【推しの子】「サインはB」の歌詞はアイドルソング定番の構図を上手に裏切っててすごい
アニメ放送終了から2ヶ月が経っても【推しの子】熱が冷めないので、今更ながら挿入歌「サインはB」について語ってみるなどします。
※以下、アニメ第1期最終話までのネタバレを含みます。
「サインはB」は物語のキーとなるアイドルユニット「B小町」の楽曲(描写的におそらく代表曲のひとつ)で、星野アイ在籍時代からルビーたちの新生B小町まで歌い継がれています。
原曲にあたる「アイ Solo Ver.」は2000年代初頭のアイドルグループ風の雰囲気で作られている一方、ルビーたちがライブで披露した「New Arrange Ver.」 はより現代的なアレンジがなされており、いずれも非常に中毒性の高い楽曲に仕上がっています。
さて、「サインはB」の歌詞の中で私が個人的にとても好きな箇所が1つあります。1番のサビの初めにあたる以下の部分です。
何が良いのかというと、この部分単体で想起するイメージと、直後のフレーズを繋げた時に判明する意味とのギャップです。
以下で具体的に掘り下げていきましょう。
まず、この「ヒトが居ようが〜」から始まる2行だけを切り取ると、「成長途上のアイドルが自分自身を鼓舞している言葉」とも解釈できるようになっていますね。「お客さんが全然来てくれない。小さな箱でしかライブさせてもらえない。だけど精一杯頑張るんだ」といった感じで。
実際、こうした「自分自身を鼓舞する」モノローグ的歌詞は二次元・三次元問わず多くのアイドルソングで見られます。
いくつか近い例を挙げてみましょう。
というように、「困難の中でもがくアイドルの自分語り」というスタイルの歌詞は、アイドルソングでは頻出の構図です(なお、この構図には、「必死に頑張っている◯◯ちゃんを応援したい」というファンの庇護欲を掻き立てる効果があります)
そんな中、天才・星野アイを擁するB小町はここでどう舵を切ったかというと……
つまり、「まだまだ無名だけど頑張ります」という健気な女の子の決意表明と見せかけて、実際には「こんなに大きなハコを満席にしちゃう売れっ子のわたしだけど、ちゃんとあなたの気持ちも届いているよ」という愛のメッセージであり、頂点に立つアイドルから全てのファンへ平等に送られるアガペーなのです。不世出の天才である星野アイがいたからこそ書かれた歌詞であることが明確に伝わってきます。
こう考えると、「新生」において一番この歌が似合っているのは、アイの才能を受け継いだルビーだなと感じます。まあ、私はいつ何時でも有馬かな推しですが。
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