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マッドマックス/怒りのデスロード地上波に思うこと。

先週9/12(土)に地上波初放送で『マッドマックス/怒りのデスロード』が放映されました。

 初めに言っておくと『怒りのデスロード』は傑作だと思います。あれを七十代のジョージ・ミラーが監督したというのは驚くべきことだと思います。現場では主演のトム・ハーディも何を作っているのか、本当に面白くなるのかわからなかったと言っていましたが、『ブレードランナー』の例を見ても、強烈なビジョンを持った映画監督の作品は、関わる俳優ですら「大丈夫かいな、この映画……」と思ってしまうようです。そして大抵は大きく失敗するのですが、これは特大ホームランを打ってしまった。

 強烈な暴力が罷り通る世界で語られるシンプルで美しいストーリー。ナミビアの砂漠の美しい景観、無情の大地。そこに蔓延るのは暴力と生殺与奪で最高峰である水の独占に関する強固な支配、その支配下で行われる怖ろしい行為ですが、それが今回の地上波では軒並みカットされているんですね。
マックスに刺青を施すシーンや、人体の破壊される描写、性的な搾取、目がイっちゃった人など、その辺りの描写をカットしている。併し、怖ろしいことにそれはこの作品の本質的な核とも言える辺りで、いわば魂なのです。
その魂が奪われて、側だけを見せる構造になっている。
美と醜は相対するものですから、醜を抜き取ることでその美の価値が減じている。これはあまりにも哀しいことです。

 その上、この作品は醜こそが魂で、それが転じて美にまでなっているのは、物語の必然としてそれらが存在しているからに他ならないため、それらを漂白乃至は隠蔽することで、物語自体の構造にも齟齬を来している。
本来の意味でのマッドマックスのマッドな面を蔑ろにしてしまっていて、これは確かにひどい編集版だとは思いました。

 併し、そうは言っても地上波ですから、突然こんな暴力まみれの映画がお茶の間に流れるのは流石に……、というのはわかります。

 それでも今回の地上波で新しくマッドマックスを観てファンになった人、興味を抱いた人はとても多いことだと思います。
昔も散々カットした映画が放映されてましたが、ただそれをきっかけにファンが増えるというのはとても良いことだと思います。
今回のマッドマックスも、編集した方も制約が多すぎて大変だったと思います……。

 でもどうせなら、マッドマックスとの初めての出会いは、深夜に『ブラック&クロームエディション』の字幕版がやっていて、断片的に観てしまう、というのが一番いいシチュエーションかも。悪夢的で……。

シャーリーズ・セロンさんの休業に伴い、次回作はフュリオサ役は変わるみたいですね。次回作は『怒りのデスロード』のプリクエルになるとのことで、それも楽しみですが、早くても2025年くらいかな〜。


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