BTSジミンくんの、直線と扁桃腺に特化した話。
BTSのメンバー、ジミン。本名、パク・ジミン。
BTSを見始めたパクチーが最初、誰よりも目が離せなかったジミン(以下ジミンちゃんとします)。
パクチー史に「BTS」が始まったのは、そもそもK-POPアイドルの振り付けのパワフルさと豊かさに免疫がなかったところに、とりわけ際立って表現力に満ちた「ある男」のダンスに魂が持って行かれたからです。彼のダンス見たさに始まったと言ってもいい、もちろん「ある男」とは、ええ、ジミンちゃんのことです。
なんでこんなに?うまいの?
そもそもジミンちゃんがやっていた「舞踊」とは
まずはジミンちゃんのダンスの素地、釜山芸術高等学校舞踊科に入学し、プロのダンサーを目指そうとしたそのジャンルは、どんなものだったのでしょうか。
ジミンちゃんがもともとやっていたダンスについて、パクチーの個人的理解を語らせていただくと、あれは「モダンバレエ」ということで大丈夫だと思います。「モダンダンス」「コンテンポラリーダンス」にも含めることはできると思いますが、彼の学生時代の短い動画を見る限り、一般的なモダンバレエに見えました。
いわゆる「クラシックバレエ」と「モダンバレエ」は、ほとんど、95%と言っていいくらい、使っている技術や体の使い方は同じです。
では何が違うかというと、モダンバレエは「クラシックバレエの人が、トゥシューズを脱いだ」ところから始まりました。シューズを脱ぎ、裸足で、「王子」や「姫」や「村娘」の衣装を脱ぎ捨て、シンプルな衣装で、「物語」や「音楽」ありきでなく、体が主体のダンスを始めたのでした。しばしば足先をフレックス(まっすぐ伸ばさないで90度に曲げる)にするのも特徴です。クラシックバレエの禁止事項を、「もうしばられるのはたくさん!」と、あえて使用しているのです。
パクチーは小学高学年までクラシックバレエを、パクチー妹は中学生までモダンバレエをやっていました。発表会やコンクールで妹を始め、モダンバレエの子達が、両足ををそろえた裸足を床にぺったりつけたまま、しゅるしゅるしゅる!!っと高速で3回転くらいするので驚きました。
そしてパクチーの妹ちゃんは、高校でヒップホップのダンス部に入って、大変苦労していました。
バレエは、重心を上へ、上へ、と引き上げるダンスです。
ヒップホップは、下へ、下へ、と下げるダンスなのです。
まず立つ姿勢から、体の力を入れる部分が違うので、かなり意識しないとついてる癖が抜けません。バレエ、腿の内側をギューッ!!と引き上げ、鳩尾をぎゅーっ!!と引き上げ、ぎゅーっ!!と鎖骨を開いて、ぎーっ!!!と肩を下げて、すーっ!!と首筋を伸ばします。そして腕は柔らかく曲げながらも、中指が体から一番遠くなるようにぎりぎりっー!!!と伸びています。
これを何でもなくやるのです。久しぶりにやったら、立ってるだけで脂汗が出ました。
そしてバレエには、
頭の傾き
目線の高さ
手首の角度
指先のかたち
腕を上げる時、腕のどの部分から上げるか
移動する時、体のどの部分から前に出るか(基本的に胸が多い)
など、繊細な表現が、全ての動きに伴って付いてきます。
ジミンちゃんの「腑に落ちてる」感
もーね、バレエのおかげなのかどうか分からないけど、
ディテールがめっちゃきれいなんだわ!
細かい、肩や、あごや、指先や、膝の向き、つま先の向き、
いちいちきれいなんだわ!!
ジミンちゃんのダンスを細かく見ていると、緩急がすごくついているのが分かる。
そして振りのひとつひとつを細かく分析して、
「なぜ、次にその動きになるのか」
の動機付けが、彼の中でしっかりなされている。
「与えられた振りだから、指示通りに体を動かしている」箇所がひとつもない。動きの意味と、「なぜそうしたいか」が彼の中で明確になっていて、きちんと腑に落ちているので、ひとつひとつの動きが「必然」になるまで踊りこまれている。だから、情報量がすごく多い。
ジンくんのフォーカスを見て、「ふんふん」と思った後にジミンちゃんのフォーカスを見ると、
「あ、こういう踊りだったのか…」
と意味が分かることが多い(ディスってない!ジンくん大好きです!)。
ポジションを移動するのすら、
舞台から一度ハケて(退場して)、また入ってくるののステップすら、
美しく無駄がない動き。
一歩一歩の移動ですら、舞台の上で彼は、意味と必然を持っている。
存在感の、そのわけ
ところで2019年に、ジョングクくんが初めて長めの髪にパーマをかけて、そのだだ漏れる大人の色気に世界中のARMYが心臓を撃ち抜かれたライブがありました(2019年8月11日 Lotte family concert)。
その時、体も鍛えてステージ上で随分存在感を増したグクのとなりで、
「あれ、ジミンちゃんってこんなに小さかったのかな…?」
とパクチーは思いました。
「男性は鍛えて体が大きくなると、舞台の上で映えるんだな!」と気付くと同時に、その時の衣装のせいもあるとはいえ、
二人の表面積が、グクとジミンちゃんで1:0.8くらいに見える。
そして、
「なぜ、今までジミンちゃんが小さいと思わなかったんだろう?」
と思ったのです。
そしてその可能性の1つをパクチーは見つけました。
それは、直線。
(ここから先、偉大なジミンさまの画像の上に線を描いた不届きをお許しください…。)
検証すればたくさんあるんですけど、ここでは『Boy with luv』のプラクティス動画で紹介したいと思います。
もう言葉は不要です。
ざっとみてもこのくらい、足の直線と、上半身の直線と、肩の頂点と、頭のてっぺんまで、時には指先まで、というラインが、要所要所で美しく直線を描いているのがお分かり頂けるでしょうか。
(最後のアップは、3人とも振りに対して解釈から違う)。
彼が、空間に彼の体で直線を描くことで、
見ている側は
その線の延長線上のラインを無意識に視覚の中に感じるので、
彼の存在を、実際の印象より大きく感じるのです。
彼は「平行」の技も使います。
床、天井のラインと一時的に「平行」状態を成立させることで、
空間の中に、彼が支配しているエリアをより広く感じさせることが出来る。
極め付けはこれだ!『FIRE』。
これは本当に、細部に至る意識と、美意識と、精度の高い練習との繰り返しの結果なんだと思うわ…。
ちなみに普通の人は、鏡を見ずに、直立したまま腕を水平に伸ばすことすら、人によっては難しいです。
さて、ジミンちゃんの声だ。
2019年5月19日の楽しい『EAT Jin』で、ジミンちゃんが自分の扁桃腺のことを言っています。
25分43秒あたりで、ジンくんが一緒にご飯を食べてしまっている後に「俺、風邪ひいてたわ…」とカミングアウトする誠実さにも萌えなんですが、その後。
そっか…。
ジミンちゃん、扁桃腺大きいんだ…。
と、しんみりした。
パクチーの主観なのだけど、
ジミンちゃんの声は、倍音構成が豊かだ。
人々がジミンちゃんの声に、独特な美しさを感じ、魅力を感じるのは、ジミンちゃんの声を構成している倍音が豊かだということが、ひとつある。
そして、初期のライブツアーの映像を見ていると、
「ああ、声帯が不安定なタイプなんだなあ…」
と分かる。
ジミンちゃんの声には、いろいろな種類の音色があり、それぞれに倍音の構成パターンが違うのである。その音色のゆらぎ自体がジミンちゃんの声の魅力でもあるのだが、
同じように出しているつもりでも、首の角度や、体の緊張具合、力み具合、疲労加減で、連動して、すぐに音程や、倍音の構成、響きが変化してしまう。
地声と裏声が切り替わるポイントが変動してしまう。
音程のコントロール、音色のコントロールがしにくい、非常に繊細な、扱いにくいタイプの声帯なんである。
しかも扁桃腺が大きいと、扁桃腺が腫れやすい。
扁桃腺が腫れると、炎症を起こしているので、
最初のうちは充血しているため、声が出やすい。
出やすいのだけど、出したい音より高めになりやすく、また思いがけないタイミングで声が割れたりする。
また、摩擦に弱い状態なので、使っているとすぐ声が枯れてしまう。
声枯れは、扁桃腺の腫れ自体が引いても、すぐには良くならない。
もうね、ずーっと喉のことが、頭から離れないです。
すごいストレスです…。
WINGツアーの袖で泣いていたジミンちゃん、胸が痛みますよね…(Burn the stage Ep.2)。自分じゃどういう風にもコントロールしづらいんです。ましてや直前で喉の状態が悪くなると、会場で目の前がすとーーんと真っ暗になります。でも、直前にどうにかできる対処法もありません。トラウマものです。そして本番が終わるとけろっと扁桃腺の腫れが気にならなくなったります。「あれ、精神的なものなのかな…」。精神とも連動しているかもしれません。それくらい、とにかく本番期間は「喉の調子」「うまくやること」それで頭がいっぱいで辛いです。あ、途中から自分の話です…。
しかしですよ。
2019年2月20日のVLIVEで、26分27秒あたり、ジミンちゃんが自分で、「みなさんがアルバムを聴いたら、ジミンの声、こんなに良かったっけ?と思うだろう」というようなことを言います。
そして『MAP OF THE SOUL : Persona』がリリースされます。
あ!!!
ほんとだ、よくなってる!!!!!!!
あのですね、端的に言うと、
声質が、力強くなり、安定しました。
その分、消えてしまった倍音もあるのですけど、その代わり聞こえてる倍音が以前よりずっと力強く聞こえるようになりました。
そして、彼自身がすごく歌うこと自体が楽になっているように見えました。
おわわああ〜すごいな〜〜〜
多分、繰り返し歌い続けて、不安定な時期も歌い続けて、安定した音色に出会うまで努力し続けたんだなあ、強いなあ、努力の人だなあ、と思いました。
ジャズシンガーが、あえてお酒と煙草で喉を枯れさせて、渋い響きを出そうとすることがあります(最近の若い人はしないと思いますが…)。ちょっとそれに似た効果というか、乾布摩擦で肌が鍛えられたみたいな、ちりめんのように繊細な声帯が、喉を使い続けることでなめし皮のように鍛えられたというような。
そしてさらに、アルバム『BE』の後のインタビューで「まだ自分の声を探している」と言っていました。
ジミンちゃんの声は、今後もより豊かになっていくと思います。なぜなら、今出していない響きを、彼はまだまだ持っているからです。そして、彼のような声帯は、歳をとると繊細さが減ってきて、もっと自分で扱いやすくなって、響きのコントロールが易しくなってきます。
自分の声を探求し続けるジミンちゃんが、どんな表現を得て、どんな表現を見せてくれるのか、楽しみですね…。
ちなみに。倍音って何?という興味のある人用に。
倍音って何?というと、
倍音をわかりやすく説明するのは難しいのだけど、実際にはいつも聞こえてるものです。でも「聴く」意識をしないで聞こえるのは難しい種類の音です。
「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ」の、「ラ〜〜」と歌おうとすると、
実際には「ラ=約442Hz(ヘルツ)」以外の音もいくつか鳴っています。
そんなわけない、と思うかもしれません。
しかし実は自然界には、倍音のない音の方が存在しないのです。
倍音のまったくない音は、聴力検査で聞くあの「ピー」という音になります。オシロスコープなんかもそうです。倍音がない音は「サイン波」と呼ばれ、オシロスコープに入れるとシンプルな波を描きます。この音は機械でしか作れません。ちなみに、倍音とは違いますが、全ての周波数の音が鳴っていると、テレビの「ザー」っという砂嵐の音になります。
例えば、同じ高さの音で、
「あ〜お〜あ〜お〜」と繰り返し発声してみましょう。
「あ〜」は明るい響き、
「お〜」は暗い響きに聞こえるでしょう。
歌っている音を、「基音」と呼びます。
基音以外の響きが「倍音」です。
「あ」には高い倍音が、
「お」には低い倍音が一緒に鳴っています。
一緒に鳴っている倍音の高さが、音色の明るさ、暗さの違いとなって聞こえています。
例えば、ジミンちゃんとテテちゃん(V)が、同じ高さで
「あ〜」と歌ったら、
ファンはどちらの声か分かりますね。
それは、二人の声の、同時に鳴っている倍音が違うから、違う音色に聞こえるのです。テテちゃんは、低い倍音が多い声です。
ジミンちゃんは男声には珍しい倍音構成で、いろんな倍音が出る声帯だったことで苦労もしていましたが、SUGAは、ただ「お前はいい声だ」と言っていましたね(Burn the stage Ep.6)。彼には、その複雑さゆえに持てる他の人にない魅力がある。
ジミンちゃんが、苦労して、努力して、「世界的なシンガー」になるまで、周囲の人たちから支えられながら、大きな原石を磨き続けて、今もますます輝こうとしている。
「自分」に関しては、飛び級はないし、楽なルートもない。
ジミンちゃんという若者が、自分と向き合い続ける強さを見て、パクチーも諦めずに頑張ろうと思うのでした。
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