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絵を描きたい人にデザインの勉強をしようとお勧めしているハナシ

こんにちは。就労継続支援ビルドの秋田です。

ビルドはイラストとデザインが業務内容の就労継続支援B型事業所ですが、「イラストやりたいです!」と見学しに来た方に、堂々と「絵を仕事にするのは厳しい」ということを伝え、デザインの勉強をしていただくことが多々あります。

イラストのお仕事があるのは事実ですし、現在進行形でお仕事でマンガ描いたり、ストックイラストを制作販売しているのですけれども。

業務に関わっている方の大半がデザインの練習をしている利用者さんなのですよ……。

日ごろの仕事の進め方としては、普段はデザインの勉強をしている利用者さんに、案件があるときだけ絵を描いていただくということが多いです。

ストックイラストでリリースできる絵を描けるようになることを目標にイラストの練習をしている方もいらっしゃいますが、

そういった方はまだ練習段階なのでお仕事をお願いするレベルに達していないということも理由の一つです。

一定程度に絵を描けるならば、デザインのスキルを身につけて武器を増やしたほうが仕事の幅も広がるし、表現方法も増えるよ、という話です。

また、スタッフや他の利用者さんが描いた下絵をデザイン担当の利用者さんにイラレでトレースや彩色していただくといったやり方もあって、「絵の仕事に関わる」といっても様々な方法があるなあと思います。



見学時、「一般でも事業所でも色々な仕事を経験してきたけれども、どこも長続きしなかった。自分には絵しかないと思う」

とおっしゃられた場合には特に強く、「趣味で!楽しく!絵を描くのが一番ですよ!!」とお伝えします。


絵を仕事にしているビルドだからこその体感です。

ビルドに関わったことで、せっかくの楽しみを失ってほしくないのです。

そのくらい仕事で絵を描くということは大変なことだと考えています。


自由に好きなように描くのとは違い、興味が無いものや今まで描いたことがないものを描くことも多いですし(ビルドのお仕事では車椅子などが頻出します)

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今まで得意だと思ってきたことなのに「なぜできないのか」に向き合わないといけないことも起きます。

お仕事レベルを想定した細かい修正指示を何度もこなすうちに「なんだか、おもしろくないな」と思ってしまうこともあるでしょう。

好きなことだから仕事でも続けられるかというと、それは全く別の話なのだなあと思います。

好きなイラストだからこそ、仕事として割り切るのが難しいのではないか?と思う場面も多いです。


せっかくビルドに興味を持って来ていただいたのに、いきなりこのような真反対の話をするのは心苦しいので、

「絵を仕事にするのは厳しいことである」ということを伝え、デザインの勉強をしていただきながら合間に気分転換に絵を描いてみるという方法を取っています。

(でも実は、この気分転換のイラストを見た上でお仕事をお願いすることが多いのです。不思議ですね)

仕事の練習の時間とイラストの時間の配分は、利用者さんそれぞれで異なります。



「イラストの仕事をしてます」と言いながらイラストやらせないなんておかしくない?と思われるかもしれません。

決して詐欺とかではなくて苦笑

イラストを描く上で必要な構図作り…いわゆる絵作りではデザインのレイアウトの知識がものすごく有効だし、逆にデザインする上では「ずっと絵を描いてきた」というものづくりの経験やセンスが有用なのです。

ちなみに、デザインの表現方法は絵づくりにも有効だという話は以前にビルドのセミナーでも行いました。

実際、今年参加したオリジナルポストカード販売イベント+P16で販売するために行ったポストカードコンペで入選した利用者さんも

ほとんどが普段はデザインをメインに仕事している方たちなんですよ。

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Illustratorでパーツを作って組み合わせたり手書きイラストをトレースして装飾を付け足したりPhotoshopを使って仕上げたり…と、日ごろのデザインの仕事に関わっている経験がふんだんに生かされています。

実際、デザイン事務所等で働いているデザイナーさんでも趣味でイラストを描いていて仕事でもちょっと使うという機会は多いですよね。イメージはそんな感じです。


以上に述べたことは、あくまでも商業イラストを仕事にするなら大変ですよ、という視点です。

アールブリュット的なアートとしてのイラストなら考えなくてもいいことが多いかもしれません。

ただ個人的には、アールブリュット系アーティストの皆さんも、ものっすごく選ばれし者だと思っています。テレビで紹介されたり海外で作品が数百万で売れたり製品化されたり……みんながみんな、あんな風にできるようになるわけではない。「イラストレーターとして働く」「アーティストとして認められる」という点においては、結局は障害の有無関係なく等しく厳しい世界だと思います。

スポーツをやっていても全員がオリンピックに出られるわけではないのと同様に、障がい者スポーツをやっている全員がパラリンピックに出られるわけではありません。イラストやデザイン、アートの世界でも同様です。仕事になるのはごく一握りであることは知っておいてください。とお伝えすると、わかっていただけることが多いですね。


「イラストやりたいです!」と言っているのにデザインの勉強をしてもらう理由を書いてみました。実はイラストにも役立つ知識技術がたくさんありますので、どうぞ怖がらずにデザインの練習に触れてみてくださいね。

いただいたサポートは利用者さんの工賃に!素敵なヘッダーイラストを描いてくださった皆さんに還元しますね。