心の声を聴く少女
美羽は中学2年生。彼女はクラスメイトから「空気が読めない」と言われがちで、友達を作るのに苦労していた。
ある日、転校生の健太がクラスにやってきた。彼は明るく、瞬く間にクラスの人気者になった。
美羽は健太の人気の秘密が気になり、彼を密かに観察し始めた。
すると、健太には会話に特別な特徴があることに気づいた。
彼は相手の言葉の裏に隠れた感情に注意を払って話していたのだ。
例えば、テスト前に不安そうな友達に対して、健太はこう声をかけた。
「テスト、不安だよね。僕も緊張してる。一緒に頑張ろう！」
美羽は驚いた。他の生徒なら「もっと勉強すればいいのに」と突き放すかもしれないところを、健太は相手の気持ちに寄り添っていた。
美羽は、健太の話し方を真似してみることに決めた。
最初はぎこちなかったが、何度も練習を重ねるうちに、少しずつコツを掴み始めた。
ある日、美術部の後輩が描いた絵を見せてくれた。
以前の美羽なら「上手だね」と簡単に言ってしまっただろうが、今回は違った。
「わぁ、この絵に込めた気持ちがすごく伝わってくるよ。描いてるとき、楽しかった？」
後輩の目が輝いた。「うん！すごく楽しかった！美羽先輩にわかってもらえて嬉しい！」
この経験を通じて、美羽は自信をつけ始めた。クラスメイトとの会話も、徐々に変わっていった。
文化祭の準備中、美羽はクラスメイトの疲れた表情に気づいた。
「みんな、疲れてるよね。でも、この一体感、なんだかワクワクしない？」
クラスメイトたちは笑顔を取り戻し、「そうだね！」と元気づけられた。
卒業式の日、美羽は多くの友達に囲まれていた。健太が近づいてきて言った。
「美羽、君の成長はすごいよ。みんなの気持ちを大切にする姿勢、僕も見習いたいな。」
美羽は照れながらも、心から嬉しかった。
中学卒業後、美羽は心理カウンセラーを目指すことを決意した。人の気持ちに寄り添う大切さを、多くの人に伝えたいと感じたのだ。
美羽は気づいた。真の優しさとは、相手の言葉の奥にある感情を理解し、それに応えることだと。
そして、その優しさは必ず相手の心に届き、自分自身をも成長させてくれるのだと。
美羽の新しい人生の幕が、今まさに上がろうとしていた。
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