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新日本海フェリー 「ゆうかり」 乗船記

6月末から7月頭にかけて渡道する予定が生えた。

6月末まで新日本海フェリーはA期間。となれば貸切料金不要の個室でゆったり北の大地まで移動する選択肢が浮上する。
関東から利用しやすい新日本海フェリーの航路は新潟〜小樽の直行便と新潟〜秋田〜苫小牧東の寄港便があるが、直行便は以前に乗ったことがあるのと、やはり少しでも長く乗っていたいので今回は寄港便を選択。



と、いうことで平日の夕方、帰宅ラッシュが始まった東京の街を新幹線で抜け出して新潟へ。


車販がまわってきたので、定番のコーヒーと上越新幹線限定のジェラートを購入。
JR東日本の車販コーヒーは250円と良心的なので助かる。


あっという間に終点に到着。
久しぶりの新潟駅は元の姿が想像もつかないほど変貌を遂げていた。


その一方で以前から変わらぬ雰囲気のバス乗り場に安心感を覚える。
何台ものバスが頭を揃えて並ぶ光景はさながら「うなぎの寝床」。
家路を急ぐ人々に紛れてバスに乗り込み、港へ。


バスを降りて歩くこと約10分、今宵の宿が見えてきた。


新日本海フェリー「ゆうかり」。
姉妹船「らいらっく」と並んで同社では最古参の船であり、条件の厳しい日本海を20年以上走り抜いてきた風格を感じる。


少し早めにターミナルに着いてしまったので、発券を済ませた後は建物の外で風にあたりながら21:45の乗船開始を待つ。

そして時間通りに乗船開始。徒歩乗船は10人少々といったところか。

船内に入ると、エントランスで三角形のオブジェがお出迎え。


個室利用者はまず案内所で部屋の鍵を受け取る。
同時に苫小牧東港到着後のシャトルバス利用の有無を聞かれ、利用する場合は名簿に記入する。


今回の部屋はステートB和室。
最もリーズナブルに1人利用が可能なアウトサイド個室である。
アウトサイドとはいえ窓の外は通路であり、部屋の位置によっては救命艇などが置いてあるせいで眺望に難が出る場合もあるが。

トイレ、シャワー、冷蔵庫の無いシンプルな個室。洗面台とテレビは備え付けられており空調も個別で操作可能。
定員は3名で、アメニティやフェイスタオルはしっかり3人分が用意される。

何より、最近ありがちなカーペットではなくしっかり畳敷きの和室というのが良い。


部屋を物色しているうちに出港の時間が近づいていたので外部デッキへ。


22:30、定刻に岸壁を離れる。
長距離フェリーでは恒例とも言える地上係員のお手振りもなく、静かに港を出て行く。
この淡白さ、航路の日常の中に身を置いている感じになれる。


出港を見届けて部屋に戻り、事前に買って持ち込んだ駅弁をノンアルビールで流し込む。


大浴場が23:30で閉まってしまうので、小腹を満たし終えた23時過ぎに向かう。
入れ替わりに数人が出ていき、終始独泉となった。

「ゆうかり」とその姉妹船「らいらっく」はSHKグループの売りの一つである露天風呂を備えていないが、浴室はそれなりに広くゆとりがあり洗い場の数も十分。
ただ脱衣所は少し手狭な印象だった。まあ寄港便の需要を考えればこれでいいのだろう。

湯の温度は少し高めで、42〜43℃程度だろうか。
今まで乗ったフェリーの大浴場の中では指折りの熱い湯だった。それでも一旦浸かってしまえば快適。


風呂を出て、誰もいないプロムナードでしばし休憩。

扉が閉められたゲームコーナーから微かに漏れる光と音で、なんとも言えないノスタルジックな気分になる。


無心で過ごしているといつの間にか日付を跨いでいた。
静かなパブリックスペースも好きだがさすがに眠いので部屋に戻って就寝。




翌朝、秋田港入港時の振動で目が覚めた。
時刻は朝5時。曇っていても6月末はこの時間で十分に明るいのだが、まだ眠いので障子を閉めて二度寝する。


出港が近づいた頃にまた目が覚めたのでデッキへ。
秋田港に留置されていた24系客車、話は耳にしていたが本当に綺麗さっぱり無くなっていた。


6:15、長声一発を高らかに鳴らして定刻で出港。
動き出したタイミングでは船内の通路を歩いていたのだが、かなり激しい振動が床から伝わってきた。これほどワイルドな大型船は最近では珍しい。


港外に出てからは航海速力の限界に近い22ノットで日本海を突き進む。


出港しておおよそ30分が経った頃、船内放送で姉妹船「らいらっく」との反航の案内があった。

再びデッキに出ると、左前方に「らいらっく」の船影が。

あっという間に接近し、反航。
先に「ゆうかり」、後から「らいらっく」が汽笛を鳴らす。

あちらは苫小牧東港を前日の19:30に出て秋田には7:30過ぎに到着する。
道央エリアと東北を結ぶ夜行の移動手段として、かつての急行「はまなす」のような使い方もできそうだ。


無事に反航を見届け、レストランで朝食。
旅先ではビタミンCが不足しがちなのでフルーツで補給する。


レストランはこんな感じ。
秋田から乗客が若干増えたような気がしたが、それでも混雑とは無縁。


食後は腹ごなしに船内を探検する。
各フロアで床や壁の色調が異なることに気づく。


大型フェリーの定番、吹き抜けと階段。


最上階にあるコンファレンスルーム。
時間になると映画が上映されていたような気がする。


フォワードサロン「ブリーズ」。
かなり広々とした空間で、自室を除けばここにいる時間が一番長かった。


歴史を感じるゲームコーナー。
ゲームの筐体には詳しくないが、運航開始当初の頃からのものもあるのだろうか。


実は朝食を食べ終わった頃から大粒の雨が降り出していた。
することもないので、自室に戻って惰眠を貪ることに。


昼前まで爆睡し、再び起床。
いつの間にか雨も上がり、船は津軽海峡に差し掛かっていた。


コンテナ船「CAPE ALTIUS」と、右側はるか遠くに霞むのは津軽海峡フェリーの「ブルールミナス」。


函館山を横に見つつ、昼食営業中のレストランへ。

フェリーで食べるカレーは、陸上で食べるそれの数倍は美味い。


昼食後、入浴して昼寝という最高に贅沢で自堕落な過ごし方をしていると、ついに北の大地が見えてきた。


定刻で苫小牧東港に接岸。
荒野が広がる中に忽然と港が現れる感じが、上陸時のワクワク感をより増幅させる。


上陸後は接続するバスで南千歳駅へ向かった。


北海道、東京からであれば飛行機で1時間半で行けるのも魅力だが、たまにはゆっくり船旅で距離の遠さを再確認するのもまた乙なものだと思う。

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