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海士町「お山の教室」へ行ってきた!

教育の島、また地方創生の先進事例として有名な海士町。
自己研修として、森のようちえん「お山の教室」の現場に入らせていただき、島で思い切り遊ぶ子どもたちに出会ってきました。

きっかけは、研修生募集

保育現場で、よそものに1週間も入らせてくれるってなかなかありません。しかも、椎葉とほぼ同人口2,300人の離島という、椎葉と張り合う?辺境具合。そんなところで、どうやって森のようちえんをやっているんだろう?子どもたちはどれくらいいるんだろう?活動内容はどんな感じなんだろう。
そもそも、なんで研修生を受け入れているのか??
まずは応募してみよう!ということで、めでたく受け入れしていただきました。

海士町のイメージ

それまで持っていた海士町のイメージは、
・移住先進地域(人口の2割移住者)
・高校魅力化プロジェクト
・大人の島留学
・離島
・ジオパーク認定あり
・島根県

という感じでした。
知っているようで、本当のところあまり知らない、、そんな感じです。
海士町に関する情報はとにかくたくさんありますが、ひとまずこちらを貼っておきます(公式note)。


来たぞ!島をぐるっと回って感じたこと

それは、「便利で暮らしやすい田舎」ということ。
地元の方には「よくこんな田舎まで」と言われたけれど、自分が住んでいる椎葉村と比べると圧倒的に便利で、秘境感も薄かったです。

最初の2日で特に感じたのは、ざっくりこんなこと。

ちょうどいいサイズ!30分運転すれば島のどこへも行ける。
島の多様な自然や地理。海から山、畑や田んぼも。住む人の仕事も、第一次産業から観光・サービス業、オフィスワークまで多様。
船でしか外に出られないため、島内で完結するサービス。夜ごはんに行けるお店や、人が集まる場所がある。
コミュニティの並立。地域の寄り合い・移住者のコミュニティ・公的な施設のイベントでの交流も多そう。
*訪問二日目は、地元の神社の作業と、地元の物産イベントと、図書館のイベントと、コミュニティセンターのイベントが同時にあり、あちこちで人が行きかっていました。
若い世代、子連れの多さ、移住者や関係人口であろう人たちの多さ。それに慣れている感の地元の人たち。

牛さんもいる。

いよいよ、「お山の教室」へ

運営母体NPO法人しぜんむらのある、海を見渡せる小高い丘が、「お山の教室」の活動場。2歳児から5歳児までの15人の子どもたちと、6人の保育者、そして事務のスタッフさんが過ごしています。

私の訪問した週は、
・草木染め(お散歩で集めた島の植物を使って)
・避難訓練(車を使った二次避難まで)
・お昼ご飯クッキング(むかごご飯と豚汁)
・お散歩(歩いての近場2回・別地区に車で移動1回)
・天気は、雨・晴・風の日
と、視察・研修にはぴったりの、もりだくさんな期間でした。

それぞれの活動について触れたいのですが、書き始めたら終わらなくなりそう(!)なので、ここでは、印象に残っている子どもの姿と、それを支える保育者の在り方について、書いてみます。

「島を遊びこむ」子どもたち

まずびっくりしたのは、大風に負けていない!朝から子どもたちが活発に、森の中を走り回って遊んでいました。外遊びや野外保育に慣れている大人の私でも寒いと感じる風が吹いていましたが、子どもたちから「寒い」という言葉を聞くことは一度もありませんでした。

とにかく屋外で遊び慣れている!
段差や斜面での遊びや活動も臆せず、活発で身体の使い方も安定していました。ここに来るまでは慣れていなかったであろうと思われる子であっても、私がこれまで見てきたいろいろな子どもたちと比べても、運動の程度や量においてずっと活発でした。
斜面で転んだ子が、すっと立ち上がり何も言わずに遊び始めたので、ちょっとためらってから「大丈夫?」と聞くと、「うん、大丈夫。ここは石がないから痛くない」とこともなげに言うのでした。

この笑顔!お友だちがやっていた後に続いて。

近隣のお散歩に出ることが何回かあったのですが、歩く歩く!
道の脇にある木の実や葉っぱを見つけたり、溝に入って歩いてみたりと楽しみながらぐんぐん進み、帰りにはお気に入りの大枝をひきずって歩く姿が頼もしく思えました。

お散歩の帰り道。景色と、みんなのおみやげがすごい。


また、身体の元気さだけでなく、気持ちがかなり安定していて、自分のやっていることに集中している姿が印象的でした。集団として基本みんな気分が良い状態で過ごしており、困っている友だちがいれば自然に助けたり、大人に執着せず子ども同士で誘い合ってやりたい遊びを楽しむ姿が、毎日、朝から見られました。
時に、転んだり気持ちが悲しくなることはあっても、それほど動揺や大騒ぎにはならず、大人の助けを借りて気持ちを切り替えたり、友だち同士で助け合ったりして、持ち直す場面もよく見ました。

避難訓練やクッキングなど集団活動においても、大人の話をよく聞いて興味を持ち、やりたいことを自分で選び、自分のできることに注力してきらりと光る瞬間が一人ひとりにありました。
同時に、要所要所で子ども同士のチームワークで楽しみながら取り組んでいて、子どもたちでこんなふうに主体的に取り組めるんだなあ、とひそかに感動しながら見ていました。

全員で分担して作ったむかごごはんと豚汁。本当においしかった!

身体的、精神的な面以外にも、子どもたちの言語の理解度と、発する言葉の表現の豊かさにも驚きました。朝や帰りの集まりなどでは、一人ひとり自分の言葉で表現したり振り返りをしていました。遊んでいる最中の会話でも、ネガティブかつそれを他の人に当てるような言葉や、他人を充てにするような後ろ向きな言葉を聞くことはほぼありませんでした(例えば「もういい!」「ずるい!」「〇ちゃんがやってよー」など)。

お山の教室が掲げる「島を遊びこむ」の言葉通り、島の多様で豊かな恵みを活かした保育実践で、子どもたちが手足を使い、言葉を交わし、心と身体をたっぷり刺激しながら遊ぶ様子が見られました。子ども自身、経験を通して自分ができることの手ごたえや、自然の豊かさを感じることができており、新しい活動もわくわくと取り組むことができているようでした。

お散歩で見つけた宝物たち


保育者の在り方、姿勢

「お山の教室」の1日を通して、子どもたちが集団での話し合い、活動、移動、食事、身の回りのことなど、一見複雑そうなことも、淡々と、明るくやっている様子を見て、これまでの体験の積み重ね・経験値を感じました。
同時に、どうやって積み重ねてきたんだろう、、と。こんな子どもたちの姿は、大自然の中で過ごしているだけで自然に生まれるのでしょうか。

大きなヒントが、保育者の子どもへの関わり方にあるようでした。

それは、保育者がとても丁寧に子どもたちと話をしていること。日々、これでもかというくらいコミュニケーションをとっていました。子どもたちが何かした時に、「見ているよ」「素敵だね」「よくやっているね」というような過程のほめ言葉を、たくさん聞きました。自分がいいなと思ったことややってみたいことに大人が共感してくれることで、子どもたちは安心して活動を続けていました。わからないことがある時や迷っている子には、気づきとなる問いかけをし、最終的にはその子の「どうしたい」という声を引き出す姿が見られました。

一方で子どもが困ることがあっても、先行して手伝うことはせず、「困ったことがあったら教えてね」と、じっと子どもの表現を待っています。その繰り返しの中で、大人と自分を信頼し、「手伝ってほしい」「今これがやりたいの」と、気持ちを切り替えて進む子どもたちの姿がありました。

一人ではとれない「ふゆび」も、友だちと助け合って、何度も何度も挑戦!

特にすごいなあと思ったのは、毎日の活動の後に、子どもたちと振り返りの時間を必ず設けていること。子どもたちが一人ひとり発言や表現をすること、話している人の声を聞くことに慣れています。3歳の子たちも、お昼寝前に振り返りで自分の言葉を使って、あったことや思ったことを話せていることにも驚きました。
大人の話や絵本の読み聞かせも、ボリュームが大きくても、まとまった時間落ち着いて話を聞いたり考えたり、集中して取り組む子ども集団でした。

島の森の中で、富士山を知る(絵本読み聞かせ)

また、保育の中で時間を細かく伝えていることによって、子どもたちが自分で気持ちを切り替えて行動する姿も印象に残っています。基本、大人が「針が9になったよ」と言うと、自分たちで片付けをして次の準備にうつる、というような形で、一般の家庭や保育にもありがちな、何回も何回も大人が声をかけて片付けや行動を促す、という場面は見られませんでした。

自由な活動と集団でのルーティンや活動、どちらも子どもの発達段階に合わせて丁寧に行い、一人ひとりを自然に受け止めることと、できること・やりたいことを子どもたちにしっかり要求していく、というバランスの取れた関わり方だと感じました。

おままごとで作った大事なものを「とっておける」棚

こうした保育を可能にしている背景に、保育者同士の連携や役割分担など、運営面の工夫もありました。毎日保育者が集まってその日の保育と子どもの様子を振り返る時間を設けていて、保育者それぞれの視点や考えを共有しているのです。子どもたちのことを話したり聞いたりする保育者の、イキイキと楽しそうな顔に、なんて素敵な時間なんだろうと感じました。
共有から保育活動の充実はもちろん、保護者対応も毎日一人一人に話をするなど、多方面から子どもの成長につながる形で運営されていることがわかりました。

日本の端っこで、未来へ挑戦し続ける保育集団

森のようちえん「お山の教室」では、島の自然を活かした野外活動がすばらしいのはもちろん、子どもの心と身体の在り方や育ちを大切に保育を組み立てている様子がわかりました。
今見える子どもたちの姿は、保育者が日々の暮らしや活動で、子どもたちの育ちの点と点をつなげる実践を積み重ねてきた結果であるように思えます。 

雨だからこそ面白い!側溝の流れに逆らって歩く子たち

もともと田舎暮らしに関心があり、ある程度経験している親子にとって良い場であることはもちろんですが、ここがなければ全くそういった体験や保育を経験しなかったであろう親子にとっても、たとえ短期間でも、ここでの経験が今後の大きな支えになるのではと感じました。

また海士町にとっても、このように地域の魅力を最大限に生かしながら、子どもの全人的発達を保障する唯一無二な保育・教育の場が、今後の人や文化の流れを耕していくことになるだろうと感じます。

海士町に移住後、より良い子育て環境を求めて「お山の教室」を作ってきたスタッフさんと、良い保育を求めて移住してきた熱意のある保育者、より良い人生を求めて移住してきた保護者、という素晴らしいチームワークで、子どもたちとすがすがしく挑戦している姿を、ありのままたっぷり見せていただいた1週間。
「お山の教室」が今後の海士町の教育の求心力になる、そんな風に感じ、うらやましさと同時に自分もがんばりたい!と励ましてもらいました。

子どもの可能性を信じてとことん取り組む「お山の教室」の存在が、日々一生懸命子育てしている方々や保育者に届くといいなあ。私も同じ気持ちで繋がり、前に進む保育仲間でありたい!という宣言をして、このレポートを終わりたいと思います。

1週間学びの機会をくださった海士町の皆さん、お山の教室の皆さん、本当にお世話になりました。今度は海遊び(磯遊び)の保育を体験しに、夏に行ってみたいなあ~。

こんな「お山の教室」について、もっと知りたい方はこちら!

〇子どもたちの活動の様子(動画)

〇なんとただいまスタッフ募集中!!

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