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【Run BTS】のダンスは、何が圧倒的だったんだろうか

こんにちは、パクチーです!

最初見た時、すごいと思ったよ。わ〜〜〜!っとなった。

でも、「何が」なのか、「何すごい」なのかが、全然分からなかった。強いて出てきたのが、

「…とても、美しい」…。

わたしは彼らのダンスばっかりを見て、これは知ってる彼らの延長線上にあるはずなんだけどなあ…。見終わって、

「わ〜〜すご〜〜〜〜」

から先の言葉が、何も出なかった。

akkiy☆さんのnoteきっけで、記事で紹介されているダンス動画を見ました。

そこでBTS以外のダンスを見ていたら、色々言葉になり始めるものが、あったんです。そうして、もう一度改めてBTSの【Run BTS】のプラクティス動画を見た。

そしたら、

彼らがしてるのは、
「ダンス」でも
「歌」でも
「歌手」でも
「パフォーマンス」でも、
ない…

「見せたい情感を、一番伝わる形にしたら、これだった」

というように見えた…。

「情感」をもとに、歌詞も、メロディーも、表情も、動きも、振りも、全部が融合して混ざり合って、垣根が無くなってる。本来なら違うジャンルの表現形式が、単品にならずに、互いの様式を高め合っている。

だから渾然一体のエネルギーが、ステージに満ち満ちているのだった。

その力強くまとまったエネルギーが、ば〜〜〜〜っとウェーブ状で画面から発しているのが、このプラクティス動画なのか…。

情感とは、「その時、その場面で、自分が感じていた気持ち」のことだ。

演劇をする人が、ステージ上で台詞を言う時に使う感情だ。「今、この台詞を言いたい気持ち」を先に味わうから、台詞が言える。だから「暗記して練習した言葉の羅列」にならずに、毎回、「今、この瞬間その場面を生きる人」の言葉になる。

そう感じ始めたら、このプラクティス動画の解像度が上がってきて(いやーめっちゃ画質もいい、いいカメラ使ってるよね!感謝)、ますます面白かったのです。

それでは今回のnote。「情感」をテーマに、【Run BTS】のダンスを見ていきたいと思います。GO!GO!GO!


「Yeah, yeah.  Run, run. Okay, okay, let's go!」

冒頭。キュィ〜〜〜っとなんだか治安の悪い音で始まる。

実は最初のSUGAくんのリリック、マイクのサウンドチェックの時に使う音に似ている。ライブを準備するときは、設営中ステージでこのチェック信号を何十回も繰り返し聞く事になるのですが、その気分で、「あーあーマイク、チェック、チェック、ワン、ツー、おっけ?おっけね!レッツゴー!」の感じがある。

そして「Run run」が「王(ワン)」にも聞こえる。皆んなが舞台奥に整列して出待ち中。王者お出まし、の感じ。

「学校終わると、会社から着信」

治安悪そうと思いきや一転。可愛く明るいノリの歌い出し。オーソドックスなウォーキングベースで、呑気な気分もあり。

電話に出るジョングクくん。このジョングクくんは、釜山から出てきて、キラキラの目でソウルを歩く、ソウルの車線数に驚くジョングクくんではないか…。

このバックダンサーたちが、彼が電話に出た時の違う日バージョンのジョングクくんを表しているみたいに見える。「早く行かなきゃ」「お願いだから家に帰さないで」「遊びに行きたい」「お母さんに会いたい」と思う、それぞれの日のそれぞれの心を表現しているみたいに。そして全てのジョングクくんは急いで会社に向かうのだが。

「たまにあの頃の夢を見て ぞっとして目を覚ます
あん頃には絶対戻りたくねー!!」

ここで一緒に泣いてくれ…。

10年前のジョングクくん、の後ろから、今現在のVくんが現れる。歌詞は「トラウマになってんじゃんか…」と思うのに、この超!笑顔。目覚めて現実を見たら、今の彼らはその頃の精神的な重圧から完全に解放されてるんだ、彼のダンスで「今は全然違うよっ」ってのが分かる。「やっべーー!」って起きて、チームメイトに夢見た話をして、それは完全に笑い話だと。

ところでこの曲、全体的にVくんのダンスの魅力爆発です…。この二人の超笑顔…の、プラクティス動画って他のアーティストさんでもあるのかしら…。

「10年を辛抱した 君を捕まえに底辺からやって来た
ちょっとは生き急いでるかもね」

ジミンくんが辛抱しながら、障害を避けながら、実直に歩みを止めない10年を一瞬に凝縮して見せてくれている。バックダンサーも、背景を飾りながらも心情にシンクロしている。

ジョングクくんが本気で腕を振りかぶってるのが、勢いあってすごい。

「何が望み?どうして欲しいの?言ってみてよ」

うーん。この腰の位置の低さ、すごいな。

ここからの展開、素晴らしくて見事…!

マンネラインってBTSの入口になってるところあると思うんです。ジョングクくんもジミンくんも、もちろんVくんも、万人に通じる、一見して分かりやすい、華やかに撃ち抜く魅力がばーんとある。その3人(ここでは2人)に誘われて…
連れて行かれるのですよ…
どこへ…

「夢中にさせて、振り回すから、誰だろうと、感動させるから」

ヒョン達の揃うところへ………!

ここで皆んな揃う直前のバックダンサーさん達が、「そりちろ〜(皆んな叫べ〜〜)ジャンプ!ジャンプ!」の、マイムをしている。こっから始まるのが本番で〜〜!サビよ〜〜〜!と。そしてメンバーのみを残して去る。

ところで、画像の注釈に入ってるのはわたくしによる歌詞の和訳です。めっちゃ意訳です。直訳だとここは、

혼을 쏙 빼놓지 (make it move, left and right)
魂をぐいっと引っこ抜く (動かす、左に右に)
그게 누구든지 (make it move, left and right)
それが誰であれ  (動かす、左に右に)

「骨抜き」とか「首ったけ」とか、今あんまり言わないですかね。「正体をなくす」とか。moveは感動するの意味もあるので、両方意味が入ってると考えると面白いと思います。「left」と「right」は両極で、極端な感情を味わされる感じもあり、繰り返すと右往左往ですから振り回される感じもありますよね。

バイクのハーレー集団みたいな気分の姿勢がベースにある感じがします。「run」をテーマにした、バイクのエンジン、ギア、ハンドル、アクセル、シフトチェンジ、足で走る事、などがコンクレート状になって面白いセクションです。センターで前方に進行するジミンくんの、頭と重心が怖いくらいブレない。

「走れ防弾 走ろう お前は走らなきゃ」

さて。本番別人かと思うお一人目、j-hopeさんは本番の画像貼っておきますな(暗くて見えんな)。プラクティス動画の方で、練習室では、俯瞰して全体も見つつ、その日の練習の全工程の為にパワーを配分して、それで98%みたいな印象だった。

それを「鋭いカッターナイフ!」みたいに思っていたのに、本番は「マシェットナイフ…!」。ギザギザ付いてる…なんてこと…300%…。

パフォーマーに全振りした本番のj-hopeさんは、もう、何もかも、違う!

「成功理由?俺も知らん。そういうのってどこにあるもんなの?」

さ!王のお出ましですよ!

SUGAくんも本番別人系ですよね。

釜山のライブを観に行った方の、こちらのnoteを大変楽しく読ませて頂いたのですが、

こちらを読んで、釜山のライブ動画を見ると、すごい腑に落ちる。確かに彼は、釜山に限らず、ライブになるとブレスの位置がちょっと変わる。「ここまで一息で言う」の一息の長さを、音源と変えてくる。それに伴って抑揚のつく部分、クライマックスの部分がずれて、テンションが生まれる。エネルギーを溜めて、集めて、焦らして、ばっと出す、を、自在にやっているように見える。まさに観客からすれば「left and right」。

SUGAくんは「BTSはライブが上手い」と説明したりするが、ライブが上手いのは、あんさんでっしゃろ…。ライブが上手い、つまり観客という生モノのこの瞬間を汲み出して、それをパフォーマンスという形で反射している。…わたしも専門用語は分からないが…。

ああ…。ラッパーなんだな…!

しかもライブ前提の!

にも関わらず、このプラクティス動画の彼は、まるでこのお洋服、いかにも「気鋭の若手プロデューサー」なんですよ…。見たことあるなあ、業界の人っぽいこの感じ…なんすよ…。

「『俺が今売れてる』って?おいお前…そりゃねえわ…」

リーダーご降臨だ〜〜!RMくんこそ、永遠の少年じゃなかろうか。

真正ラッパーなのに、プロデューサー業界人風だったSUGAくんに対して、RMくん、ガレージから出てきた宅録系ラッパー(服の話)。彼も本番は別人のように、冴えて、スタイリッシュで、手足長くて、美しくて、びっくりしましたよね、もう…ほんとに…びっくりした…。

と、ここで、わたくしパクチーの独自見解を書かせて頂きたい。

【Run BTS】、この曲の中核はこのラッパー2人なんじゃないかと思うんです。そう。防弾少年団始まりのラッパー、2人です。

しかし、この2人、それほど大したことはこの曲で言っていない。双方めちゃめちゃ熱い、重い、濃いラップを書く方々だが、ここにそういう強いメッセージはない。ただ、

「俺たちって、こういうチームだね〜〜」

と言っているだけなんですよ…。

この曲はむしろ、全編通してラップなんじゃないか。だから、ダンスもむしろラップの一部。メロディーもラップの一部。ラップをしないメンバーが、歌とダンスをラップの代わりで補っている。

「俺たち」が日頃持っている気持ち、「俺たちってよく走るチームだな」「俺たちって自分のチーム好きだよな」という、その想いだけが言いたい曲。

それが何を意味するかと言うと、

ビートと仲間とフロアがあったら、
仮に俺たち以外のものが何もなくなっても、
こんくらいの高さまでは遊べるぜ

そういうベースのところにある力を、存分に見せつけられているような感じがするんですよ…。

今回のこれ、実は商業的には、何の目的も無い訳じゃないですか。それって…あらゆるアイドルたちが振り付けを覚えるのに、それはプロモーションと音楽番組でいい成績を出すためで、どうしたってそれはセットじゃないか。でもこの作品の場合、このダンスに関わる全ての人が、ショービジネス原理から離れている。すごく動機が特異的です。

BTSの曲は、社会に対してやARMYに対して、「これを伝えよう」というかなり明確なメッセージがあることが多い。

しかしそれのもっと手前のところに、まだファンがちょっともいなかった頃、宿舎の小さな居間で、作ったビートを聞かせあって、作ったライムに興奮して、今持てるようなものを彼らが何一つ持たず、ただただ自分達だけでひたすら楽しかった時間があったと思う。

今、あるのはその拡大版だから。テーマとか肩書きとか、権威とか、何も持されたくても、俺たち仲間が作り出すものでただひたすら楽しくなれる。こんくらい作り込めるチームになってるから。

それが、この作品の中核なのじゃないか。

「10年辛抱して 底辺から来た俺ら」
「見ろ、俺たちが7人の仲間を得たのを」

えっ…美しい………。

今回、何度でも言いたいが、ジンくんがめっちゃ上手い。ジンくんのダンスが上手いとか上手くないとか発言すると国が割れる恐れがあるが、

上手い!!!!!

そんで、はっとするほど美しくない?この動画の彼…。

ここの高音も異世界の異物感あるが、存在自体が美しすぎて調和してねー。こんな、さもしい(失礼)下界の練習室においで頂いて、エルフの国におられるべきでは…。

しかしジンくんに言われる「10年辛抱した」「底辺から来た」「Tell me what you wanna」…すごい…ふ、深い…。深すぎて、痺れて、沈む…。

「走れ防弾 走ろう お前は走らなきゃ」

天晴!!このSUGAくんは怖いくらい男っぽいね!ライブはもう少し軽さ、ちょっと気まぐれ風なニュアンスを混ぜてました。

見るべきところ多くてわたわたしちゃいますが、とりあえず、Vくん。要素が多い振り付けながら、まとまってスマート、それでいて非常に表情豊か。ベースを聴いてるな…と見える。ベースの「ドゥドゥドゥドゥ」と刻みながら上昇する音形に乗せて、ある情感を再現している、一貫している景色があります。Vくんの最強の強みですよね…。

<間奏>

ちょっと楽しい小道具使いです。ここジミンくんしか見えていませんでしたが、あ、みんな、族です、族ですよ!

「ナムジュニ ホプ お疲れっす」

このRM、j-hopeのクサズ(93年生まれ)の関係性にちょっと胸が熱くなる。そして、みんながラフにそれぞれモーションをとりながら、コミュニケーションを我々に見せながら、自然にポジションに付いていくのの、

情景の豊かさ、シーンの物語性、生み出される空気感、これ、やれって言っても実際難しいことですよ…!!

「これからももっと凄いもん用意して あれもこれも獲ってやろう」

「バンタン・バンタン・バンバンタン!」。本番前の舞台袖での掛け声です。「みんな、お疲れ!」、そしてまた本番。ああ、あの雰囲気は、楽屋から舞台袖までの通路か、つまりバックステージの彼らなのか、と分かる。

(生き急がせるなら 早く死んでやろうか)

何度でも言おう!ジンくんが上手い…。

このサビの振り、3回出てきますが、アイソレーションしながら手を左右交互に出していく動作、

ここ、メンバーの中でジンくんが一番上手いんじゃないだろうか。すごいきれいです。ライブの動画そこだけ何度も見たもんね、中心の軸がブレないながら、きれいにS字にシェイクしてるんです。プラクティス動画の方は、被っちゃってあんまりよく見えないが。

ジンくんのダンスを、上手いとか上手くないとか言うとしょげる人がおられるだろうか、二元論で語るのは止めようか…。

しかしここは熱く語りたい。わたしはジンくんが大好きだ。だけどダンスが大好きなんだ。ジンくんは、ジミンくんやj-hopeくんのようには、意識的にコントロールできる可動域が大きくない、とは、言えると思う。

だけどそれがいけないことか?いえ、全く。彼は、可動域自体は決して狭くない。そして、もはや「彼にしか出せないニュアンス」を彼は持っている。

ダンスのコアは「意図」だと思う。何を意図してその動きになったのか。ストーリーと情感の組み立てが、間やスピードの緩急を作る。それが人をはっとさせる印象を生み出す。形をトレースするだけなら運動で、体操で、それとダンスは違う。

彼は自分の固有のニュアンスを使って、「意図」を表現する体を持っている。ものすごくたくさんのものを、彼の独特さで順番に獲得していったのだった。最初は、ほとんどないところから始まった。わたしはその道のりが、愛おしいし、心が動かされるし、尊敬する。とても見ないことには出来ない。

「走れ 美しく」

さあラストシーン。ここはRMくん以外考えられないでしょう!!j-hopeくんが笑顔なのが印象的ですよね。真正のステージ人なんだなと思いますね。

ライブでは比較的ゆったりした感じで歌っているのが、「余裕あるぜ」って感じでかっこいいと思いました。


というわけで。

今回じっくり【Run BTS】のダンスについて見てみましたが、

一番すごいのは、総合力だったと思う。

かつて【Dynamite】や【Butter】や【Permission to Dance】で、曲中ずっと一貫して、安定して、ある情感を感じさせてくれる。彼らの世界で包んでくれる。そういう表現を完成させていた。

そして今回、一番の相違点は、全ての歌詞が自分たちで書かれたところだと思う。

自分たちの内側の想いが全ての根底にあって、その上で現れる表現(表情、マイム、ダンス、ラップ、歌、衣装、小道具)は、こんなにもパワフルに融合し合うんだなあ。

全部の要素を、当たり前のように、必然に見えるまで強度を高める、表現者としての地力。圧倒的な地力を見ました。

瞬間瞬間で、表情、しぐさ、動き、そのどれもから、情感を、心を、剥き出しなくらいわたし達に、差し出して見せてくれている。

「これを味わせたいんだよ!!」

この曲の場合、それは「宿舎や舞台袖を10年居場所にした、今の俺たちの感じ」なんじゃないかと、わたしは思った。10年の間に起きた様々は、結果的に、こんなにも美しく磨かれた7人を仲間に結びつけた。見てくれ、舞台裏を見せるから、一緒に立ち会ってくれ。当事者になって欲しい。関係者になって欲しい。身内になってくれ。そんな風な気分。

彼らが実際、どういう思いでこのダンスを踊っているかは分からない。もともとこの曲のコレオを、どこかでやりたいと思いつつ、無いものだったか、逆か、わたしには分からないしね。

でも、実のところがどうであろうと、心を剥き出しに見せてくれているように思えてしまうくらい、いくつもの異なる要素を、見事に使い切っているのが、BTSメンバーの個々の能力の、今現在の到達地点なのか…。


くらっとするくらいの、高みだわ。

皆さんにはどうかしら。


それではまた!!




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