1975年の迷子
あの人の肩の景色を私は知らない
掌の座り心地も
足元に漂う体温や匂いも
許される場所を探して歩いてきたけど
今いる場所も分からなくなった
はて、
どこへ行けばいいのか
教えてくれるものはいない
分かってるよ
畑の畦を
白いブーツで一人歩いてた頃から
父がいなくなった
祖母もいなくなった
一番の理解者である祖父は
生まれる前にいなくなった
鏡の中の人たちはまだいるけど
そ知らぬ顔で時々こちらを見る
視線を逸らし不意に振り返ると
笑ってた
口元を動かしながら
目配せしながら
1975年と同じ
掛けた油の臭い漂う無機質な教室
私は慄き
凍え
徐々に小さくなり
さらに小さくなり
骨と皮だけとなり
やがて消えた
大丈夫
またすぐに慣れるから
でも、心残りだったのは
皆の記憶に残っていること
はて、
どうすればいいのか
あなたが決めてもらえますか
こうやって蒼穹を見上げるのも
いい加減
厭き厭きなのです
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