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絵描きの人も知っておきたい印刷の知識のハナシ(その1)

こんにちは。就労継続支援ビルドの秋田です。

ビルドでは月に1回程度不定期でデザインセミナーを開催しています。

今回は2020/12/26開催の「絵描きの人も知っておきたい印刷の知識」のレポートをご紹介します。

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デザインセミナーと銘打っていますが、ビルドの利用者さんの4割はイラストの作業をしておられます。絵を描くときにもデザインに関する知識は十分に生かせるので、いつも皆さんに聞いていただいていますが、今回はあえて"絵描きの人も"を付けましたところ、いつもは参加されない方も出席され、興味津々のご様子でした。

実はお話したいことが盛りだくさんすぎて、1時間のコマでは2つくらいのテーマしか話せず、すでに第二弾の開催が決定しております。

今回から、代表は事前に資料を作成せずにその場でホワイトボード(正確にはiPadとApple Pencil)を使用した講義スタイルに変わりましたので秋田が板書したメモをもとにレポートします。

* * *

一言で印刷といっても、紙のほかに、Tシャツ、布、アクリル、金属etc...印刷できる媒体は色々ありますが、今回はあくまでも紙にオフセット印刷をする場合のお話です。

オフセット印刷のイメージ

インクの色の数だけハンコを押していくイメージです。

4月のセミナー「色のハナシ」でも説明しましたね。

インクの色=CMYKの4色のハンコ(版)を何回押すか?で、工数が変わるため、時間とお値段が変わります。

この、ハンコを重ねて押していくイメージ。

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今回のお話をする上で非常に重要になっていますので、覚えておいてくださいね。


絵を描くとき、カラーモードを気にしている?

お絵かき系アプリのデフォルトがRGBであることが多いですね。

ビルドの利用者さんでも、おうちにはパソコンやプリンターが無くて紙に印刷したことがほとんど無い方も多いです。アプリで絵を描いて、そのままSNSに共有…ということが大半でグッズ制作・同人誌制作などの経験が無いと、印刷屋さんに依頼する機会もありませんしね。

実際、パソコン(デジタルデバイス)を使用して絵を描く場合はRGBのほうが使える機能が多いこともあり、まずはRGBで描くことがスタンダードだと思います。PhotoshopではRGBじゃないと使えない機能も多いです。

なぜか?

色の話の復習になりますが色の表現方法は2種類あって

CMY(K)

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RGB

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です。

端的に言えばインクの色光の色ですね。


自然界にあるすべての色のうち、RGBで再現できる色数のほうが多く、CMYKで表現できる色数は限られています。

つまり、RGB(ディスプレイの色)からCMYK(印刷)に変換する方が簡単です。

かしこ

なので、RGBで作業をしたほうが表現できる幅が広がります。

ただし、RGBをそのまま出力すると色がくすんでしまうので、印刷物として納品する場合には色を調整する必要があります。


ちなみに!

ビルドで定期的に刊行している同人誌ビルドイラストコレクションでは、vol.2以降、RGBで入稿しても、ある程度色を再現してもらえるビビッドカラープリントを利用しています。

描いた人も使っている色も違うのですが、ちょっとBが混じった黄色の表現で見てみましょう。

vol.1のときに依頼した印刷屋さん(一般的な印刷)のとき

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vol.3で依頼した印刷屋さん(ビビッドカラープリント)のとき

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どうでしょう?

代表から「このイラストに使われている黄色は似た色合いだ」と聞いて

疑り深い私は、ちょっとスポイトで吸ってみましたが

それぞれ

R:252/G:248/B24

R:255/G:249/B:49

でした。

元の色の微妙な違いはありますが、RGB→そのまま印刷をすると色が濁ってしまう感じが伝わるでしょうか。

ビビットカラープリントでは、高彩度…わかりやすく言うと蛍光色のような明るい色の出るインクを使ってRGBを再現してくれているのですね。

質問1.CMYKだけで作ってはいけないの?

デザインを勉強している利用者さんからの質問でした。

ビルドではグラフィックデザイン…ほぼ紙の印刷物のデザインの勉強をメインにしているため、CMYKの作業がメインとなりますので、このような質問が出たのですね。

CMYKとRGB、どのように使い分けたらいいのでしょうか?

答えは、どの媒体で見せるかによる。です。

チラシやパンフレット、ポスターなど印刷のみで使う目的であればCMYKでの制作でも問題ありませんが

逆にバナー広告やサイトのトップページなどパソコンのディスプレイでしか展開しない広告媒体であればRGBで制作します。

また、たとえばゲームやアニメなどメインで表示される媒体がディスプレイであればRGBで制作しますが、CMYKのデータがいらないわけではありません。パッケージやポスターなど印刷物を制作する都合もあるので、イラストレーターの側でCMYKに調整したものも一緒に納品することもあれば、デザイナーの側で調整することもあるという回答でした。

お仕事で絵を描く場合に知っておいてほしいポイントですね。

* * *

トンボはなぜ必要なのか?

次のお題はトンボ(トリムマーク)についてです。

こちらも印刷をする前提じゃなければ縁が無いものですね。

デザインを勉強している皆さんは、広告制作の課題に取り組む際の”儀式"としてトンボ→ガイドの作成をしてから制作に入ります。

今さら聞けない!トンボってなーにー?

トンボ…これです。

センターコーナー

印刷物を制作する際に必ず必要なやーつです。

それぞれ、四隅を固める「コーナートンボ」と天地左右の真ん中を示す「センタートンボ」という名前があり、役割が違います。

この名称については、誰も答えられませんでした!

さて、それぞれの役割は何でしょうか?

コーナートンボ

主な役割がふたつあります。

Inkedトンボ内外_LI

内側の「内トンボ」は印刷の仕上がりサイズを表すもので、二重線が交差した部分にデータの角を合わせて調整します。

裁ち落とし/断ち切りのサイズを決めるためにあります。

では外側の「外トンボ」は?

こちらは裁断したときのズレをカバーするためのものです。

印刷では、大きな紙に印刷して複数の紙を重ねて適切なサイズに裁断します。その際どうしても裁断のズレが生じてしまいます。このとき、もしも紙のサイズギリギリにしか絵柄が無かったら?1~2mmの白い線(紙の色)が出てしまいますよね。本来のサイズより一回り大きく描くことで、裁断が多少ずれても紙の色は出ません。この一回り大きく描いた部分を塗り足しと呼びます。塗り足しの幅は全国共通どこの印刷屋さんに出すときにも3mmと決まっています。

外トンボは、塗り足しを作成するための目安です。

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センタートンボ

センタートンボは天地と左右の中央に置かれています。

センタートンボ

オフセット印刷の仕組みを覚えていますか?1色ずつ重ねてハンコを押していきます。ズレてしまうと大惨事です。

センタートンボは、版を刷るときにズレないようCMYKそれぞれの色を重ねていく際の基準線となります。なので、K100%ではなく、C・M・Yが重なっている黒(レジストレーションカラー)なんですね。

トンボはそれぞれ、印刷をするときの目安として使われることがわかりましたね。

ずっとデータ作成の前のおまじないだと思っていたデザイン勉強中の利用者さんたち。日々の作業では、実はここまで細かいことをお伝えする機会がありません。


質問その2:塗り足しを忘れないコツは?

このセミナーの前日、ビルドではクリスマスカード展示会が行われました。

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イラストコレクションも同様ですが、ビルドでは定期的に制作物を発表する機会を設けています。〆切やレギュレーションがある制作をする練習であると同時に、定期的に印刷物を制作する練習をしています。アナログの方もいらっしゃいますが、デジタルでイラストを描いていると普段は印刷する機会が無い利用者さんも多いので、こういった機会を通して様々な経験をしていただいています。

はじめにトンボをつけたテンプレートをお渡ししているのですが、それでも多発する塗り足しを忘れる問題。逆に、外トンボいっぱいまで絵を描いてしまい、切ったら絵が切れてしまうこともあります。

そこで

どうしたら塗り足しを忘れない、もしくは外トンボを意識した制作ができるだろうか?という質問をしました。

新規作成をする際、ついうっかりプリセットのままOKを押してしまうのですが、ここがミスのもと!

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プラス6mm!3mmの塗り足しを追加した、プラス6mmのサイズでキャンバスを作成してください。

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そしてレイヤーを追加し、100×148の長方形を配置するのです。

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絵を描くのはキャンバス全体。印刷されるのは四角の内側。長方形は塗りではなく線でもかまいません。とにかく、新規作成のタイミングでのこのひと手間さえ間違わなければOK!

塗り足し

参加者の皆さんの反応が一番大きかったのは、この部分でした。

印刷屋さんの入稿ガイドを見ると必ず載っているのですが、自分で入稿しない限り意識しないんですね。

意外と多かった今さら聞けない基礎知識。

まだまだ話し足りないので次回に続きます!お楽しみに~

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いただいたサポートは利用者さんの工賃に!素敵なヘッダーイラストを描いてくださった皆さんに還元しますね。