見出し画像

【ホラー映画諸々感想(ネタバレ有)】人は何を怖いと思うか

 ここ数年で観たホラー映画の感想など。

画像1

『ダークスカイズ』
 これホラーって言っていいんかな。
 アメリカ人に「日本人がこれをどう思うか知りたい」と観せられた映画。
 途中まで意味不明で不気味な現象が続くの怖い。面白いかも、と思っていると終盤で颯爽と現れる諸悪の根源で風向きが変わる。
 グレイ。めっちゃグレイ。ちょっとハリボテ感のあるグレイがこれからキャトるよ!と言わんばかりの眩い光を放って登場。
 最後にバーンってグレイ出てきてからまったく怖くなくなった。そうか、アメリカ人はこれ怖いのか……。

画像3

『ポラロイド』
 これは面白かった。カメラで撮った人物が死んでいくという古典的というか伝統的展開ではあるが、それがまたいい。あと若者たちがただやられるだけでなくきちんと立ち向かおうとしているのがいい。ホラーだけどジュブナイル的な印象もある。警官のおじさん可哀想。

画像4

『7Wish』
 面白かった! 短いけどよくまとまってる。そしてヒーロー?役の中国系アメリカ人の男の子、決してイケメンではないのに惚れてしまった。ホラー映画で男子にドキドキしたの初めて。主人公がときめくのもよくわかる。多分死ぬけど。

画像5

『哭声 コクソン』
 面白かったけど最初観ただけではちょっと意味がわからなかった。ネットで解説を読んでようやく理解。キリスト教なのね。そりゃわからん。映画全体に漂う湿っぽさ、粘り気、日本映画に通じるこの陰湿さがよいのです。好き。

画像5

『ディセント』
 閉所恐怖症の人は観ない方がいい。出られない洞窟ってだけで怖いのに何か変なのがいて更に怖い。そしてそれより怖いのは人間の女である。
『サプライズ』でも思ったけど西洋の女物理的に強過ぎでは……生き抜いてやるという意識の高さが桁違い。素手でモンスターの首をへし折るとかゴリラかな? 大体叫んで逃げ回るだけの日本ホラーの女性は見習って欲しい。

 数が多過ぎるので他は覚えてるのだけざっくりと。
『アイデンティティー』
 アイディアの勝利。素晴らしい。こういうのほんと好き。
『仄暗い水の底から』
 内容は怖かったんだと思うけど黒木瞳演ずる主人公へのイライラしか覚えていない。神経質でヒステリックでイライラ。要領の悪さにイライラ。腹から声を出せ。
『クワイエット・プレイス』
 音出しちゃいけない世界で何で子作りしたん…。
『パラノーマル・アクティビティ』
 面白かった。ちょっとダレるけど。彼氏可哀想。
『ダークハウス』
 で、乗り移って具体的に何がしたいんや?
『ダーク・プレイス』
 主人公が何で嘘の証言したのか最後までわからず。クロエちゃん可愛い。
『ババドック』
 内容は怖くないが表現が秀逸だったと思う。しかしある一点で評価できない。犬好きは見てはいけない。−10000000点。
『アンフレンデッド・ダークウェブ』
 最初のアンフレンデッドが面白かっただけに、こちらは微妙。
『のぞきめ』
 一緒に観た原作者のファンが板野友美の大根ぶりにキレていた。
『ファイナル・デッドコースター』
 絶対に殺すという強い意志。ホラー好きなのにこのシリーズ初めて観た。
『ノロイ』
 面白い…ような気がしたけどよくわかんなかった。ガチャガチャ場面が変わっておばちゃん疲れました。

 で、表題の『人は何を怖いと思うか』ですが。
 アメリカ人にオススメされた『ダークスカイズ』でしみじみと思ったのですが、何を恐怖の対象とするかはやはり生まれ育った文化、宗教、環境によって大きく異なります。
 それはスペイン産ゾンビ映画『REC3』を観たときも思ったものです。

画像6

『REC』シリーズを観てきて、1,2はよかった。
 ところがこの3ではまあかなりB級な雰囲気が漂う話になっていたのですが、極めつけがゾンビたちが神父さんが聖書を読み始めると動けなくなってしまったこと。
 え……ゾンビ、聖書効くん? ゾンビて確かブードゥー教では……いや、元の個体が生前キリスト教だったからってこと?
 と、得体の知れない恐怖のゾンビたちが唐突にキリスト教に屈するところを見てしまい、無宗教のこちらとしてはポカーンな状態でありました。
 この現象は私が十代の頃愛読していたマルキ・ド・サドの著書『悪徳の栄え』でも起きたことがあります。
 主人公たちは悪徳の限りを尽くし、ありとあらゆる禁忌を犯して快楽を得るわけですが、その中に十字架を踏みつけるというものがあったのです。十字架を散々に踏みにじり、唾を吐き、神を冒涜し、「最高に悪いことをしてやった!」と主人公たちはエクスタシーを感じるのですが、これもこちらとしてはフーンと読み流してしまう場面です。
 元々それを崇めている風習がなければ、それを貶めたところで「悪いことをした」という意識もありません。他に散々殺人だの拷問だの極悪非道なことをしている主人公たちが、たかが十字架を踏みつけるだけで絶頂しているのは滑稽にも見えました。
 これは恐怖の対象も同じですよね。例えばタコを食べる文化のない国の人達にとって、タコの見た目はひたすらおぞましく恐ろしいものだと思います。しかし日本人にとっては醤油を用意したくなる美味しい海産物です。
 宇宙人もそりゃこの広い宇宙にはいるだろうと思いますが、具体的にグレイが出てきちゃうと日本人的にはコメディみも感じられてしまい、それまでの『得体の知れないもの』への恐怖が台無しになってしまいます。

 そう考えるとホラーってなかなか難しいのかもしれないとも思うわけです。万人が怖いと思うものって死であったり正体不明の怪物であったり呪いであったり様々ですが、そこにひとたび宗教色のあるものや地域差のある価値観が人類共通のもののような顔をして出てきたりすると、途端に白けてしまうことにもなる。
 それを上手く使ったのが先日観た『ミッドサマー』のような閉鎖的な村の因習という限定的な異文化に対するカルチャーショックかと思います。
 知らないものは怖い。理解できないものは怖い。
 何かがおかしい、普通ではない。そう思うと人は嫌悪を感じ排除しようとします。そしてその嫌悪が増幅すると恐怖になる。排除できなかったとき、逃げ惑うしかないのです。
 かつては自然災害や疫病も悪魔や鬼の仕業と考えられ恐れられていましたが、その原理を解明し『理解できるもの』となってきた現代では恐怖の対象が少なくなったのかもしれません。
 まあ目下いちばん怖いのはウイルスなのですが。早く何とかなって欲しいものです。

 さて、次は何を観ようかな〜。