ヒバリ8. (ひとつの家系の) 「天皇」を敬う日本人の『心』そのものが平和をもたらしてきた 武田邦彦氏
8回目 「天皇陛下は神か?」という問い 2020.8.8
日本では8月に原爆投下、終戦の追悼式があるが、暗い気持ちになるので私はあまり好きではない。
ただお祈りして「平和は大切だ」とやっているだけに見えるので意味がないように思う。
「戦争を思い出す」のはいいが、それだけではなくもう少し深く考えることが必要であろうと思う。
天皇陛下は神か?
天皇はこの前の戦争(第二次世界大戦)までは神(現人神(あらひとがみ※生きている神))とされていた。兵士は戦場で死ぬ時に「天皇陛下万歳」といって死んだ。天皇陛下以外の名前が出ることはない。それは「私は日本国のために死にます」という意味である。
そしてその「日本国のため」とは、自分の母や姉や妹を守るために、という意味である。
(※女のために男が(犠牲になって)死ぬのは生物の基本原則である)
戦後に非常に滑稽な議論があった。「天皇陛下は神か、人か、」という議論である。
天皇陛下の人間宣言をしなきゃいけないのではないか?というものだった。
政治的にはそうかもしれないが、歴史や化学という点ではそんなことをする必要がない。
化学的に、言うまでもなく天皇陛下は人である。
なぜ天皇陛下を日本は神としたか?
天皇陛下ができたのはだいたい2,000年前(1,800年前という説も)、神武(じんむ)天皇を即位した。
日本は天皇陛下を神の子どもとして考えた。それによって日本がまれにみる成長や繁栄をし、安定した国を作ることができた。
日本は「神様の遺伝子を持っているから」2,000年間、天皇陛下が殺されるということはなかった。
結局、人間というのは、(2,000年前は当然だが)今でも何か絶対的な存在を求めるものである。
動物から生まれてきたからであろうか。
日本のように「神から生まれた天皇」を一人決めると、その天皇は2,000年も一緒であった。
中国共産党の場合
中国の場合(4,000年の歴史というのはウソであるが、2,000数百年の歴史はある)
天子というものがいた。(日本でいう天皇陛下みたいなもの)ただし、天子は神の子どもではない。
天の神様から権限を与えられた人という意味である。
中国では、漢・唐・宋・元・明・清(ほか)という王朝ができた。
唐が滅びたら、天子は原則殺されるか、どこかに追放されて、全く血筋の違う人が次の天子になる。
ヨーロッパ・アメリカなどの場合
ヨーロッパ(そんなに歴史は古くないがローマ時代からある)
ローマの皇帝なども、ローマが滅びたら、だいたい殺される。ローマが滅びなくても、途中で殺されたりする皇帝はいくらでもいる。
中世を経て、新生ローマ時代のブルボン王朝の最後のルイ王様は、フランス革命で大衆の前でギロチンで殺された。
イギリスにはエリザベス女王がいるが、500年前にドイツからきた王室の末裔である。
日本の「神様的天皇」制度
人間の歴史には「皇帝」や「王様」など、「神格化された人」がいる。これは単純に考えることはできないことである。中国の共産党 習近平(しゅうきんぺい)が終生トップであるし、ロシアのプーチン大統領、イギリスのエリザベス女王と神格化された人がいる。
元首がいつもいつも選挙で選ばれていると、人間というのは落ち着かない。
韓国などの大統領は、国民の選挙で選ばれる。そして大統領が終わると、死刑か監獄行きである。
前の女性は、昔の大統領(パク大統領)の血筋(娘)であるが、33年の刑で監獄に入っている。
国民は、尊敬すべき大統領や元首が監獄に入ったり、目の前でギロチンで切られたりすると、心が落ち着かないのである。
日本は上手い制度を作ったと思う。天皇陛下はもちろん人間なのだが、天皇陛下「だけ」を神様にした。他の国は、うっかり貴族とかなどもその枠の中に入れてしまったりした。
(日本にも貴族はいたが、日本の貴族は神様とつながってない(全く関係してない))
天皇陛下という一人だけを神様にしたので、殺されたり、ひどいことをされることがなかった。
(中世に少しだけあったが)
「人間はなにかわからないが、神格化された人が一人必要である。一人がいい。多いとそれが支配層になって、その国のものになってしまう。」
「国」としての「連続性」がない中国・アメリカ・ヨーロッパでは‥
今の中国などがそれだ。8,000万とか9,000万とか言われる中国共産党が特権を持って、中国人を圧迫するのである。そのトップが習近平というだけである。血筋は関係ない。
習近平以下の残りの9,000万人の中国人が、残りの14億人の中国人を支配している。
これは中国だけでなく、ローマ時代からのヨーロッパもそうであるし、アメリカもそうである。
大統領の下に1%の金持ちがいて(資本主義なので)99%のアメリカ人を支配している。
ギリシャの場合は、ソクラテス始め、市民が5%おり、残りの95%の奴隷を支配していた。
天皇陛下お一人を「神」とした日本人たち
こういうことはまずいと、日本の誰かが気づいて天皇陛下一人を神にしたのである。
天照大神(あまてらすおおみかみ)の五代下に神武天皇がいて、天皇だけが特別だとした。
そして、明治維新後に天皇が復帰したのだが、大統領的な天皇が良いか、神様的な天皇が良いかということがあったと思う。
結局、神様的天皇になった。もし大統領的な天皇であったなら、大東亜戦争で負けた時に天皇は確実に絞首刑だった。マッカーサも「日本人にとって天皇陛下は特別であり、被告にすると変なことになるんじゃないか?」と言い、東京軍事裁判では天皇陛下を「被告」にすることすらできなかった。
太古の昔から明治維新までは(形式的には)神様としての天皇陛下だった。「国を治めるために」神様にしておいた方がいいということだったが、それによって、日本という国の連続性が保たれていた。
日本人は自分を日本人だと思っているが、中国人は中国人だと思っていない。それは王朝が変わる度に違う国の人になるからである。(他、ナポレオンが出てくるまではフランスという国はなかった等。)
日本の2,000年続く天皇陛下制度が、日本人に誇りや団結心を与え、戦争を少なくした理由だと思う。
この「神格化された人」がいらなくなるのはいつか?
私はまだギリギリであるが天皇陛下(神格化された人)は必要だと思う。ただし、これからのことは、わからない。それはその時代の人が真剣に考えていかなければいけない。