"General theory of relativity"(Dirac)を読む17
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17章は重力赤方偏移効果について。
静的な重力場で、静止した原子が単一な放射を出している状況を考える。その光の波長には決まった有限な世界長$${\Delta s}$$が対応する。今、原子は静止しているので、16章で使った様な静止系の座標系を用いると
$$
\Delta s^2=g_{00} \Delta (x^{0})^2
$$
となる。$${\Delta x^0}$$は周期であり。すなわち、静止系で測定した波の山の間隔の時間を測ったものである。もし、光が他の場所に走っても$${\Delta x^0}$$は定数である。この$${\Delta x^0}$$は、原子の置いている場所で出すスペクトルと観測者では同じではない。したがって、この周期は光が発せられた重力場ポテンシャル$${g_{00}}$$に依存する。観測者にとっての世界長は
$$
\Delta_{obs}=\Delta_{souce} g_{00}^{-1/2}
$$
となり、スペクトル線は$${g_{00}^{-1/2}}$$だけ遷移する。
ニュートン近似を使うと、式(16.6)より
$$
\Delta_{obs}=(1-V)\Delta_{source}
$$
となる。$${V}$$は強重力場(例えば太陽表面)ではマイナスなので、地球で放射された場合と比べると、太陽から来る光は波長が伸びて赤方偏移する。(*例として太陽表面を出しているのが、あくまで地球に比べて強重力なだけであり、一般的な文脈では太陽表面の重力場は弱い)
この結果は、太陽からの光について見られるが、どちらかというと、光を出す原子が運動しているせいで生じるドップラー効果に覆われがちである。赤方偏移がもっとはっきり観測されるのは白色矮星の出す光の場合で、白色矮星の重力場は太陽表面よりもずっと強い。
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