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『きりこについて』を読んで

大好きな西加奈子さんの小説の中で
1番読み返して大好きなのが『きりこについて』

最近皮膚科へ行って待ち時間に読んだので
感想とおすすめしたい!と思いました。

笑えるし、泣けるし、楽しいし、納得する。

なんたって猫たちがかわいい。
色んなことを私たちに教えてくれる。
かわいい。

おっと、猫は“かわいい“といって欲しくないらしい。
「賢い」と言ってほしいらしい。

猫はどんな猫でもかわいいと思う。
ブチャ猫も言われているエキゾチックショートヘアという
猫ちゃんだってめちゃくちゃかわいい。

“かわいいは正義だ“
若い時は本気でそう思っていた。

可愛く見られたいからお化粧したり
お出かけ用の服を繁華街へ出て、
いくつも買ったりした。

今はどうだろう。
病気になる前からメイクはほとんど薄メイク。

ナチュラル、すっぴん風メイクとかじゃなくて
マスカラはよっぽどの時しかしないし、
チークもいつからかポーチからなくなっていた。

仕事でコロナ前からマスクもするのもあって
時間短縮と、お肌の負担軽減の為に。

メイクをする時間よりも
夜にケアをする時間のほうが少し長い。

洋服もお出かけ用はたくさんいらないと気づき
普段の仕事やスーパーへ買い物は楽ちん重視に。

それでもどうだろう。
周りもそんな私を肯定してくれるし、
自分は自分だしと思っている。

この感覚は西さんの他の小説も含め
色々読んで得たものかもと思う。

以前、自分にメンターはいるか?
(迷った時に心の中で対話する何か)
(スターウォーズのヨーダのようなもの)

の、問いにうーん…母親かなあ。と思ったけど、
(余談すぎるけど母はヨーダに少し似ている。笑)
(ひっぱられている!笑)

わたしは作家の西加奈子さんな気がした。

西さんならどう思うかな。
西さんならどうするだろう。

みたいな。

『きりこについて』の主人公は
題名のとおり“きりこ“だ。

きりこは、ぶすである。

きりこについて 冒頭

顔の輪郭は、空気を抜く途中の浮き輪のように、ぶわぶわと頼りなく、眉毛は、まるで間違いを消した鉛筆の跡だ、がちゃがちゃと、太い。その下にある目は「犬」とか、「代」などの漢字の右上の点のようで、それが左右対称についている。鼻は、大きく右にひしゃげていて、アフリカ大陸をひっくり返したようである。唇だけは思い出したように赤く、つやつやと光っているが、アラビア文字のように難解に生えている乳歯が抜けた後、また同じように、難解な並び方で永久歯が生えてきている。顎はない。ないというか、そのままなだらかに首(首もないのであるが。後述)とつながっていて、どこにあるのか、探そうにも、探せない。耳は、ゆであがったパスタのようにつるんとしており、黒髪は豊かで、ほとんど青いほど、でも、いかんせん顔の印象に引っ張られて、行き場をなくし、どこか自信なさげに、頭に食らいついているという、按配。

きりこについて

そんなきりこが猫(ラムセス2世)と出会う。

白玉事件からのラムセス2世との出会い、
帰りの会でみんなを許すと言ったきりこ。

ここに私もいたのかなと錯覚する。

給食から休み時間まで
口の中で大事に残していた白玉が
地面な落ちてしまうシーン。
(最長記録だったのに!笑)

クラスメイトと一緒にはっと息をのんでしまう。
忘れられない、好きなシーン。笑

きりこがとびっきり可愛いくなって
パートナーができて結婚して幸せになる話?
→全然違う。

きりこの見た目によって幼少期からいじめられて
自信をなくして、落ち込んでだけど元気になる話?
→なんか違う。

きりこは両親からいっぱいの愛情を持って育てられ、
かわいい、かわいいと言われて成長し、自信いっぱいだ。

きりこも月経を迎えるだろう小学生5、6年生の時に
みんなにぶすと共通認識されてしまう。

彼らは「酔っている」状態から。徐々に醒めつつあったのだ。
そんな折の、こうた君の一言。きりこはぶすだということ。
皆の魔法、「うっとり」の魔法は、それで、一気に醒めてしまった。
そうやんな。きりこちゃんって、きりこちゃんって……、
ぶすやわ!

きりこについて

そこからのきりこは家へ引きこもり鏡をずーっと見つめ
自分との向き合ってたくさん考えていく。

でも、きりこのスタンスは

「うちのどこがぶすなんか、まったくわからへんわ!」
「うちのどこがぶす?どこが?」
「うちの、どこが、ぶす?」

きりこについて

きりこはどこがぶすかわかって自分を受け入れていく話?
→全然違うー!!!

きりこは素直に“何故“か考え
猫のラムセス2世にもたくさんのことを教えてもらう。

きりこは最後には涙が出るくらい
カッコ良くて、凛と美しくて、優しい人になっていく。

時折、まん丸の月が皆の頭上をからかうように漂っており、そういうとき、猫たちはその美しい表情で、きりこをはっとさせた。すずこちゃんやノミエちゃんや、ましてやカニィちゃんなどを見て、人間たちがはっとするのとは、まったく違っていた。
彼女らの、猫に似ている顔の美しさは、猫たちのそれとは、まったく違うのだ。そもそも猫にとって、自分たちに似ている人間など、気持ち悪い以外、なんの感想も持てないものだった。

猫たちは、すべてを受け入れ、拒否し、望み、手にいれ、手放し、感じていた。猫たちはただそこにいた。
ただ、そこにいる、という、それだけのことの難しさを、きりこはよく分かっていた。

人間たちが知っているのは、おのおのの心にある「鏡」だ。その鏡は、しばしば「他人の目」や「批判」や「評価」や「自己満足」、という言葉に置き換えられた。
それらは猫たちにとって排泄物よりもないがしろにされるものであった。いや、仲間たちの匂いでメッセージを伝える尿や糞の方が、よほど価値がある。立派です。
きりこは、自分もそうでありたいと願い、まだそれがかなわないことを知り、少し落ち込んで、そして、布団の中で夢を見続けた。

なぜ皮膚科にこの本を読もうかなと
手にしたかというと、

前にも書いたけど…
今の自分の見た目に自信がないと自覚していたから。

元々そんなに美容に気にしてなかった方だけど、

乳がんになって
片胸もない、髪の毛ない、眉毛ない、まつ毛ない
むくみによる顔と身体がぶくぶく分厚くなった。

帽子は一応被って出歩く、
眉毛はかくのに時間がかかる。

そして近所では全然気にならないけど、

ニトリとかイオンとか行くと
二度見される事がまあまあよくある。

あれは結構嫌な気持ちになる。

でももし猫がリュックとかに入ってて
思いもしない所で出会したら
私もびっくりして二度見するかもしれない。

やっぱり髪が眉毛がそしてまつ毛が
早く伸びてほしい。

『きりこについて』を読んで
人は人の美しさは見た目だけじゃない、って
心の底からわかってるつもりだけど、

自分らしくはやっぱりいたい。

それを再認識。


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