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1-22 ビデオの撮影を二日後に、秋の学祭を五日後に控えた金曜日の夕方に、リハーサルをした…
1-21 絵里奈は発表が近づくにつれて、ナイーブになるどころか、だんだんと大胆に、皮を剥い…
1-20 新学期に、久しぶりに会った柚希は、少し日に焼けていた。指先に切り傷と、タコがあっ…
1-19 絵里奈が、ぐんぐんと力をつけて、今はもう本当の白鳥と黒鳥のように思えるのが、恵に…
1-18 翌日から、公武はレッスン場に顔を出すようになった。そうして、二時間だけ、特別にレ…
1-17 『白鳥の湖』は、bunkamuraのオーチャードホールでの公演で、客席は三階席まで、満員…
1-16 公武からの返信が来たのは、翌日の昼を回っていた。そうして、そのLINEには、昨日川端が話していたとおり、『白鳥の湖』のお誘いがあった。 〈新幹線で行って、それから帰りは夜行バスだ。〉 そう書かれていて、恵は慌てて財布を開くと、中には一万円もない。加奈子に借りることなんて出来ない。それから、公武に借りるのも恥ずかしい。柚希だって、そんなお金はないだろう。いくらかかるのだろう。早く返信しないと、もうずっと既読になっていて、そんなことが、恵には焦りに変わって、耳先が熱
1-15 帰りの車の中、疲れたのか、柚希はすやすやと夢の中だった。川端は終始無言で、恵もか…
1-14 翌日は日曜日で、恵は柚希を伴って、御心坂から公武の屋敷へと向かうと、玄関の呼び鈴…
1-13 部屋にはもう絵里奈がいて、雑誌を読んでいた。何の本か覗いてみると、加奈子の愛読し…
1-12 坂道を降りて、御心坂に出ると、真っ暗な空間が広がって、恵は寄る辺無い。夏の夜なの…
1-11 公武は先にシャワーを浴びてくるとそう言って、風呂場に姿を消した。恵は、さきほどの…
1-10 「私がローザンヌに応募するって言ったらどうする?」 練習が終わり、恵は公武におずお…
1-9 公武に送られて、家に帰ると、もう娘心が疼いて、火のようになっている。そうして、それが自分の中にだんだんと、手のつけられない獣のように思える。くるくると心が回って、それは、自分の心がバレエを躍るようだった。天井の灯りに、白薔薇を透かして、脣を近づけて、やわらかい花弁に触れると、幽かな匂いが漂う。 絵里奈が部屋に入ってくると、恵は何も言わずに、ただ白薔薇をそっと用意して置いたグラスに差して、 「お帰りなさい。」 「あら。お花?」 「お誕生日のプレゼント。もらったのよ