最終回に花束を(七寒六温)

「あー信じられないよ。もうあと2ヶ月余りで終わっちゃうんだって。どうやって終わるかずっと楽しみにしてきたよ。してきたけどさ〜」
 月刊誌で連載されている人気漫画「宇宙戦士センチロウ」が、再来月号で最終回を迎えるという。

 友人の釜島は、そのことに対して、あーだこーだ言ってくる。釜島は、連載された時から読んでいたため、どのような最終回を迎えるのか楽しみである反面、あと2回で終わってしまうという事実が受け入れられないらしい。

 この場合、俺は何て言ってやればいいのだろう。
 当たり前だが、俺もこの漫画の一読者ってだけで、作者でもなければ、編集者でもない。もちろん、特殊な能力を持っているわけでもないので、どうすることもできない。

「お前、よく平然でいられるな。終わるんだぞあの名作が!」
 俺は、釜島に勧められて、「宇宙戦士センチロウ」を読んだ。勧められた時には既に、8巻まで刊行されていた。どうせなら、連載がスタートしたあたりで教えて欲しかった。だって、8巻まで刊行されている漫画の1巻を買うのって、めちゃくちゃ恥ずかしいじゃない。
 
「あの、俺も、続くんならば続いて欲しいとは思っているよ。だけど仕方ないじゃない」
 連載された時から読んでいる釜島ではないが、俺ももう少し続いて欲しかった。月1回の楽しみだったし、回収されていない伏線もいくつかある。

「でもさ、センチロウと魔王デシリットルとの戦いがついに終わるんだよ。どうなるか、ずっと気になってたろ……」
「あの先生だから、普通の終わらせ方はしないと思うんだよね。普通の終わり方でも、あの先生が書けば逆に普通じゃない。どう終わっても、絶対に最高の最終回になるって」

「まあ、そうだけどさ〜 終わったら、何を楽しみに生きていけばいいんだよ〜」

「釜島ってさ、あの月刊誌、センチロウだけしか読んでなかったの?」 
「あの月刊誌さ、センチロウが特に注目されていたけれど、他の作品も面白い漫画あるんだよね〜。『華麗なるゲノム』とか、『たかがそれだけ』とか面白いよ。それに、センチロウは終わるけれど、先生が、他の作品を連載する可能性だってあるじゃん」

「まじか! センチロウを超える漫画を連載してくれるのか。よっしゃー」

「いやいや、それは分かんないけど……分からないから変に期待してもいけないけど」
「それにしてもすごいよね。1つのことを長く続けるってさ。最終回を迎えられるってすごいことだよね。俺は、もう8回も仕事辞めてるじゃん」

 おそらく、先生には届かないと思うけれど、「宇宙戦士センチロウ」という作品を最終回まで続けてくれた先生に、「ありがとう」という言葉の花束を送りたいと思う。

「宇宙戦士センチロウ」
 残り2回、楽しみにしています。
 お疲れさまでした。


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