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ののぐちくん


吉田戦車というひとのコミックを見ていると、ときどき無性に懐かしい思いがして、それは何でだろうと思案して、たどり着いた考えが、その隅っこのほうになんとなく描かれているひとが、小学校時代の同級生のののぐちくんに似ているということだった。

家の方針なのかいつも坊主頭で、うりざね顔というのか、ひょうたん顔というのか、ピーナツ顔というのか、なにしろ色白の細面で、こめかみのあたりが少し締まった長い顔だった。

その顔のまんなかにこじんまりと配置された糸のように細い目の目じりはいつも笑っているように下がっていた。

参観日に見たおかあさんは、ののぐちくんがパーマをかけて歩いているのかと思うほど、そっくりだった。年が離れたおねえさんもやっぱり同じ顔つきだった。

気持ちが顔をつくる。ののぐちくんはけっして悪いひとではないけれど、やんちゃでけんかの強いやまぞえくんやふなきくんに誘われると、それがいけないこととわかっていても、いやと言えない小心者だった記憶がある。

だからののぐちくんは態度がコロッと変わることがあった。後ろ盾がいる時は強く自分だけの時は心細げに見えた。

言ったことがそばにいる人次第で、どんどん変わっていくひとをあてにはできない。だから同じ班でいろんな作業すると、とてもやりづらかった。

同窓会にののぐちくんは現れなかった。だから勝手におとなになったののぐちくんを想像してみるのだが、そのたびにもと班長はなんだか落ち着かない気分になる。

泣きそうな顔で笑っているイメージが湧いていて幸せにくらしているのだろうか、と気になってくるのだが、いや、しっかりものの奥さんにしきってもらって、案外したたかに生き抜いているかもしれない、という気もしている。

読んでくださってありがとうございます😊 また読んでいただければ、幸いです❣️