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天野太郎さんと学ぶ!アートのイロハ②

みなさんこんにちは。
株式会社リクルートホールディングスが運営する新アートセンター BUGのスタッフです。

BUGは9月20日(水)のグランドオープンへ向けて、着々と準備を進めています!こけら落としの展覧会は雨宮庸介さんの個展となります。こうご期待!
BUGの活動は展覧会だけに限らず、アートにかかわる人たちと成長していくこと。そういうわけで、私たちはまだまだ東京オペラシティギャラリーチーフキュレーターの天野太郎さんに教えてもらうことがたくさんありそうです。

前回の記事はこちら!

BUGのミッションについて/アートセンターとギャラリーの違い

BUGは株式会社リクルートホールディングスが運営しています。民間企業が社会貢献活動や企業メセナとしてギャラリーやアートスペースを運営するのは珍しいことではありません。
それぞれの企業が持っている特質がそのギャラリーやアートスペースにも反映されていることが多々あります。
BUGも株式会社リクルートホールディングスが掲げる基本理念「私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。」やビジョン・ミッション・バリューズに基づいた活動軸を持っています。

①    BUG Art Awardの開催
第1回の応募が先日締め切られた制作活動歴10年以下のアーティストを対象としたアートアワードです。フィードバックを重視した他に例を見ないアワードは、新しい価値を生み出すアーティストを発掘・支援します。
②    展覧会の開催
BUGではさまざまなキャリアのアーティストの個展を開催します。記念すべき最初の展覧会は雨宮庸介さんの個展になります。若手アーティストだけではなく、彼女/彼らの指標となるようなアーティストまで幅広く企画していきます。
③    キュレーター等、アートワーカーのキャリア支援
アーティストだけではなく、彼女/彼らと協働するキュレーターやインストーラーのキャリアについてもBUGはおせっかいを焼いていきます。彼女/彼らが活動をしやすくなるためのネットワークをワークショップやイベントを通じて構築していきます。

とは言いつつもアーティストたちが表現をつづけながら豊かに生活してゆくために私たちは何をすればいいんだろう?
BUGスタッフは天野さんに私たちのミッションと活動軸を伝えたのちに、作品を売買することについて基本的なことから聞きました!
 
天野さんの話は、美術作品が売買対象として扱われ始めた19世紀にまで遡ります。それ以前までは発注主がいて、アーティストは注文主からの受注で作品を制作するコミッションワークという形式が主流でした。19世紀以降に美術作品が市場で売買されるようになり、画商という職業が誕生します。
プライマリーというそのギャラリーで初めて扱う取引の方法と、セカンダリーという一度売れたものを再びオークションなどで販売する取引の方法があり、現在、日本では古物商の許可がないとセカンダリーで作品を売買することはできません。美術作品は一度値段を決めると、値段を下げることはできないので慎重な値付けが必要だと言います。

今は新しくたくさんのギャラリーがオープンし、アートマーケットも賑わいを見せます。その一方で、右も左も分からないアーティストが不条理な条件で交渉を持ちかけられたりと、まだまだアーティストの立場は弱いままです。
天野さんはBUGでかかわった作家がもしそのようなことに陥った場合に相談できるような駆け込み寺になってほしいと言います。

アートセンターについて〜日本のアートセンター他事例紹介〜

BUGにはBUGの活動軸はあるけれど、他のアートセンターは何をしているんだろう?
天野さんに私たちのお手本となるようなアートセンターの事例を教えてもらいました。

主にヨーロッパでは、アートセンターの他にクンストハレやピナコテークという同じ機能だけれど、呼び方が異なるものもあります。
コレクションを収集するのではなく、展示する機能のみを持った施設なので、より実験的な表現が可能になるそう。
日本だと①山口情報芸術センター[YCAM]②せんだいメディアテーク③MEGA ART STORAGE KITAKAGAYAの事例を教えてくれました!

①山口情報芸術センター[YCAM]

2003年に開館した山口情報芸術センター[YCAM]は、主にメディア・テクノロジーを用いた表現の探究を軸に活動しています。センター内に研究開発チームをつくっていることが大きな特徴で、アーティストと協働して新しい作品やプロジェクトをつくっていきます。

②せんだいメディアテーク

2001年に開館したせんだいメディアテークは、主催や貸し館事業を通じて、ギャラリーやシアターでのプログラムを開催する他に、情報発信・アーカイブセンターも併設されたアートセンターです。仙台市民図書館と併設しており、特徴的な建築は伊東豊雄さんによるもの。

③MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA

2012年に倉庫跡を活用して、保存が困難だった大型アート作品を収蔵するスペースとしてオープンしました。収蔵されている作品は毎年「オープンストレージ」と称して一般公開もされています。

そういった事例の中で天野さんがBUGに期待するのは、BUGの小さいスペースでもしっかりと発信できる展覧会やアーカイブをつくること。また、周辺地域とのコミットメントも課題で、BUGはたくさんのオフィスビルが林立する東京駅八重洲口にあるので、リクルートだけではない企業などとの協働が見込めそうですね!

展覧会の企画について 

BUGのスタッフはほとんどがクリエイションギャラリーG8やガーディアン・ガーデンのスタッフなので、展覧会を作ったことはあります。ただ、面白い展覧会をどうやって企画するのかはまだまだ研究中です。天野さんに面白い展覧会を企画する極意を教えてもらいました!

天野さんはかつて何を調査するかも決めていないまま、欧米に出張へ行っていたと言います。実際に、現地に行って物事を体感することで、自分の関心が見えてきます。それを『ブラタモリ』にたとえてお話しされる一面も(笑)
その場所を身体的に感じる経験が展覧会の企画立案に結びつくと言います。

また、自らネットワークをつくりにいくのも大切です。例えば、天野さんが企画として関わっていた『六本木クロッシング2022展:往来オーライ!』は4人でキュレーションを行いました。大きく「移動」とテーマを定めて、ディスカッションを重ねていき、移民やコロナ禍における移動の困難さなど昨今の私たちを取り巻くさまざまな種類の「移動」について考えを深めてつくっていった展覧会です。

天野さんは自分の直感を高めていくために、アートとは異なる分野の本を読んだりすることも重要だと私たちに教えてくれました。

BUGはグランドオープン以降も、続々と新しい企画やプロジェクトを構想中です。どうぞご期待ください!