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(独力で制作)できるとは?のハナシ

こんにちは。就労継続支援ビルドの秋田です。
前に書いたnote

たくさんの方に読んでいただけているようで良かったです。
実はこのnoteを書くときに考えていたことが別にあって、今日はそのお話です。

面談をしているときなどに、利用者さんから「ちゃんとできるようになりたい」といった発言が聞かれることがあります。
じゃあ、その「できる」とはなんなのか?というと、具体的にどうなれたらいいのか?目指すべき状態像が曖昧であることが多いです。
当たり前ですよね。全く未経験の分野で、今やっている練習がどんな仕事に繋がって、どのくらい"できる"ようになると実務レベルになるのかのイメージをするなんて、至難の業です。
山登りをしていて、地図はあって山の全体像の写真も見ているけれど頂上が見えていないし、頂上に立った感じも想像できない。そもそも自分は何合目?という状態です。
ビルドではリアルに仕事が動いていて、実際の仕事に即した作業練習を行っているのですけれども、それでもやはりイメージすることが難しい。これは未経験の方が多いビルドの課題です。
経験していないことをイメージするのって、すごく難しいのです。

ここで、しばしば例えに使用する「料理」
基礎を学ぶ段階やプロとして仕事にする段階、自己流でやっているというのはどういうことなのか?を解説してみたいと思います。

基礎学習…レシピどおりに作ろう

実行機能障害のハナシでも説明しましたけれど、まったく経験のないもの、見たことも食べたこともないものをいきなり手探りで作ることは不可能ですね。
豊富な料理経験があれば別ですが、ここでは料理自体初心者という想定でお考えください。

レシピ本をイメージしたイラスト。肉じゃがのレシピ

そんなときに味方になるのがレシピです。最近は動画で説明してくれるものが主流ですね。見たとおりにやればOK。だいたいおいしく作れます。

レシピそのままに料理を作ればおいしくできる

ビルドのカリキュラムで言うと、お手本を見ながら模写するフェーズです。
基礎段階では、Illustratorの基本的な操作のみで簡単なチラシを作ることができるようになります。

少し慣れてくると味変もできますよね?

肉じゃがの具を豚肉から鶏肉にチェンジ

肉じゃがは、豚肉じゃなくて鶏肉でもおいしいですね。
この程度であればレシピ通りでなくても破綻しません。
分量を半分にしたり倍にしたりくらいも大丈夫。
でも、塩味とか焼き肉のたれを使ったアレンジをしたい場合は、別途レシピを検索してください。
このように、どの程度のアレンジなら破綻せず、どこからがやりすぎになるのか?のさじ加減をつかむのには経験が必要です。

ビルドの作業でいえば、練習で制作したチラシの内容の文言を変更したり、レイアウトはそのままに画像を変えて他のチラシに作り替える作業でしょうか。
文言を変えるときにフォントまで変更して視認性が低下したり、背景色と文字の色のバランスが悪くなったりすると、それはちょっとやりすぎです。
最初のうちは、できるだけ文字と画像を入れ替える程度にとどめましょう。

さもなくば、行きつく先は…

メシマズ

肉じゃがを作るのに醤油が無いからソースにしちゃおう、の図

醤油が無ければソースを使えばいいじゃない。

じゃないんですよ。

ソース味の時点で、それはもはや肉じゃがではない気がしますが、醬油以外の調味料そのまま入れちゃう上に、醬油の分量そのままソースに変えたらどうなります?もしも想像がつかないなら、味変しないほうがいいです。醤油を買ってくるか肉じゃがを諦めるか、別のレシピを検索しましょう。コロッケとかいいんじゃないですかね。ソースも合うし。

デザインでいうと……
見本とあまりにも違うフォントを使っているとか
色をがっつり変えて方向性が変わっているとか
気付いたらレイアウトごと大きく変わっているなんていうことになりそうです。

このように、まずレシピ通り=お手本どおりに作れることがまず第一の才能です。
元データ無いけど同じもの作りたいという仕事も多々ありますし、季節ごとに内容を変更する仕事も実際に存在します。

そして、どの程度の変更なら全体の雰囲気に影響が無いか、ここをいじるとどうなるか?などを見通せるようになると「独力でできる」レベルと考えていいでしょう。
料理もデザインも同じですね。

レトルトや料理の素を使うのは料理なのか問題

子どもの頃に食べていたチャーハン、いま思うと冷凍チャーハンを炒めてタマゴと調味料追加していたやつだったな…と思い出しました。
料理した判定でいいのか迷いどころですけれど
世の中でしばしば論争になる「クッ○ドゥ使ったら料理なのか」問題です。
たとえば麻婆豆腐を作るときにトウバンジャンとかいちいち買いそろえるのか。合わせ調味料を使ってはいけないのか?その他の具材を切ったり炒めたりする過程は料理ではないのか?

なぜかクッ○ドゥ的な料理の素のときだけ論争になるのですけれど

じゃあ、カレーは?

市販のカレールーのイラスト
市販のカレールー

カレー作るとき、スパイスから作る人あまりいないのでは?

カレーを作るときにカレールーを使っても、特に文句は出ないですよね……?
どうして、クッ○ドゥ的なもののときだけ「手抜き」と言われるのでしょうか。不思議ですね。
ただ、たとえばカレー専門店で市販のカレールーを使用していたら、それはさすがに怒られると思います。

カレールー、豚肉、ニンジン、じゃがいも、玉ねぎとカレーライスのイラスト

いきなりなんの話を始めたかとお思いでしょうけれど、これから説明します。

このnoteでもユーザーが多いCanvaなど、今は気軽に簡単にデザインぽいものを作れるサービスがたくさんあります。
秋田もノンデザイナーなので、広報物をぱぱっと作りたいときはCanvaにお世話になっています。
おしゃれなレイアウトのテンプレートが揃っていて、素材やフォントも豊富です。文字と画像を入れ替えるだけでそれっぽいものを作ることができます。素人が趣味で使う程度であれば十分に成立します。
これは市販のカレールーを使用して具材だけアレンジしたり、隠し味を色々入れたり、複数のカレールーをブレンドしたり……することと同じだと思います。
別に手抜きじゃないし、Canva使うにもそれなりにセンスが求められるのです。
先述の「何をどこまでいじっていいのかの見通しを持つ」という部分ですね。
ただ、他人からお金をいただいてCanvaのテンプレートを使って「デザインしました」と言ってしまうのはちょっと厳しいですね。

たとえば、Canvaの商用利用の範囲は以下の通りです

自社のホームページに掲載する
SNS投稿に使用する
マーケティング素材(広告、営業資料など)として使用する
名刺を配布する
取引先に年賀状を送る

Canvaは商用利用可能!Canvaで許可されている商用利用と禁止事項について分かりやすく解説します

「自社の」ホームページに掲載、営業資料、年賀状などに使用するといった想定がされており、他者からの依頼に応えてデザインする用途では無いように見受けられます。
たとえば企業の広報部門でSNS運用や社内報を作らないといけないといった場面であれば「仕事」として使っても支障が無いですよね。
場面によってはCanvaを使用しても仕事をできるけれどプロのデザイナーではないという感じです。

カレーで言うと、市販のカレールーを使用して作ったカレーをカレー専門店では出さないよね?でも、業務用のカレールーあるし、食堂とかでは使ってるよね?というイメージです。

カレールーや料理の素を使った料理、テンプレート等を使用したデザインのメリットは安定していて、誰が作っても平均的においしいというところ。
デメリットは個性を出しづらいところです。

じゃあ、

カレー好きの人がスパイスからカレーを作ったらプロなのか?

答えは「否」です。

複数のスパイスを組み合わせて、少し高級感のあるカレーが出来上がったイメージのイラスト

趣味のカレーって、おいしいけれど味が安定していないイメージがありませんか?(偏見)
一期一会感。
同じカレーには二度と出会えないイメージ。
毎回、めっちゃくちゃおいしいんですけど。次にもっかい作って!って言っても、だいたい出てきません。
メニューが決まっているカレー専門店では、そういうわけにはいかないですよね。
プロになると、どのスパイスをどの分量で使うか、具材はどの部位をどのように切るか、煮込み時間は……など、細かく計算されて、いつ行っても安定した同じ味を提供してくれるはずです。

素人のおいしいスパイスカレーのメリットは個性的で、なんかめちゃくちゃおいしいところ。デメリットはムラがあるところ。
デザインでも同じことが言えそうじゃないですか?

なんとなく行き当たりばったりで作っているうちは、まだ素人です。
なぜそこにその要素を置くのか?サイズは、順番は、色は…と、すべてに根拠があり、聞かれたら全部説明できるところがプロフェッショナルです。
プレゼンのときに「いい感じにしました」というわけにはいかないですからね。
※アーティストなら許される気もします。

というわけで、この場合の「できる」の目指すべき状態像=理想は、根拠を持ってデザインできている。というところになります。
わーお、ハードル高い。

ビルドでは、既存のチラシを模写したり、スタッフのラフをもとにレイアウトしたり、自分で原稿からチラシを作ったり……と、段階を踏みながらデザインのセオリーを学んでいきます。
実際に取り組みながら、ちょっとずつ実感して行ける部分が大半ですので、まずは「相手に委ねつつ」経験値を溜めていきましょう。
結局、目が育つまでには時間と経験が必要なのは変わらないのです。気長にやっていけるのがB型事業所のいいところですね。

いただいたサポートは利用者さんの工賃に!素敵なヘッダーイラストを描いてくださった皆さんに還元しますね。