作品のおかげで一部書き出し小説作家の方達から「ズンバ」と呼ばれていた気もします。


嫁が不本意そうに弁当を突き出してくる。かわいい。
(第53回規定部門 「弁当」)

「あんたもうちょっといい男じゃなかったっけ?」泣き笑い、久しぶりに再会した場所は天国でした。
(第54回規定部門 「怪談(2014)」)

 実はこの2作品は連作というか、一つの話の書き出しと、結びの部分でした。
書いてる最中、全体的にあまりしっくりこなくて没にしたんですが、書き出しと結びは気に入っていたので、思い切ってぶった切って両端だけ残しました。僕の中では白身魚のエンガワみたいなもんです。まさか両方採用されるとは。

ツンデレイマジナリー嫁はつよい。つよいのです。


「いたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいのいたいの・・・お前のせいだ。」

(第62回規定部門「痛み」)

 少年期、自分の不注意で些細な怪我をすることが多かったんです。油断が人間の皮を被って生活しているんじゃないかってくらいには。
例えば、階段を二段飛ばしで駆け下りていたら踏み外して転落したり、自動ドアが開く前に突進して額が割れたり、ホームランを打ったつもりで、何故か自分の真上にバットを放り投げて、降ってきたバットが見事鎖骨をクラッシュしたり。そんな時、自分を客観視してこんな風に唱えていました。
文字で見ると、メンヘラ彼女に刺される直前っぽくて気に入っている一編です。


 以上が不眠の書き出し自選となります。
自選するにあたり、第一回から書き出し小説大賞を読み返してみたんですが、鳩とか気球とか最高裁とか、自分のお気に入りだった作品を見つけてはニヤニヤしてました。途中から自分の作品とかどうでもよくなって読み耽ってしまったせいで、次の日はレッドブルに翼を授けて貰って乗り切るなど…。
 
これからも皆さんの作品を楽しみに、余生を過ごしていきたいと思っております。
それではまたいつか思い出したように投稿します。運よく最終選考あたりに名前があったら、「まだ生きてるんだな。」と認識して頂けると幸いです。

では。

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