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第43回 釈尊の悟り⑪ 音色(ねいろ=音に色がついている!)

 音を見たことがありますか? 音を聞く人は沢山いますが、音を見る人は、一部の例外的な人(共感覚所有者)を除いて、ほとんどいないのではないでしょうか。

 オシロスコープという電子機器を使えば、音の波形を見ることは、誰にでも可能です。しかし、それは、波形を見るだけであって、音そのものを見たことにはなりません。

 そもそも、音って見れるものなのでしょうか?

 音は耳で聞くものであり、眼で見るものではない、というのが一般の人の常識ではないかと思います。

 唐の三蔵法師玄奘(げんじょう)が漢訳した「般若波羅蜜多心経」(略称 般若心経)には、観自在菩薩(かんじざいぼさつ)という菩薩が登場します。

 観自在菩薩は、一般的には、「世間(世界)を自由自在に観察する能力を有する菩薩」という意味に理解されています。

 一方、玄奘より約250年前に活躍した、仏典の漢訳者「鳩摩羅什」(くまらじゅう)は、般若心経の異訳である「摩訶般若波羅蜜大明呪経」を著わし、その中で、同一個所を観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)と漢訳しています。

 鳩摩羅什訳の観世音菩薩は、「救いを求める衆生(しゅじょう)の音声(おんじょう)を観じて、その苦悩から救済する菩薩」という意味に解釈されています。

 翻訳に使用した原本の記述(原語?)が異なっていたのではないかと推測されていますが、鳩摩羅什の時代には、瞑想行を成就した修行者(=菩薩)は、苦悩する衆生が発する音声を、心眼で観る能力を獲得していたと見なされたのです。

 鳩摩羅什は、「摩訶般若波羅蜜大明呪経」の他にも、有名な「妙法蓮華経」(略称 法華経)を漢訳しています。

 法華経の第25章に当たる「観世音菩薩普門品」は、通常「観音経」と称され、観世音菩薩が現わす様々な救済の働きについて説いています。

 「観音経」に登場する菩薩は、救済対象となる衆生が発する音声を観じていたから「観世音菩薩」と名付けられたと考えられますが、音声の何を観ていたのでしょうか?

 音声を観ることなど普通の人間には全く想像もできませんが、この世には、音と色を関連付けて知覚することが出来る、特殊な能力を保有する人がいることが分かっています。
 この能力には、共感覚という名前が付けられています。

 音と色を関連付けて知覚する共感覚者は、音の変化を、色の変化として捉えることが出来るそうです。
 つまり、音に色がついているのを知覚するのです。

 仏典に登場する観世音菩薩とは、衆生が助けを求めて発する音声を、共感覚者のように、色の変化として心眼で認識する能力を獲得した菩薩のことではないかと思います。

 信じ難いことですが、音と色は関連付けられた情報として同時に知覚できるからこそ、音色(ねいろ)という言葉が生まれたのではないでしょうか。

 共感覚者にとっては、共感覚は日常的に起きていることであり、決して珍しいことではないのです。

 しかし、普通の人間は厳しい瞑想行を成就しなければ獲得できない能力であり、仏教では、仏陀・菩薩が備えるという六神通(ろくじんつう)のうちの、天耳通(てんにつう)・他神通(たしんつう)として知られています。

 私は、若い頃、人間の意識(心・魂)は肉体から分離・離脱すること、そして、分離・離脱した意識(心・魂)には、音に色がついて見えることを、間接的に体験したことがあります。

 どういうことなのか直接体験していないので詳しい説明はできないのですが、とにかく、体外離脱体験者には、音に色がついているのが見えるらしいのです。(全員かどうかは分かりません)

 その当時、ヒッピー運動等のニューエイジムーブメントが、世界的に流行していました。

 音に色がついていることを間接的に体験した私は、サイケ調の絵画等で一世を風靡(ふうび)したサイケデリックアートは、薬物によるトリップ体験で分離・離脱した意識(心・魂)が垣間見た音の世界のイメージを、カラフルな色彩で表わしたものではないかとひらめいたのです。

 病人の患部を体表面に現われる色の違いで見分けるとか、指先からオーラが出ているのが見えるとか、現在の科学では解明できない、不思議な出来事・現象があるのは事実です。

 六神通という超能力を表わす言葉があるように、瞑想行を成就して仏陀・菩薩となった修行者は、普通の人間には想像もできないような、不可思議な能力を獲得するのです。

 六神通の名称と能力は、以下の通りです。(ウィキペディアの記述を引用)

 神足通 – 自由自在に自分の思う場所に思う姿で行き来でき、 思いどおりに外界のものを変えることのできる力。飛行 や水面歩行、壁歩き、すり抜け等をし得る力。
 天耳通 – 世界すべての声や音を聞き取り、聞き分けることが できる力。
 他心通 - 他人の心の中をすべて読み取る力。
 宿命通 - 自他の過去の出来事や生活、前世をすべて知る力。
 天眼通 – 一切の衆生の業による生死を遍知する智慧。一切 の衆生の輪廻転生を見る力。
 漏尽通 – 煩悩が尽きて、今生を最後に二度と迷いの世界に生 まれないことを知る智慧。生まれ変わることはなくなっ たと知る力。

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