Googleストリートビューに洗濯物が映ったらプライバシー侵害なのか?
最近引っ越しをした関係で、近所の状況把握や、移動の際の経路把握にGoogleEarth、Googleストリートビューを使用することが増えた。
Googleストリートビューと言えば、360°ビューの画像で地図だけでは把握しきれない景色等の視覚情報を把握できる、というのが最大の魅力ではあるが、時にこのストリートビューが事件解決のカギとなったり、はたまたその存在が事件を巻き起こしたりという事例もいくつか存在する。
ちなみにストリートビューと言えば、その地で生活する人々のトンデモな瞬間を偶々捉えてしまった系の画像が結構有名。そういった画像をまとめている記事がたくさんあるので、暇つぶしにでも読んでみてほしい。
■グーグルマップで発見された驚きの珍百景
https://www.excite.co.jp/news/article/Karapaia_52293149/
■おすすめのストリートビュー 15 選
https://japan.googleblog.com/2020/02/15.html
福岡市で起こった「ストリートビュー事件」
ストリートビュー事件(原審:福岡地判平成23年3月16日判例集未登載(平成22年(ワ)第4971号),控訴審:福岡高判平成24年7月13日判例集未登載(平成23年(ネ)第439号))は,福岡市内に居住する原告(控訴人)が,被告(被控訴人)の親会社である米国法人Google, Inc.(以下,「Google」という.)が提供する「Googleストリートビュー」(以下,「GSV」又は「ストリートビュー」という.)に関して,原告(控訴人)の住居のベランダに干してあった洗濯物を撮影・公表されたため,強迫神経症及び知的障害が悪化し,転居を余儀なくされたとして,プライバシー侵害等の不法行為に基づく損害賠償請求を行った事案である.
引用元「ストリートビュー事件高裁判決(福岡高判平成24年7月13日判例集未登載(平成23年(ネ)第439号))の分析と我が国個人情報保護制度への示唆」(板倉陽一郎)
弁護士さんの裁判報告書なのでちょっと小難しい内容だが、簡単に言うと「ストリートビューに自分の洗濯物が映ったせいで強迫症状と知的障害が悪化したし、引っ越しもしなければならなくなった」のでグーグルを相手取って訴訟を起こしたという内容。度胸がある。
私も「洗濯物が映ったくらいでなぜ訴訟?」と思ったが、要は「洗濯物=個人情報」で、干している服で個人を特定できてしまう、そんなものをだれでも見れるサイトに掲載するのはプライバシー侵害じゃないのか、という話みたい。
てっきり隠していた女装やらコスプレ趣味やらがバレたとかそういう話かと思っていたのだが、全くの見当違いでした。
グーグルのストリートビューに関しては、提供開始当初からこういったプライバシー侵害に関する非難が結構あった。確かに人の顔が映った場所に関してはモザイク処理を施してあるものの、「これ、その気になれば特定できちゃうんじゃない?」と思うくらいの情報があったりもするので、一理ある主張なのかもしれない。
ただ、こういった主張に目を通してみると、「陰謀論」だなんだといった根拠のない卦体な話がセットで出てきたりすることがあるのも事実。
で、結果的にどうなったかと言えば、まぁ当然っちゃ当然だが、原告の請求は全て棄却されている。
ストリートビューはあくまで「町全体」を撮影、掲載する行為であって、ストリートビューで撮影された360°の景観写真は解像度も低く、またそれによって個人のプライバシーを侵害するほどの具体性を持ち合わせてはいないから、というのが裁判所の見解とのこと。
さらに言えば、洗濯物自体が「誰の目にも触れてほしくない、隠したいもの」ではないというのもこの結論を裏付ける要因となっている。だって、洗濯物なんて元々誰の目にも付くところで干していても何らおかしい事ではないじゃないか…。
でももしかしたら、盗みに入ったガレージに閉じ込められた泥棒が訴訟して勝訴するアメリカなら、こんな主張でも勝訴があり得たのだろうか。
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