備忘録 22-11-05
己を枉(ま)ぐる者にしていまだ能(よ)く人を直くする者はあらず
――枉己者未有能直人者
『孟子』
「己を枉ぐる」とは、自分の原則を曲げて相手に迎合すること、そういう人間が指導的立場に立ったのでは相手を正しい方向に導くことができない、というのである。
孟子という人は、仁義に立脚する王道政治を主張し、なんとかそれを実現しようと、各国の王に働きかけてまわった。だが、各国とも現実の利益追求に余念がなく、孟子の理想は容易に聞き入れられない。それを見た弟子の一人が、もう少し融通を利きせて相手と妥協したほうがよいのではないかと言ったところ、孟子は、この言葉をひいて、逆に、弟子をたしなめたという。
たしかに孟子の語るように、指導的立場にある者には、自分が正しいと信じた原則はあくまでも堅持するという毅然とした姿勢があるべきだ。とくに、教育の場にある者にはこれが望まれる。だが、現実の場においては、これと同時に、柔軟な融通性を併せもったほうがよいかもしれない。
以上、「中国古典一日一言」(守屋洋)より
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