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バウムクーヘン大学院【2020年総決算】

25歳にしてようやく、小さい頃から愛読していた『週刊少年ジャンプ』から、離れてしまった。かつては毎週必ず月曜の朝イチで購入し、全ての作品を隅々まで読んでいた。今では、人気の数作品だけを、SNSでバズった回だけコンビニで立ち読みする程度になってしまった。

けれども僕が『ジャンプ』を愛していることに変わりはない。

そんな『ジャンプ』擁する集英社に2005年で入社し、2018年で異動するまで13年間もの間、漫画編集者としてのキャリアを積んだ斎藤優氏が、自身のブログで漫画家を目指す若者に向けて漫画の作り方のノウハウを公開している。

その中のひとつ、『第8回 ストーリー構成はこの3つだけ覚えよう』という記事の中で、賞に応募する読み切り漫画を描くにあたっては、『1ページ目と最後のページで変化しているモノ・コトを決める』ことが重要だと書かれている。​

…最初と最後で何も変わらない漫画を面白く読ませられる天才もいます。が、まずは「変化」を作ることを意識しましょう。「敵を倒す」「恋が成就する」「困っていた人が救われる」などはわかりやすくてよく使われますね。「この漫画は、最初と最後でココが変わる」とまず1つ以上決めておきましょう。そうすると変化前・変化後のコト・モノを読者に見せるためのページが必要になります。 引用元『元週刊少年ジャンプ編集者が漫画家から学んだことを書いていく』

して、僕の2020年は、最初の1日と最後の1日で何が変わったであろうか。

とりあえず僕は、年初早々に職と恋人を失った。クソみたいな出だしである。

ところが、毎日の充実度や心の安定感と言った部分に関しては、年初より今の方が圧倒的に良い状態であると自信を持って言える。

この要因として、やはり飛び込んでみた大学院(一橋大学大学院経営管理研究科:一橋MBA)での学びの日々が、かなり楽しいからということが挙げられる。

じゃあ僕はこの1年間、大学院で何を学んだのか?

それは、バウムクーヘンに喩えることができるんじゃないかなと思う。バウムクーヘンは内側から外側に向かって何重にも層を成している。それと同じで、僕は表層的には経営学の知見やスキルを学んでいたのだけれど、本質的には自分の人生を自省していた。下の図のように。

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一番外側に位置するのは、直接的に経営学に関する学びだ。経営戦略、組織行動、組織構造、ファイナンス、管理会計、マーケティングといったビジネスに関わる分野を体系的に学んだ。『講義』『ケーススタディ』『グループワーク』『ディスカッション』『レポート』を通じてこれらを学んだ。MBAと聞いてすぐ思い浮かぶような学びの内容である。どれも負荷が重かった。

ただ、そういった具体的なソフトスキルだけでなく、もう少し抽象的なハードスキルも訓練されたように思う。それが二番目の層に位置する。たとえば、同じ内容を書いたレポートでも、構成が明快で、文章が読みやすい方が高い評価を得られるように感じる。というか、日本語そのものへの指摘をめちゃくちゃ受けた。いい大人が『伝わりやすい文章の書き方』について指導されるなんてこと、一般社会では滅多にないだろう。母国語だからと馬鹿にしてはいけない。多くの大人が、わかりやすい文章を書けていないと感じる。

140字のSNSがすぐに炎上するような世の中だ。テレワークの増加に伴い業務における口頭でのコミュニケーションが減っている世の中だ。文章力というのが重要視される時代になってきているのではないかと僕は思う。

とまあここまで『文章力』を例に、具体的な経営学の知見だけでなくもう少し抽象的な能力についても学んだという話をした。こうした能力はジジイババアになっても役立つであろうから有難い。

ただ、更にもう一歩踏み込んで、この1年間考えさせられたことがある。

それが上図のど真ん中に位置する『人生の自省』だ。自分で書いてて恥ずかしいわ。

心に余裕が出来たことで、自分の今までの生き方の足らなさや、他人の欠点と向き合うことができるようになった。たとえば、不愉快な他人の言動を目の当たりにした時に、ただ気分を悪くするのではなく、『かつての自分もこうだったかもしれない』とか『自分もこの人みたいな言動をしてしまっているかもしれない』というのを逐一思うようになった。遅いね。本当に25年間何やってきたんだ僕は。

そして、自分の目標を叶えるために必要な道を自分の意思で選び取っていくことの大切さを学んだ。リスクを取ってやりたいことをやってみたら意外と何とかなるということを学んだ。だけど、本当に僕と同じような道を選ぼうとする後進に「何とかなるよ」と胸張って言ってあげるためには、来年きちんと転職先を見つけなければならない。いくら大学院が充実していても、その後に続く道が無ければ何とかなったとは言い難い

大学院にはさまざまなバックグラウンドを持った人がいる。学部から上がってきた子、他大学から入ってきた子、僕のように会社を辞めて来ている人、企業派遣の方、留学生。しかし、僕の代はどうやら会社を辞めて来ている人が例年より極端に少ない。その代わり企業派遣の方が多い。民間企業と官公庁から、30歳前後の社会人が多く派遣されてきている。そんな社会人の先輩方と一緒に学べるのは恵まれてるし、仲良くしていただいているのも本当に有難い。新卒の子も、僕を老害扱いするなんてことはなく、良い意味でめちゃくちゃ距離が近い。

だけど、企業派遣の方や新卒の子といくら仲良くしていても、転職先への不安だけは分かち合えない。たまに、本当にたまにだけど、大学院の同期と遊んでいると、「この中で一番将来不安定なのは僕なんだよな」と心に影が射す。

でもそんな灰色に滲む予感も、たまにこうして文章にしてネットの荒波の片隅に投げつけながら、来年も楽しく生きていく。

今年は『3密』という言葉が流行った。

それになぞらえて、僕の2021年の目標は、「転職先」「修士号」「彼女」の3つを得る、『3得』としてこのnoteを締め括りたい。

ぶち/みずいろ総合研究所


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