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トランジットビザ免除で中国旅行

中国はコロナ以降、未だ観光客の渡航が事実上不可能な数少ない国の一つである。ビザセンターを通じての観光ビザ取得の申請は一応可能になったらしいが、申請許可のハードルはかなり高いらしく、コロナ前はビザなしで行けただけに気持ちが萎えてしまうものだ。とはいえ2023年5月現在、日本人がビザなしで中国に渡航できる唯一の手段がある。それはトランジットだ。

その内容は144時間以内のトランジットであればビザが免除されるというものなのだが、肝心なトランジットの定義というものが非常に曖昧であり、実践した人もまだ少なく情報の入手が難しいものであった。しかし高層建築マニアである自分は、コロナ前に行きそびれた上海の摩天楼がどうしても見たくて、4月末に陰性証明提示が不用になってからすぐ、中国トランジット入国チャレンジを試みた。

自分は、関空(大阪)→浦東(上海)→桃園(台北)→羽田(東京)というスケジュールで、上海をトランジット先ということにし、台湾へ旅行しに行く人間を装った。飛行機会社は、関空→浦東、浦東→桃園が春秋航空、桃園→羽田がpeachである。

最終目的地ということにしている台湾までは全て春秋航空を利用しているが、予約は別々にしているため予約番号は異なる。単純に安かったので自分はどちらも春秋航空を利用してトランジットっぽさを出すことができたが、後に飛行機会社も予約番号も異なるフライトでビザ免除入国に成功した人の例も確認できた。

ちなみに自分の春秋航空の両フライトの間隔は約5日間で予約番号も異なるため、客観的に見てトランジットでもなんでもなく、ただ単に上海に来たやつのムーブでしかない。果たして乗れるのであろうか。かなり不安を抱えて関空のチェックインカウンターへと向かうことになった。

スタッフ「中国のビザは何か持っていますか?」
自分「いえ何も持っていません。」
ス「ビザがないと中国行きのフライトには乗れないんですよ、、」

まあトランジットビザ免除の解禁は最近だし、何しろ前例もほぼないであろうからここまでは予想通りであった。そもそも自分のこの旅程で、ルール上ビザ免除が適用されるのかどうかも不確かであるのだから。

自「今は144時間のトランジットの場合のみビザが免除されるルールができてまして、、」
ス「そうなのですね、確認してみます。」

自分は中国を出国するフライトの予約画面を提示すると、スタッフさんは色々と調べ始めてくれた。しかしどうもピンと来てない様子だった。次第に別のスタッフさんも何人か集まってきて、場がざわつき始めてしまった。少し嫌な予感がする。

すると別のところからリーダー的なオーラを持つ方が出てきて、「ビザないと中国はダメですよ!」とその場のスタッフたちを一蹴してしまった。

あ、終わった。ちょっと待ってくれ、ビザ免除についてもうちょっと触れて欲しいんだが。自分は確かにこのスリル感を味わうのも、あえて今の時期に中国に行く醍醐味だと考えていたが、やはりコロナ禍で三年以上もあたためて楽しみにしていた中国旅行がパーになるのは辛い。

しかしまた奥でスタッフさんたちが何かを話し始めると、「もう一度確認しますので少々お待ちください。」とのことでまた待つことになった。それから自分の中国滞在時間が144時間以内であることを入念にチェックし始めると、

「まあ、大丈夫ですね、、」
と歯切れが悪そうに返答された。

それから念の為ということで、台湾を出国するチケットの予約画面の提示も求められた。しかしこれが問題である。自分は上海経由で台湾に旅行すると言いながら、台湾の滞在時間がたったの10時間ほどなのである。

予約画面を見せるとスタッフさんたちが不可解な顔でこちらを見つめてくる。トランジットの上海に5日間もいて、最終目的地の台湾がたったの半日!?と顔に書いてあるかのような表情をされ、かなり怪しまれてしまった。流石にスケジュールめちゃくちゃすぎたかな?自分は必死でスタッフさんに説得を試みるも、これは搭乗拒否されてしまうのだろうかと不安で押しつぶされそうになった。

しかしまた数分のチェックが入ると、「一応条件としては問題ないので大丈夫です」とのことで、なんとかチェックインが完了した。ヒヤヒヤさせやがって。

にしても一人の旅行オタクのために職員さんをたくさん巻き込み、多大な時間を費やさせてしまったことは本当に申し訳なかった。しかし上海行きのフライトチケットをゲットし、約三年半ぶりに中国渡航が現実味を帯びてきたあの時のワクワク感は言葉にできないものである。

上海浦東国際空港到着

浦東国際空港

浦東国際空港でもまたイレギュラーな渡航者として、関空で体験したヒリヒリ感を味わうことになるのかと思ったが、イミグレではトランジットビザ免除の入国者のためのレーンが存在しており、出国のチケット提示と簡単な質問で意外とスムーズに入国できてしまった。

入国スタンプ代わりのシール
東方明珠電視塔・上海タワーなどの最寄、陸家嘴駅

今回のビザ免除の範囲は上海市・浙江省・江蘇省なので、自分は上海だけでなく江蘇省の南京にも行ってきた。浙江省は時間と優先順位の関係で行けなかったが、全部で合計144時間(6日間)滞在できて周辺の省にも行くことができるので、トランジットの割には太っ腹だと感じた。まあコロナ前のビザなし入国に勝ることはないのだけれど、、

今回の入国は上海浦東国際空港からであるが、他の空港からでも多少の条件の違いはあれどトランジットビザ免除は適用されるみたいだ。今後コロナ前の15日間のビザ免除がいつになったら復活するのか、国が国だけに検討もつかない。しかしそんな中でどうしても中国へ行きたくなってしまった場合は、飛行機を別切りにして意味不明なフライトスケジュールを組んで、奥の手としてこのビザ免除を利用するのはアリだと思った。上海トランジット滞在時間5日間、最終目的地台北滞在時間半日というめちゃくちゃな旅程でも入国できたのだから。



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