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宇宙の端っこまでの距離は138億光年??

友人から以下の質問を受けました。

宇宙年齢は138億歳なので、我々が観測できる宇宙は138億光年か?

現在、我々が観測できる最遠方の宇宙は、ビッグバンの名残である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)で、これは宇宙が約38万歳のときの姿です。現在の宇宙年齢が約138億歳であることを考えると、CMBは138億年前の宇宙の姿を見ているというわけです。

さて、その内容を踏まえた上で冒頭の質問に戻ると、答えはNoです。

例えば、「光の速さで1年かかる場所までの距離はどれくらいか?」と聞かれたら、その答えは「1光年」で正しいです。じゃあ、何故、138億年前の宇宙までの距離だと138億光年にならないのでしょうか?

答えは宇宙が膨張しているからです。138億年前に出た光が138億年かけて我々に到着する間にも宇宙膨張によって、光が出た位置は遠ざかっています。これは例えて言うなら、空港で見かける動く歩道みたいな話です。歩道の外にいる人から見たら、動く歩道の上にいる人はどんどん遠ざかっていきますよね。宇宙でも同じです。宇宙が膨張している事、光の速度が有限であることが重要なのです。

じゃあ、「光の速さで1年かかる場所までの距離が1光年なのはおかしい」と思うかもしれませんが、宇宙の膨張が重要になってくるのは、ある程度、遠くの宇宙(過去の宇宙)です。1光年先は、人類レベルでいうと途方もなく遠い距離ですが、宇宙論のスケールではご近所レベルなくらい近く、宇宙膨張の影響を考えなくて良いのです。なので、光の速さで1年かかる場所までの距離は1光年で良いのです。

私達が距離(長さ)を測定する時、「ものさし」が必要です。例えば、あなたの目の前にあるスマホの大きさを測りなさいと言われたら、物差しが必要ですよね?宇宙でも同様です。距離を測定する時物差しが必要です。そして、物差しには「目盛り」がついてます。宇宙の話よりも地球の話の方が簡単なので、そちらから考えてみましょう。例えば、「日本の場所はどこですか?」と聞かれたら、正確に答えるためには、日本の緯度と経度を答える必要があります。これは、地球における住所です。日本の場合だと東経139度、北緯35度です。ちなみに私のいる中国の場合だと、東経105度、北緯35度の位置にあります。地球に張られた経度、緯度という座標では経度間や緯度間などの目盛りの間隔は変わりませんよね。しかし、宇宙では宇宙膨張によってこの目盛りの間隔が変わってしまうのです。物差しの目盛り間隔が変わるので、日常生活でそんな物差しを使ってものの長さを測定しろと言われたら面倒臭いですよね。そんな物差しは返品したくなりますよね。しかし、膨張する宇宙ではそんな物差しでも返品することができない。だから、膨張する宇宙での距離測定はややこしくなるのです。


膨張する宇宙では、目盛りの間隔が変わる。こちらより引用

では、宇宙の膨張を加味した上で距離を測定するにはどうしたら良いのでしょうか?具体的な説明は省きますが、以下の計算式で計算することができます。

$$
d_{\mathrm{H}}=\int_0^{t_0} \frac{c d t}{a} \approx \frac{c}{H_0} \int_0^1 \frac{d a}{\sqrt{\Omega_{\mathrm{m}} a+\Omega_{\Lambda} a^4}}
$$

この式で重要な事として、膨張宇宙での距離の測定には宇宙の膨張具合に加えて、宇宙の中身の両方を考慮しないといけないという点があります。これは一般相対性理論的に宇宙を考えているためです。

ということで、138億年前の宇宙までの距離をこの式を使って計算すると、約470億光年となります。

いかがでしょう?138億年前の宇宙までの距離が138億光年ではない理由をご理解いただけましたか??

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