ホワイトニングした時の話
社会人2年目の冬のボーナス、いつもより多く出た。特に欲しいものもないし、ちょうど歯の黄ばみと歯垢も目立ってきた。
私は一時期歯磨きにハマっていて歯を磨きすぎていた。
歯磨きをし過ぎると知覚過敏になって食べ物を食べる時もいちいちしみるし、ガリガリ君も食えないし。
ほんんとに私生活ではいいことなかったけど歯を白く保ちたいという一心でただ磨いていた。
しかし、とうとう耐えられなくなってネットで調べると歯の磨き過ぎが1番の原因だったことを知ってかなりショックだった。
歯磨き粉なんて300円程度で売っているものをわざわざ1500円(当時学生の私にはかなり高値だった)も出して買って歯磨きして知覚過敏になる。
意味がわからなくなった。
大して白くなってる実感もなくなってきてた頃、私は歯磨きの頻度を減らした。
朝はお茶を飲む習慣があったし、お茶さえ飲んでいれば口の中はスッキリする感じもしていて、朝は別に磨かなくてもいいやと思うようになった。
それでも、夜はさすがに歯に食べたものやジュースのぬめりみたいなものが付いて気持ち悪くなるから磨いていた。
しばらくもしない頃、知覚過敏はなくなった。
ほんとに歯を磨かないだけで治るんだと思った。
そして私はそれからあまり歯を磨かなくなった。
もちろん当時付き合ってた彼女からは嫌われるし、デートの度に今日歯磨いた?って聞かれるしもう散々だった。
そんな感じで過ごしていたら見事に歯の黄ばみも目立つし茶色い歯垢もつくしでボーナスでホワイトニングを始めようと思った。
もちろん歯医者女子にも期待しながら。
デンタルクリニックというところに始めてきた私はかなり驚いた。
普通の歯医者は小学生の頃に行っていたことがあったが全く違う印象だった。
クリニックの中はとても綺麗で、まるで小洒落たカフェのようだった。
もちろん歯科衛生士の方はみんなマスクをしているので顔はわからないが、それもまたいいと思った。
予約制の店だったのですぐに案内され個室みたいなところに入った。
ホワイトニングには何種類かのコースがあり、効果をすぐに実感したいのと考えるのがめんどくさかったのでおすすめコースにした。
おすすめコースはクリニックで1回のホワイトニングと自宅でのホームホワイトニング約10日分だった。
価格は40,000円で想像していたよりは安いなと思った。
まずは歯垢を取り除いてからホワイトニングが始まったが、とりあえずただ口を開けているだけだった。
治療後、少々疎らな白さではあるがだいぶ白くなったのがわかった。
これからホームホワイトニングをすることで綺麗になっていくという。
ホームホワイトニングは最初に象ったマウスピースと注射液のようなものを渡された。
その日は知覚過敏のような状態が1日続いたが、そこまで痛くもなく、しみるということもなかった。
昼からの仕事だったので、クリニックを出たあと仕事をして、夕方頃に友人に飲みに行こうと連絡したが返事はなかった。
夜になり、ファミチキしか食べていなかった私は腹が減り、1人で晩飯を済ませた。
その後、誰かと話したくなり、よく行くバーに行くと店は開いていたが誰もいなかったので店を出た。
それでも誰かと話したい欲が止まらなくなっていたので、とりあえず列をなしていたクラブに入ることにした。
クラブには何度か来たことがあるが、1人で入るのはこの時が初めてだった。
私は少々恥ずかしさもあったため、中で友人と待ち合わせをしている設定、あるいは友人は後から来るので先に中に入っていようという設定を頭の中で考えながら列に並んでいた。
当然誰にも聞かれることもないしわざわざ自分からも言わないので意味のない思考だ。
しばらくして入り口の身分証チェックと手荷物検査が行われ、さっき買ったばかりの水は捨てられた。
その後、カバンを見せてと言われ見せると、これはなんだと聞かれた。
さっきデンタルクリニックでもらったホームホワイトニングの液だ。
液の容器は注射器のようになっていて、セキュリティ(店の入口でチェックする人)にはそれが薬かなんかだと思ったのだろう。
私はホワイトニングの液だと話しても通じなそうなので諦めた。(マウスピースを見せればそれなりに信じてもらえたかもしれないが、少し恥ずかしかった)
私はクラブから逃げるように出た。
その日は結局誰とも話さずして家に帰り、ストレスのあまり、家にあった酒を飲みまくったところまでは覚えている。
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