見出し画像

DUNHILL / SHELL / PATENT No.417574/34 / 127 F/T / 40年代?


レストア前

パテントダンヒルのシェル127です。
もうダンヒルはいいかなと思ってたのに、また買ってしまった…
127好きなんです…
パテントの127が安めだったのでつい…

127は、LBシリーズのショートモデル。
ベイビーLB。
ラージビリヤードと呼称される、でかいビリヤード、を、縮小したようなシェイプ。
太いシャンクがマッシブで好き。
そしてすごく使いやすい。

パテントナンバーは417574/34。
スプリングフランジ付きインナーチューブの特許番号。
1942〜1954年に刻印されていました。

MADE IN ENGLANDの後ろのデイトキーは、何か書いてある風だけど読めない。
④とかのグループ番号は無し。
グループ番号は51年に導入されたのでそれ以前製造。
んで、デイトキーは0じゃ無いっぽいんだよなあ。
縦線見える気がする。
なので、多分40年代生まれ。

珍しくインナーチューブついてた。
これが特許とったやつか。
初めて見た。
先っちょ削れて平らになってる。
そして汚れ。
固着してステムから取れない。

ステムは、久しぶりに見たなってくらい変色してる。
本当に黒だったか疑うレベル。
ティースマークもそれなり。
でも穴空いてたり削られすぎて痩せたり変形したりしてない。

ホワイトスポットが欠けてんのかと思ったら、一部黒ずんでるみたい。
触った感じ。
これ、古いホワイトスポットかも。

ホワイトスポットは通常アクリル製ですが、古いダンヒルのホワイトスポットは象牙製だった、と言われています。
が、どうやらこれは都市伝説の類で、実際にはセルロイド製だったらしい。
海外サイトで有志が象牙と思われてたホワイトスポットに熱した針を刺すという暴挙な実験をしてました。
結果、溶けて爆発したらしい。
象牙だったらそんなことにならない。
さらに、アルフレッド・ダンヒルが、ホワイトスポットの独占的権利を確保しようとしていた、1922年の法廷文書に「imitation ivory」とハッキリ書いてあることが発見されました。
模造象牙、です。

じゃあ、なんで象牙説出てきたのか、というと、今回のパイプみたいな症状が有ったからではと思う。
セルロイド、変色するんです。
周辺の色が染み込んでくる、とか、ヤニ、とかが原因ぽい。
で、その変色のしかたが均一じゃないので、象牙みたいな模様に見えたんじゃ無いかと、このパイプ見てて思いました。

カーボンは結構厚め。
リーミングでエッジも少し削れてそう。

全体的にだいぶ使い込まれてるけど、実は状態悪くなさそう。
レストア冥利に尽きる感じ。


ボウルのお掃除

分厚いカーボンをリーマーとナイフでゴリゴリ。
底の方リーマー入らないくらい狭くなってたので、リューターでゴリゴリ。
ごっそり。

あらかた取れたらコットン詰めてアルコールメソッド。
数時間おきに何度かエタノール注ぎ足して一晩放置。
すると汚れが浮いています。

コットン取り除いて軽くリーミング。
シャンクはストローブラシとモールで色がつかなくなるまでゴシゴシ。
インナーチューブ付けて使用されていたからか、意外にもあんまり汚れてない。

キッチンペーパーとモールでマスクして、マーフィーのオイルソープで擦り洗い。
原液を歯ブラシにつけてゴシゴシ。
ぬるま湯の流水で洗い落とします。
ボウル内はそんなに濡れないし、すぐ乾くから大丈夫。

洗い終わったら、見えにくかったところも見えやすく。
でも、やっぱりデイトキーは読めない。
下線は引いてあるぽいけども。
残念。

乾いたら、椿油で潤いプラス。
歯ブラシ使って溝にもしっかり。
あんまり放置せずに拭き取り。
色味も戻ります。

ちょっと赤すぎなので、柘植の黒染料でお色直し。
エタノール染み込ませたキッチンペーパーですぐに拭き取り。
塗りつぶすんじゃなくて一段暗くする感じ。
ニュアンスは残す。

そして、黒染料を机の上に盛大にこぼす。
エタノール染み込ませたキッチンペーパーで拭いても一段暗くなりました…

染料はすぐに乾くけど、一晩寝かせて定着させる。
その後、ルネサンスワックスとカルナバワックス掛け。
ルネサンスワックスは歯ブラシ使って溝にもしっかり。
拭き取ったらカルナバをバフ掛け。
カルナバ布でみがいて馴染ませた後、歯ブラシと豚毛ブラシで溝のカスを溶かしながら掻き出す。
細かい溝にちょっと残ったカスとかは、爪楊枝とかでほじくり。

最後にエタノールで薄めた蜂蜜をボウル内に塗り塗り。
余分な蜂蜜をキッチンペーパーで拭いて、乾燥待ち。
一晩くらいおいて、ある程度乾いたら、ボウルを灰皿にして無着香のシガリロを一本吸って、灰をこすりつけて、余分な灰を落としたら、下準備OK。
すぐ使える。
これでひとまずおしまいです。

ちなみに、ダンヒルのパイプについてくる、パイプの使い方指南みたいなのにも、少量の蜂蜜塗ったらカーボン早く育つよ的なことが書いてるらしい。
新品で買ったことないから見たことないけど。


ステムのお掃除

まずはひどい変色を取るために、オキシクリーンにドボン。
固着したインナーチューブごと。
60度くらいのお湯でオキシクリーン溶かして30分くらい放置。
泡が出なくなったら取り出して、激落くん的メラミンスポンジで表面のヌルヌルをこすり洗い。
ストローブラシで穴の中も綺麗に。

ちゃんと黒くなった。
固着してたインナーチューブも外れました。
「フランジ付き」って、このちっちゃい部品か。
一体になってるわけじゃないのか。
危うく排水溝に流すところだった。

ホワイトスポットに木工用ボンドを塗ってマスキング。

ボンドが完全に乾いたら、他のステムもまとめてエタノールにドボン。
マスキングしないで長時間浸けるとアクリルとか溶ける可能性あり。
短時間なら平気だけど。
しばらく放っておくとヤニがもわ〜っと出てきます。
ストローブラシやモールで色がつかなくなるまでゴシゴシ。

内部が綺麗になったら、外側のお掃除。
噛み跡で凹んでる部分をライターでなぞるようにして軽く炙る。
こうすると少し盛り上がってきます。
炙りすぎて焦げないように注意。
まあ、多少焦げても、どうせヤスリかけるからヘーキヘーキ。

その後、ダイヤモンドヤスリで軽く成形。
リップのキワとか、紙やすりだけだと変色残ったりするので、ここで軽くヤスっちゃう。

エッジが丸まらないように、テノンにマスキングテープぐるぐる巻き。
ステムよりちょっと高くする。
んで、400〜2000までヤスリ掛け。

ヤスリ掛け終わったら、白棒バフとコンパウンドで仕上げ。

効果あるのかわからない、おまけで手に入れた変色防止液を一応塗って、

少しキツめのテノンに鉛筆を塗って、おしまいです。
鉛筆塗っておくと合体がスムーズになります。
あとは合体して、全体をつやふきんで磨いて完成。


完成

ツヤツヤピカピカです。
ボウル内も綺麗に。
インナーチューブの先っちょがボウルの形に沿って削れてる。
リーマーとかで削れたのかな。

せっかくだからインナーチューブ付けたまま使おう。
フィルターと違ってモール通るし。
フランジは、インナーチューブをステムに固定する機能みたい。

ステムもピカピカです。
ホワイトスポットは変色そのままでピカピカ。
染み込んでる。
イミテーションアイボリー。

上が今回の推定40年代127。
下は69年の127。
パテントダンヒルの特徴である、シワシワの深いブラストのせいで、今回の方がちょっとボウルがスマート。
特にLB系は個体や年代によって結構シェイプに差があるらしい。

さらに、一番下は同じパテントナンバーのルート127。
52年。
最初はルートくらいの太さだったのが、キュアリングで縮んでる感。
キュアリングというかその後のブラストか。
69年シェルは、ブライヤーの産地が変わって以前より木が硬くなってるからか、ルートに近いまま。

上二つのシェルは、両方F/Tで、同じくフィッシュテールステムのはずだけど、今回の方がくびれてる。
69年はズドーン。
ルートはフィッシュテールじゃなくてズドーン。

やっぱ127いいなあ。
マッシブだけど使いやすいサイズ。
もう、大分ダンヒルは満足した。
多分安いの見つけたらまた買っちゃうんだろうけど….

以上でレストア終了です。
おつかれさまでした。


この記事が参加している募集

沼落ちnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?