デジタル大臣秘書官の記事(追記あり)

「一般社団法人PublicMeetsInnovation(PMI)」なる団体のnoteに、「デジタル大臣秘書官に聞く、デジタル改革」という記事が掲載された。

デジタル大臣秘書官の「プレゼン」が記事の大部分を占め、あたかもデジタル庁(準備中)の広報である。

そうであるならば、デジタル庁(準備中)のサイトでもなく、ここ半月更新されていないデジタル庁(準備中)のnoteでもなく、いち一般社団法人のnoteに政府要人が「プレゼン」を掲載するのかよくわからない。

一般社団法人PublicMeetsInnovation(PMI)って何?

この「一般社団法人PublicMeetsInnovation(PMI)」とはなんなのか。長くなるので端折るが、政府の委員会の委員や元官僚、学者(落合陽一など)、弁護士などで組織されたシンクタンクということである。どういう性質の団体なのかは推して知るべしである。

プレゼンの内容について

そんな中、去年9月にデジタル庁が発足し、デジタル改革担当大臣の秘書官を拝命し、いま9ヶ月が経ったところです。

デジタル庁はまだ発足していない。この界隈の人たちは、あたかもデジタル庁が存在するように考えて、デジタル改革担当大臣が初代のデジタル大臣に就任することが既定路線だと考えているようだ。

各省庁バラバラとは何か

これまでも各省庁ではデジタル化を進めていましたが、バラバラにやっていました。
<主に担っている省庁の例>
● 各省庁の調整:内閣官房IT総合戦略室
● 政府システムセキュリティ:内閣官房サイバーセキュリティセンター
● マイナンバー制度:内閣官房番号制度推進室
● インフラ(5Gなど):総務省(情報通信)
● 政府システム調達、政府システムの個人情報保護:総務省(行政管理)
● 自治体システム(個人情報含む):総務省(自治)
● 企業DX:経済産業省
● 各省システム調達:各省(国税、年金、国民健康保険など)
デジタル庁の役割は、これまで省庁がバラバラに行っていたデジタル施策を一元化することです。省庁間の調整と、既存のルールを見直すという機能を担っていきます。

各省庁がバラバラにやっていたデジタル化の例として、一番最初に「各省庁の調整」と書いてある。内閣官房IT総合戦略室、デジタル庁(準備中)ではないですか。そもそも「各省庁の調整」というのは、デジタル施策を一元化することと同じ意味ではないですか。その「調整」が十分にできなかったから、デジタル庁を作らざるを得なくなったのではないですか。

政府システムセキュリティ、政府システム調達、政府システムの個人情報保護という項目についても各省庁がバラバラにやっていたという例については疑問がある。内閣サイバーセキュリティセンターや総務省は、そう言った分野について、各省庁のシステムに横串を刺すのが目的の部署なのだから、ここに含めるのは不適切だと思う。

そもそも、デジタル化、デジタル化と言うが、行政のほとんどの部分が、デジタルの上に成り立っているのだから、各省庁が法律の定める所掌事務の範囲内でデジタル化を進めるのは当たり前のことで、「バラバラ」というのは単に見方が違うだけのことである。

会計制度の見直し?

システムの調達ルールも、単年度主義の予算の見直しや、クラウドを利用する上での会計基準の見直しもやっていきます。

単年度主義は、日本国憲法第86条にも関係するところであり、やらなければならないところではあるかもしれないが、日本国憲法を遵守する義務がある公務員が安易に言及すべきではない。

日本国憲法第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

それから、ガバメントクラウドを創ります。国も自治体もハイレベルの環境を用意し、自治体システムも、ガバメントクラウド上で標準化されたシステムを利用する形式に移行することで、ベンダロックインから解除される世界をこれから創ろうとしています。

ベンダロックインという言葉は、いまのところ、例えばAWSにあるがAzureにないサービスを導入する、という意味で使われていると理解している。ガバメントクラウドというのがどういうものかは分からないが、一般的な仮想化されたハードウェア、ソフトウェアのリソースの提供はすることがあっても、各省庁の政策に特化したシステムについては、ガバメントクラウドの上に構築しなければならないと理解している。

そうなると、ガバメントクラウドの上にベンダがシステムを構築するという状況は変わらず、単にガバメントクラウドという基盤を作ったからと言って魔法のようにベンダロックインが解消されるとは思えない。

マイナンバーの活用が進まない理由

デジタル化が進む社会だからこそ必要なID基盤は、人に関してはマイナンバー(番号)やマイナンバーカード(電子証明機能)が基盤となるものですが、実は今はまだ日本では完成されていません。
各省庁の人や企業への支援策はたくさんあり、それらのサービスメニューごとにIDがあると、複数のサービスを横並びで見た時に同じ人や企業をターゲットにしているという突合ができません。それらに横串を指すことができるのがデジタル庁です。

「抵抗勢力のせい」というのかもしれないが、日本年金機構の情報流出問題を機に、統合IDに対する国民の不安が広まったこともあり、マイナンバーの利用に大きな制限がかかり、民間企業での活用が制限されているのがマイナンバーが国民生活を便利なものにするものになっていない最大の原因ではないかと思うのだが違うのだろうか?そのことに応えることが先決ではないだろうか?厚生労働省がやったことだからデジタル庁(準備中)の関知するところではない?

サービス向上というが、説明として成立していない

「公金受取口座登録法」という法律が5月に成立しました。これで、給付金などを国民が受け取る際、口座を登録していれば、従来のように申請書を出したり、所得証明書や銀行口座情報を提出する必要がなくなります。
たとえば厚生労働省がコロナ禍で低所得の子育て世帯に5万円の給付金を行う際、今までは紙の申請書と、自分が低所得者だと証明する書類を提出する必要がありました。
それが今回の新しい法律で不要になりました。児童手当等を給付している家庭が対象者なので、元々児童手当等を届けている口座の情報はもう市役所にはあり、その口座に対し「振り込みますね、いやな場合だけ言ってくださいね。」という通知をお送りしたという、ほぼプッシュ型で出来るようになりました。

「低所得の子育て世帯に対する子育て世帯生活支援特別給付金(ひとり親世帯分)」のことを言っているのだと思われるが、この給付金は、令和3年度(令和2年度からの繰越分)新型コロナウイルス感染症セーフティネット強化交付金による給付金で、来年度以降給付されるかどうかは分からない。

 また、5月には給付が終わっているもので、5月施行の法律が間に合っているのかも分からないし、単発の給付金を、このような場合の例としてあげるのが適切だったか疑問だ。

住民基本台帳法第五十三条により五万円以下の過料

たとえば今って住民票のあるところで住民税が課税されますが、2拠点生活をしている人や、登録している住所には実際あまり住んでいない人がコロナ禍での生活の変化で今後も増えていく中で、課税の在り方などニーズに見合った制度に直していく必要があるのではと、個人的には思っています。

生活の拠点でないところに住民票を置いたままにしておくのは、違法行為である。国の役人がこのようなことを発言するのは、いくら一般社団法人のnoteとはいえ、不用意なのではなかったか。

追記

(2021.8.7追記)セキュリティ専門家の高木浩光さんからも、小山秘書官の発言についてツッコミが入っている。「個人保護法」というのは、聞き取りミスかな、と思ってスルーしていたが、国家公務員の遵法義務からしてどうなのかという危ない発言も出ている。


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