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陳情令(魔道祖師)【歌詞考察してみた】意難平/江厭離

こんにちは、不香花(ふこうか)です♪
まだまだ寒い日が続きますね。十年に一度の寒波とやらが先日猛威を振るいましたが、皆さん大丈夫でしたか。私は何年かぶりに電気毛布?を稼働させて何とか凌ぎました。とはいえ、一度使うと手放せなくなるので甘え過ぎないようにしたいものです。


そしてさてさて、大変お待たせしました。前回訳した江厭離の「意難平」について、曲中で想像される景色や心情の考察していきたいと思います。

ちなみに和訳の記事がこちらです!
原文+ピンイン付きで載せているので、よければご覧ください。

ということで、さっそく歌詞を考察していきましょう。




Aメロ

風が記憶を呼ぶ 蓮塢のほとり
青い湖に懐かしい影 少年の姿は変わらず
時は移ろい夢は短く きらめく水面の幻
願いを筆に乗せる 雲夢で過ごしたあの人へ


風臨軒で書を嗜んでいる江厭離が、すぐさま目に浮かびました。更に「風臨」を訳すと「風が訪れる」という意味だそうです。益々あの場所が情景を思い描くのに相応しい場所なのではないでしょうか。そして時期としては射日の征戦以降、魏無羨が少し距離を置いていた頃ではないかと考えます。

征戦以後、江澄が宗主となり蓮花塢は変わりました。師姉は、魏無羨が蓮花塢にいない事に悪態を吐く江澄に対し「阿羨も慣れないのね」と言って宥めています。


様々な事を乗り越え、大人にならなければいけない自分達。しかし風臨軒から見える幻は、無邪気なあの頃のまま。師姉がいつも何を書いていたのかはわかりませんが、それらを認めながら“雲夢で過ごしたあの人”──父や母に、三人で江家を再興出来るよう見守っていて、と祈っていたのかも知れません。


思い返せば物語の序盤で、魏無羨と江澄が戻ったという知らせを江厭離が聞いた時にもあの場所で書を認めていました。そして恐らく物語のもっと以前、魏無羨が荷風酒を思い付いた時にも。あの場所は江厭離のお気に入りの場所だったのでしょうか。

だとしたら師姉が大好きだった魏無羨も、よくそこで共に過ごしていたのかも知れません。水に囲まれた場所なので、魏無羨や江澄が近くで泳ぐ事もあったのでしょう。大きく手を振って「師姉!」と水面から屈託のない笑みを向ける魏無羨の姿だって、容易に想像出来てしまいます。




サビ

揺蕩う心 蒼天に微笑み尋ねましょう
忘れられない もう過去になったあの日々を
袂を分かつことなく 憂いも怨みもない
今も聞こえるでしょう ねぇ阿羨

ここでは態と空を仰ぎ笑みを作ったのかなと考えています。「上を向いて歩こう」のあの感じではないでしょうか。過去が忘れられない…更には阿羨は蓮花塢に居たくないのかも知れない…と俯きたくなるけれど、青空を見上げてなんとか笑おうといった雰囲気です。人を恨む事もせず、慈しみの心に満ちた江厭離らしいですね。

そして「帰る場所はいつもここで、何があってもずっと一緒にいるのよ」と優しく阿羨を呼ぶ姿が浮かびます。




Aメロ2

醒めた夢 秋夜はいつのまにか深く
蛍火は揺らめき 月が満ちては欠ける
かつて共に笑い語らった それぞれが別の道へ
美しいものほど儚く あの人にも今は会えない

どの表現にも時間の経過を感じます。そして蛍火には薛洋の「荒城渡」の影響か、希望や命の灯火を象徴しているイメージを抱いてしまいます。


温氏を連れ出した窮奇道での事件、そこで散った命。三人で江家を再興しようとした矢先、一人で去ってしまった魏無羨。更に時を経ると彼を息子のお祝いに招き、再会を楽しみに待っていましたが、あと一歩というところで残念ながら叶いませんでした。その上、最愛の夫の命までもが失われることに…。

どれも揺らめく蛍火のように、儚く呆気ないもの。「あの人にも今は会えない」という言葉は魏無羨と、夫である金子軒の二人を指しているのではないでしょうか。
これらを考えると、金凌を胸に抱え金子軒の棺の前で放心状態になっていた江厭離が思い浮かびます。




サビ2

揺蕩う心 記憶は眩しいだけじゃない
どうすれば戻れるの 紫の衣が彩ったあの日々に
恨みでも悔いでもなく 常世に変わらず訪れる
言葉の代わり 滲む涙

幸せな瞬間は過去に溢れているけれど、思い出すのも嫌になるほどの辛い経験もありました。それでもやっぱり蓮花塢で穏やかに暮らしていた日々が恋しい…と、再び過去に思いを馳せています。


ここで一番と二番で異なる点があります。一番では随所に“青い湖、きらめく水面、蒼天”など明るいイメージを盛り込まれているのに対して、二番では“秋の夜、蛍火、月”など夜のイメージを用いられている所。この対比は江厭離の心情をも表しているのではないでしょうか。
あんなにも鮮やかだったはずが、大切な者を失い暗く色を失ってしまった彼女の心。だからこそ蓮花塢で暮らしていた頃を象徴する「紫の衣」が、より印象的に色を演出しています。


恨み言も後悔の言葉も口にしなかった江厭離。江家の三人が温氏に追われていた頃、自分のせいかもしれない…と魏無羨が口にした時も、阿羨を責めて事実が変わるの?と涙を流して自虐的になった彼に前を向かせようとします。

どんな状況でも、例え失意のどん底でも、悲しみや怒りは涙に変え大切な人への慈しみを言葉に変える。江氏が惨殺された時、不夜天へ阿羨を探しに向かった時など幾度と流された彼女の涙を思い出すと同時に、江氏らしい柔和な芯の強さを一番感じる存在かもしれません。




サビ(繰り返し)

揺蕩う心 蒼天に微笑み尋ねましょう
忘れられない 遥か遠く過ぎ去った日々を
袂を分かつことなく 憂いも怨みもない
今も聞こえるでしょう ねぇ阿羨
雲夢の水天に

最後に一番の歌詞が繰り返され、雲夢の豊かな自然が思い出されます。金氏に嫁いだ江厭離ですがやはりこの景色が一番似合いますよね。そして最後を締め括るのは「雲夢の水天に」これは彼女の魂が雲夢へ帰った事を示唆しているのでしょうか。

いつか魏無羨と江澄が肩を並べ昔のような二人の姿があれば、その時には江厭離も二人の側で微笑しているかもしれませんね。



まとめ 〜愛情の人〜

誰より人に優しく、穏やかな人。そのためか苛烈な母とは少し折り合いが悪い面も描かれていました。しかしこの愛情深さは、母譲りなのかもしれませんね。母の不器用さを受け継いだのが江澄、気高さと愛情深さ、そして父の気質を一番受け継いだのが彼女ではないでしょうか。もっと江家の人達の幸せな姿を見たかった…。

最後の瞬間まで弟を想った彼女ほど優しい人は滅多にいません。姉として、人として立派過ぎます。魏無羨だけでなく江澄にとっても、大きな存在だったでしょう。大切に思うが故に作中は金凌に厳しく指導している姿が目立った江澄でしたが、一連の騒動が落ち着いた頃、金凌の母がいかに優しく凛々しい人だったかを伝えてあげて欲しいですね。
そして金凌も不器用な子ですが、母親の長所を全く受け継いでない…という魏無羨の言葉を払拭してしまいましょう!(笑)


それにしても陳情令に登場する女性陣は、以前の記事で触れた温情もみんな心の強い素敵な方ばかりです。恐らく触れる機会はそう多くないのでここで挟みますが、金氏の綿綿も権力に屈さずに正しいと思う事を通せる素敵な女性だと思います。


さて、では今日はこのくらいで。
ここまでありがとうございました!
またお会いしましょうね。

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