見出し画像

救われた日

ぶちです。夜なのでイタい自分語りを恥ずかしげもなく投げることにする。

みんなは何かに・誰かに救われたことはあるだろうか。

音楽に救われた。

友達に救われた。

本に救われた。

家族に救われた。

色々あると思う。もちろん僕自身も音楽や友達にいろいろ救われてきた。


でも、今までのどんな出来事よりも、さり気なく、それでいて全てが救われたような出来事が、今年の正月にあった。

何で今更正月の出来事を、と思うかもしれないが、さっきウォークマンでぼけっと音楽を聴いていたらsupercellの『君の知らない物語』という曲が流れてきたからだ。

この曲はJ-POPとしてはほどほどに有名で、アニソンとしてはかなり有名な方である。『化物語』という大人気アニメの主題歌だったからだ。同時に、高校生の軽音部とかが文化祭とかでよく演奏する曲のひとつでもある。

そう。

僕も高校生のころ軽音部でこの曲のドラムを叩いた。

所属していた軽音部では、バンドは固定メンバーではなく曲ごとに違うメンバー構成で演奏するルールがあった。だから曲ごとに言い出しっぺがメンバーを勧誘したりする。

『君の知らない物語』をやろうと言い出したのは僕で、そこには下心があった。当時好きだった同期のギターの女の子と一緒に演奏したかったという今思えばピュアの塊みたいな理由だった。この子をYさんとする。

実際勧誘はうまくいき、僕とYさんを含めた5~6名で『君の知らない物語』バンドを組んだ。


して、その後僕は無事Yさんへの告白を成功させ、最終的には高2の5月から約1年半付き合うことになる。


初めての彼女というわけではなかったが、1年以上続いた恋愛はここが初だったので、ちゃんとした恋愛はここで初めて経験した。だけど、いや、だからと言うべきか、思春期特有の未熟さや多感さゆえに、100%自分の非によってその恋愛は幕を閉じることになった。その子の価値観を否定するようなことをたくさん言ってしまったし、受験勉強より恋愛を優先しろ的なクズ発言も乱発してしまった。んで振られた。何より別れた後のムーブも完全にオワってた。あまりに当時の自分が残念すぎてここでは具体的には言及しないが笑


だから、ある種の罪悪感・虚無感・憎悪・後悔といったネガティブな感情を心のどこかでひきずって生きていた。憎悪と書いたのは、自分が悪いのに当時は僕がYさんを逆恨みしていたからだ。


で、もちろん、その先の大学生や社会人生活の中で、それよりも悲しいことやつらいことをたくさん経験した。恋愛だけで言ってもこれ以上の失恋もした。

ただ、それにもかかわらず高校時代の忌まわしい感情が消えることはなかった。記憶が薄れていくのを埋め合わせるように、感情だけが濃くなっていった。最後に会った時にYさんにされた『二度と会いたくない』『人として軽蔑する』『呆れた』といった感情が複雑に混ざった表情がへばりついて離れない。


それから5年。


今年の正月、高校の同窓会があった。


Yさんが来てるかどうかちょっと気にしたりもしていたけど、基本的には仲が良かった人と久しぶりに会えるのを楽しみにワクワクして足を運んだ。

実際、おおむね同窓会は楽しく、数年ぶりの高校同期とお喋りを楽しんだ。


その最中、Yさんの姿が目に入った。心臓が跳ねた気がした。もちろんトキメキでとかではない。悪夢を見た翌朝のような冷や汗をかいた。

そしてそれとほぼ同じタイミングで仲の良い女友達が、

Yちゃん来てるよ。ちょっとあんたと話したがってるけどYちゃん『ぶちくん私と話したくないよねきっと』的なこと言ってたよ

と声をかけてきた。僕は困惑し、

「いや、別にそこまでじゃないけど・・・」

というよくわからない返事をした。


結局同窓会が終わるまで、僕はYさんと話すことはなかった。

二次会でも、Yさんと同じグループで飲みに行ったにもかかわらず会話することはなかった。


けれど、最後に吉祥寺駅の高架下で二次会メンバーで解散するときに、本当にごく自然に、僕とYさんは目を合わせて笑顔で「じゃあね」「ばいばい」って挨拶したのだ。


その5秒にも満たないコミュニケーションが、僕を救った。


かれこれ5年もずるずる引きずってきたYさんに対する罪悪感や後悔といった感情が、きれいさっぱり拭われた。ただ一言交わしただけなのに、ただ一言交わしてくれたという事実が僕を許してくれた気がした。

さらに驚いたのが、「高校時代の元カノとの苦い思い出」単体ではなく、全く関係ない「大学受験の失敗」とか「仕事でぶっ倒れたこと」とか「(別の)元カノとの破局」といったそういった別のつらい記憶も拭い去ってくれたのだ。


大袈裟な言い方になるかもしれないけど、あの日に僕は、四半世紀ぽっちの自分の歴史におけるすべての贖罪を済ませた気がしている。


おわり





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?