めでたいのは

2005 01/12 にこんなことを思っていた。

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成人の日に街を行けば、振袖姿の娘さんに出くわす。2,3人が連れ立って歩けばそこだけ春の花が咲いたように明るく、道行くひとの視線を集める。

30年前自分もそんなふうに着慣れない振袖を着せられて、白いショールを巻いて出かけたものだった。その帰りに見合い写真を撮ったんだっけなあ。

その振袖姿の2,3人がそろって路上の喫煙所で、いかにも慣れた感じで煙草を吸っていたりすると、道行くひとはいっそう見つめてしまうし、一瞬思案ありげな顔つきにもなる。昔は吸う場所を選んだもんだったよ、と言いたくなったりもする。

カップルもいる。着慣れないものを着た彼女を優しくエスコートする彼はスーツではなく普通の恰好だったりするが、目が優しい。

喧嘩しそうな雰囲気のカップルもいる。着慣れないものをきた彼女はもう苦しくてならないのに、彼は入る店を決めかねている。こんな日にデートもなかなか塩梅がむずかしいね。

長めの髪を金髪に染め、片耳ピアスにサングラスをかけて、紋付の羽織袴姿の男子もいる。

そういう男子が3人そろって横断歩道を渡ってきたりしたら、道行く人はとおり過ぎても振り返って見つめてしまう。ホラホラ、アレアレ、と他のひとに教えたりする。そんな視線を心地よく感じているのかいないのかはわからないが、どんな視線にも表情を変えない。

うちひとりは着物と羽織が白で、羽織には鮮やかな青のぼかしが入っている。その男子が金髪をかき上げるとその手の薬指には指輪に似せたタトゥーが入っていた。

わたしはその落ち着ついた横顔を眺めつつ、ほほーと感心してしまう。

徴兵のない国に生まれたことだとか、飢えのない暮らしを送れていることだとか、相対的な幸せをありがたく思えといわれても、それが当たり前のくらしのなかで、実感するのはとてもむずかしい。

恵まれていると感じるのはあくまで自分であって、他人に強制されるとなんだか意固地になってしまうような、そんな横顔のようにも見える。

3人の男子はなにやらおそろいの茶色い袋を持っており、そのなかには私服が入っているようだった。これから彼らは着付けてもらったところへ戻ってそれに着替えるのだろう。やっぱり成人の日はハレの日だ。

おめでとう!
つつがなく二十年生きてこられてことがおめでたい。


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