j-hope【on the street(with J.Cole)】がアメリカに与えた、ほろ苦いノスタルジックと多幸感
実はわたしはこれまで、hip-hopはどうやって聴くのかよく分からずにいた。BTSがhip-hopをやっているのを知っていたけど、それは「楽曲」として聴いていて、hip-hopの文脈では聴いていなかった。
あおいうえさんのnoteを読んだのをきっかけに、初めてhip-hopの愛好家がどのようにhip-hopを聴くのかを見た。彼らがj-hopeくんの【on the street】のMVにリアクションするのを見て、わたしは初めて、hip-hopとはどういう音楽であるのか、その一端を垣間見た。
そこには新鮮な感動がたくさんあって、驚きがあって、知らなかった世界、わたしの聴き方と全く違う、初めて触れた意識があった。
hip-hopとは、リズムとライムだ。
…いや、さすがにそれくらいのことは分かってる。分かってるんだが、リズムとライムがそれぞれ、どのように聴き手に受け取られているかを初めて知った。
「リズム」。すなわちループするリズムトラックから、彼らは「感情」「気分」を受け取る。
「ライム」。すなわち詩は、ビタミン剤のように、よく効く薬のように、口ずさんで、自分の身体にダウンロードして、詩の世界を取り込む。そしてそのパワーを自分自身のエネルギーに、変える。
わたしのnoteをご覧頂いている方にはご存知かも知れないが、わたしはもともとクラシックの音楽をやっていた。母がピアノの先生で、就学前からクラシックのオーケストラや、ピアノのリサイタルに連れられていた。ピアノのレッスンを楽しいと思ったことはない。レッスンは緊張で汗だくだったし、音楽とは真面目に「習熟する」、その「成果」だった。
「音楽って楽しいものなの…?」と、初めて思ったのは、音大に入ってからだった。級友が、知らないアーティストはいないような音楽フリークで、わたしをいくつものライブに誘ってくれた。全く聞き馴染みのないアーティストのライブに付いて行ったわたしも大概だが、石野卓球さんが前座で、FatBoySlimさんがメインのライブに行った時、リズムがわたしを自由にし、巧妙に作られたブレイクが意識を解放させることに、「音楽って、ちょーたのしい〜〜〜〜〜!!!!!」と、音楽に快楽があることを、わたしは初めて体感した。
「音楽は楽しんでいいものだ」とは、後にアフリカ音楽を学んだ時にも同じ理解があった。舞台の仕事を通してアフリカ音楽を特集したDVDを見た時、普通の、村の若者男女が、パーカッションだけのアンサンブルで、路上でとにかく躍りまくっておる。パーカッションを担当するのは、村の普通の、ちょっとセンスある青年たちだ。つまり、音楽とは専門の訓練を受けた人のためのものではなく、それで食い扶持を稼ごうという人のものでもなく、普通の人が、普通の日常の中で、生活の一部に持つ、「踊っちゃう」「楽しい」=「音楽とはそのためにある」が、そのまま画面の中で繰り広げられていた。
わたしのソルフェージュ(音楽理論)の先生は、
西洋は「横」の音楽で
アフリカは「縦」の音楽だ
と言った。
わたしは音楽を「横」で聴いている。「横」とは、メロディーとハーモニーのことを指す。西洋音楽はメロディーとハーモニーに特化した音楽だ。
対して「縦」は、楽譜上の「縦」のかたまり、つまり「リズム」を指す。彼らはリズムからものすごい量の情報を受け取っている。
アフリカから奴隷として連れ出されたアフリカ人は、世界中で、彼ら特有のリズム感とスケール(音階)を定着させた。それが、ブルースであり、ジャズであり、R&Bであり、hip-hopだ。これらの音楽を、西洋の記譜法で正しく表すことは出来ない。「グルーブ」と呼ばれる微妙な拍感のずれを記譜することが出来ない。西洋音楽は「縦」を繊細に感じ取る音楽ではないからである。
j-hopeくんの【on the street】を、リアクション動画のYouTuberたちが、ラップの歌詞を理解するために、所々で停止しながら、戻しながら聴くのを見て、すごく新鮮な驚きがあった。西洋音楽ではありえない。横の流れを止めたら、音楽は死ぬんである。音大の入試で演奏が途中で止まってしまったら「演奏中断」=0点だ。
だけどhip-hopを聴く彼らはそうじゃない。リズムトラックは、一度受け取ってしまえばあとはループなのでそれほど重要じゃない。それよりも何よりも、「リリック(詩)」、ラッパーが何を言ってるかを、その瞬間可能な限り完全に理解することが、「曲を聴く」ということらしかった。
さて。ここまでが前置きで、タイトルの本題に入ります。
これは、わたしがこれまで知らなかったhip-hopの聴き方について、主にアフロアメリカンのYouTuberがリアクションした動画を通して学んだことをまとめたnoteです。動画は自動翻訳しかなく、申し訳ないことにわたしの英語の理解力は中学生レベルなので、「この動画のこの人がこう言ったよ!」と言いたいところなのだけど、自信がありません。これは、20本くらいのリアクション動画を通してわたしが知った、「アメリカで特にhip-hopを愛好する人が、どのように【on the street】を聴いたか」という、わたしの理解になります。わたしは彼らがこの曲を聴く様子に、すごく胸を打たれて何度も泣いたのだけど、これはわたしが、「この人たちは、こう思ってるっぽい!」という、個人的な解釈の上に成り立っている、漠然としたnoteであることを、どうぞご了承頂ければと思います。
そして、このnoteの全てはあおいうえさんのおかげです。ここでお礼を言わせて下さい。Thank you so much your lovely note. It gave me new fantastic view!
a.イントロ
まず出だしのイントロ。この曲のテンポ。コード進行。hip-hopネイティブの人からすると、「ちょうど良く気分が良い」らしい。
hip-hopは今や多岐にわたり、さまざまなスタイルのアーティストがいる(らしい)。その中で伝統的で本質的なhip-hopを、一体誰によって守れるというのか。そんな時、この曲は、みんな大好きだったオーソドックスなビート、オーソドックスなスクラッチ、みんなが大好きだった90年代、それを彷彿とさせるニューヨークを使った背景。j-hopeが着ているジャケット、あのレザージャケット大好きだった、
と、
J.Coleを、j-hopeがリスペクトしていて、j-hopeがJ.Coleの音源からラップを体得した、こいつはまじでhip-hopの本質の継承者だ、ということが、最初のイントロで丸分かりらしい。
パクチーが驚いたのは、最初のリズムパターン(伴奏)のループで、つまり口笛とギターのコード4つで、
「ああ、これは幸せな時代の心地良い、ストリートの感じ」
を、ほぼほぼ全員がバーン!と受け取っていたところにある。パクチーからすると、「ちょっぴりノスタルジック…んー…いや、ベタすぎない?」である。しかし、彼らにとって、最もリラックスして、心地よい、良い気分にさせるコード進行なのだと知って、
わたしはこの曲を、「j-hope」くんのバックグラウンドを通してしか聴いていない。
が、「J.Cole」のヒストリーを知っている、hip-hopという世界に対して、彼が取ったのがこのアプローチで、
やるな、j-hope…
と、心底思った。
b.コーラス
この曲のキーになる部分、別noteで「マントラのよう」と書いた、この曲の根幹。視聴する前に「j-hopeとかいう男は、英語を喋るのか?」という不安を持っていたリスナーが、最初に聴こえるこのコーラスで、「あ、解る」。
アフロアメリカンの人たちが持っている「Father, mother, brother and sister」の価値観。自分が所属するコミュニティに、同胞に、「共感する」「同調する」「シンパシーを持つ」「共有する」、そこで自分は全体のために自分を持ち出すんだ。それは基本的な、共有されている価値観として、「仲間のために」というのは彼らにはとってもしっくりくるらしい。
わたしはこのコーラスの歌詞について、j-hopeくんがそういう意識でいる人だというのを知っていたし、だから特別な感じはなく、むしろ普通すぎる?うつくしすぎる?と思っていた。
しかしこの「普通」と「うつくしさ」、
よく分かる英語
シンプルな単語
一発で完全に理解できる世界観
が、めちゃめちゃ重要だったのだと、後になって分かってくる。
ここではまだ、j-hopeくんが具体的に誰に対して「自分の全てはそのためにある」と言っているのか、「for us」がどのコミュニティを指すのか、聴いている側は分からない。
c .バース1
ああ…。そんなに難しい訳じゃないと思ったんだけど…一生懸命になってしまった…涙が止まらない…。3行目は英語の訳に入ってる「誰かの」を補足しました。
気を取り直して。ここでhip-hopネイティブの人たちは、「…?」「英語が聞こえるけど…これ何?」、という初めての体験をします。その、良く分からないものの中に、はっきり良く分かる英語が混ざっている感じが、すごく、初体験っぽくて、新鮮なんだな。
チョコレートポテチみたいな感じだろうか(違うか)。
この新感覚に対して非常に好意的で、本家のラッパーには決して作れないこの耳触りを、新しい音として感動しているようだった。
と、ここで、視聴以前は「そいつって、まさかラップしてくれんのかな?」と疑われていた技量が、「あ、こいつはラッパーだ」。しかもただスタイルをコピーした「ラップ風」じゃなくて、自分の中にhip-hopの世界を完全に落とし込んで、自分とミックスして、自分のオリジナルを持っている。それを完全にhip-hopの文脈でアウトプットしている、と気付くんである。
d.コーラス
そうなってからのコーラス。すると、一気に好感度が上がって、
ハッピーな心地よさに満たされ始める。
ニューヨークのビルの谷間、ストリート、交差点。さらに言えばサブウェイ。hip-hopの永遠に古典と思しき、決して嫌いな人のいないような画。
j-hopeくんの作ったリズムトラック、コーラスのリリックは、「普通」で「うつくし」く、誰にとっても嫌悪でひっかかるものがない。かつ、全てが90年代へのリスペクトという、hip-hopの本質を掴んだ黄金的要素で出来ている。
この「良い気分」のコーラスが繰り返されるのは、彼らにとって心地の良いものみたい。リズムがループでいい人たちだものな。西洋音楽は繰り返されるものには意味がないといけないので、この感覚も新鮮だった。「だって楽しい気分はいつまでも続く方がいいじゃん」。
ここでhip-hopネイティブにひっかかる要素は、視聴以前から持っていた
「j-hopeが韓国アイドルだ」、という部分のみになる。しかし2回目のコーラスではそれもきれいさっぱりなくなっている。なぜなら、それは、彼らが、アフロアメリカンの彼らが、最も、多分世界中で最も、「サウンド=音」に注力して聴く耳を持つ人たちだからだ。
ここまで聴いたところで、彼らが最初に持っていた「どうやって韓国人の、しかもアイドルに、hip-hopが出来ようがあるわけ?」「白いのに」という、言葉にせずとも存在する分厚い壁は、j-hopeくんの作ったリズムトラックと、彼の吐き出す息の使い方と、言葉の刻み方で、すっかり彼の持てる真剣な情熱を理解する。もちろん影響を受けたラッパーは他にもいるだろう、でも、ああ、こいつは本当にJ.Coleからhip-hopを学んだんだ。ビートを一音一音作る努力を自分でしたんだ。ライムを刻む修練を積んだんだ。hip-hopの一番良いところを、誠実な思いで継承している。こいつは、このコラボが出来る位置まで、真面目に努力したやつだ。
お前が愛しているもの、俺たちも愛してるよ、Bro
j-hopeくんは彼らにとって「Bro」になった。
壁は消し飛んでいた。
わたしはアフロアメリカンの彼らの音の聴き方に、そのあまりの純粋な聴き方、感度の良さに、素直さに、非常にびっくりした。耳から聞こえてくる情景を、腹の底の腑に落として、目に見えるものより、あるいはマインドより、遥かに信頼して信用している。その様子を、とても驚いて見ていた。
と、同時に、わたしにhip-hopを理解する素地がなかったから、j-hopeくんのhip-hopの力量がこんなにも高いものだったというのを、ここで初めて知ったのだった。リズムトラック、声の器楽的な使い方、幅広い声質のレンジ、独特のコード進行、どれも面白いと思っていたけれど、「西洋音楽」の文脈でわたしは聴いていて、これらがhip-hopをどれだけ研究し尽くして至った到達点なのか、hip-hopとしてどれだけクオリティが高いのか、全然理解出来ていなかった。
ここまででj-hopeくんの書いた詩は終わる。
ここまでで彼は、まず「感謝」をバースのテーマに持ってきていた。そしてそれは「thank」というありきたりな言葉で説明されるものではなく、「祈り」で返す、という姿勢。彼の持つパワーは、マッチョに誇示するのではなく、「蝶」で表現する。
ここでトータルで受け取る心象がある。とても普遍的で、ハイトーンの「やさしさ」だ。その「やさしさ」を、アフロアメリカンの男子たちはちょっと意外に思って、そして新鮮に受け取って、歓迎した。
そしてJ.Coleに続く。コーラス中ちらちらと、だんだんとはっきり、隙間に映るのが、彼らの期待を盛り上げる非常に良い効果だったみたい。
e.バース2
ここで彼らが“神”と呼び、“誰のトップ10にも必ず入る”、人々が心の奥に大切にしているラッパー、J.Coleが登場。その登場と、最初の3行で、リアクションする特に若者たちは、軒並みノックアウトさせられていた。
Coleだ…
この韓国人のやさしい、ノスタルジックなバースに、Coleが何を乗せて成立させるのか、予測がつかなくてどきどきしていたに違いない。
わたしはJ.Coleさんに対して全然素養がないので分からないのだけど、この最初のフレーズで打ち抜かれる彼らの感動っぷりに、すごく胸が掴まれた。彼の来歴と合わせて、これまで語ってきたことを全部ひっくるめて、彼らは感動している、「これは俺に語りかけている」と、みんながそういう思いで聴いているのが、とても感動的だった。
詩のインパクト、そして韻が踏まれていることで生まれるインパクト、
彼らは自分で口ずさみ、1行ずつ理解して、詩がダイレクトに心臓に刺さるのが、その効果は「韻」によって倍々で掛け算されているみたいだった。今目の前の画面から発せられているJ.Coleの世界を、余さず、全部、自分に飲み込んで、それを受け取った状態の自分に、変容させていた。
すごいと思った。
なんて深く、最初の初視聴から、詩を聴く人たちなんだろう。
それがhip-hopだったのか。
All hail the mighty survivor of hell,
Plopped down from heaven to sell
Holy water that I scooped from the well
Fought tooth and a nail,
Just to prevail mongst it’s ruthless
As I move through the field
まあ、ちょっと分からないので適当なんですけど、彼らが言うには、文末で韻を踏んでいるだけじゃない。中間でも踏んでいる。その感じが、
「As I move through the filed」は、J.Coleさんのちょっとわたわたしたこの動きが、戦場で兵士がいっぱいいて、弾も落ちて、地雷も爆発して、どっちに行くのが正解なのか、と、そういう状況か!と、わたしは合点しました。ので、そういう雰囲気の訳にしました。
「聖水」のくだりではhip-hopの他のアーティストを想起する人もいるようでした。「アワードのステージで、悪魔の召喚儀式をやるような、魂を売っちゃったラッパーと違って、彼だけは魂を売らなかった数少ないラッパーの一人だ」。純度の高い言葉、この人は真実を語る人だという信頼。彼は自分たちと同じ目線に立っている人だ、という信頼。そして、「彼には捨て語がない」「発音が違っていたら、それは計算されている」「完璧に詩が構築されている」、そういう、ラッパーとしての実力に対する信頼。
その優れたラッパーが、音楽業界でどのように生きてきたか、という景色であるらしい。わたしにhip-hopの素養がないのが返す返す残念だが、J.Coleさんのラップが、つまりどういうものであるか、どういう人で、どう影響を与えてきたか、彼らのリアクションを通して初めて少し理解した。hip-hopに含められた、彼は良心だ。彼は自分に対して謙虚である。J.Coleという人の真実味と謙虚さ。
この「謙虚」が、MV全体の背景についても言及されていた。「このMVは謙虚だ」。特別な、高級な、ゴージャスな、きらきらした、気取った、が一切出てこない。富を、ステイタスを顕示するものが、確かに出てこないのだ。「路上」にいた元少年が、「路上」で聴いた音楽を、「路上」にいる人々に語りかけている。上から見下ろして、また何かを見せびらかして、また何かを羨ましがらせているのでも、目的や競争を意識させるものでもない。すでにあるものを温かく思う、謙虚なMVだ。
実際には、「これニューヨークに見えるけど」「ニューヨークに混雑していない道路は存在しない」「地下鉄も」「ど ん だ け の 予 算 組 ん で ん だ」ということであるらしいが。「BTSはバスケットチームに多額の寄付をしたので知ってる。なんか…目玉が飛び出る額」「そうかよ。彼らは桁違いなんだろ、分かってるって」。
ここの韻も見事であるらしい(※和訳修正しました!)。わたしがかろうじて理解できたのは、「train of thought」で考えが列車のようにつながっているものを指すのだろうが、次のセンテンスで「derail(脱線)」、リンクした言葉を選んでいるのが面白いんだな!と思いました。
「n****」は差別用語ですが、公式の歌詞には単語入ってますね。あとアフロアメリカンの男子たちは、すごく言う。自分たちが自分たちに言うのはマルとのことですが、あまりに頻回に普通に言うので、え?常用語になった?と思ってしまった(注:違います)。「俺らの仲間の、この男」みたいなニュアンス。
「2 minute drill」がアメフトの速攻の技法の一つらしいんだが、そこでも「くっ、はーー!!!!」となっている人を散見。なんか、あるのかな。そのシーンになると盛り上がるとか、興奮するとか、手に汗握るとか。その言葉で良く伝わる体感が。
「最高に頭のいい友達が、死ぬほど馬鹿なんだけど」でやっぱりくすっとしたり、大笑いしたり。彼らは、画面を通してラップと普通にコミュニケーションを取っている。と、そう見える。
ここでは、「俺に分からないなら、それは無い」、と言い切る人間が取り上げられている。その続きの、人知を超えた采配についてのセンテンスで、目を潤ませてこくこくうなずく人もいれば、「俺は…違うと思う(神はいないと思う)、でもあんたの言いたいことは分かるよ」という人もいた。
ここで、「え、ちょ、ちょっと待って」と、人々がなる。「うそうそ」「別の趣味なんて言わないでよーー!!」
この、「花嫁の娘を見送る父親」に、深く心を震わせて、それが韻でさらにずきゅんずきゅんと深いところに刺さって、それが痛いほど分かる。良く見知った、特に男性にとって実感のある、ひりひりする、抉られるような、そして耐えなければならない心の痛み。なんてこった、ああ、なんてことを言うんだ、
そして、「無理無理、そんなの心の準備できてない」「え?これは…Coleの引退宣言なの…???」。
「ほっ…良かった…う、わあああああ=======!!!!!」と、ここで感情爆発の男性陣。「Golden Corral!?」「Golden Corral!!!!!」
あんまり良い写真が見つけられなかったんだけど、No.1ビュッフェのチェーン店らしい。食べ放題。スーパーみたいに広いな。時間帯によって価格が違うようだ(facebook)。
ここまでで感情もみくちゃにされている彼らたち。
最初は、この訳は、「お前がトップ10のリストを見る間、俺は食べ放題で何を食べるか迷ってる」、ということなのかと思っていました。心のトップ10に入るアーティストが見せる生活感。
しかしリアクションを再度見てみるうちに、「誰にでも食べられる」、難しくない、高尚じゃない、イージーで安易に理解できる、そういう、チープな言葉の羅列でできたラップ、という意味なのかな、と思ってきました。
あるいは、ちょっとリアクターの方の英語が聞き取れなかったのですが、取ったビュッフェは結局ごちゃ混ぜにして食べる、「俺はあいつらまとめて簡単に食える」という、ちょっとしたディスりなのか。
ゴールデンコラールの評価が分からないので、いまいち確信がないのですが、もし好意的な意味で、彼の食事が食べ放題ビュッフェだということなら、アーティストの成果物が、簡単に指先で、軽い気分で消費されることを知ってるよ。俺はお前と同じもの食ってるよ。そういう1行になるかもしれません。
そして、まさかJ.Coleがチェーンの食べ放題なんか行かないという場合、「お子様でも満足」、皆んなが大好きなトップ10は、俺が満足するレベルのラッパーじゃない、(幼稚…)と、そういうニュアンスかもしれません。
「As the moon jumps over the cow」、これも笑うところみたいで。この解釈で合っているか分かりませんが、「Hey Diddle Diddle(wiki)」という童謡に「The cow jumped over the moon」という歌詞があって、転じて「over the moon」がきゃぴきゃぴ騒いで楽しい様子を表しているんだそうだ。
ここでアフロアメリカンの男子たちは、喧々諤々に解釈を述べ合いますが、多分、その中の一人は、きゃぴきゃぴの逆、「冷静になって考えた」という意味だと理解しているように見えました。月が牛を飛び越えるのは普通だからね。「落ち着いて」、あるいは「夜通し」、音楽を続けるかどうか、この王冠を誰かに譲るかどうか、考えて、
もうしばらくこのまま続けるよ
俺の飢餓は人と違うところにあるみたいだ
食べれば食べるほど飢餓が強くなる
もっと欲しいものがある
求めるものがある
今だからこそ、もっと先にやれることがある
今まで得られた目的とは別のタイプの何か
それをするためなら、俺は強くなれる
hip-hopネイティブたちが、ラッパーのラップに一行一行、喜んで、泣いて、怒って、とても喜怒哀楽で反応して、深くシンクロしている。
その間、j-hopeくんのダンスが、見事にその情景をフォローして、彼らの深いところで打ち震えている感動を邪魔せず、寄り添っていた。
「the more」と「gets stronger」が繰り返されるくだりは、どうやって訳したらいいんだろう…と思ったのだけど、「gets stronger」に胸を打たれているリスナーの彼らを見ていると、やっぱり握り拳をあげて力瘤を作るようなポーズをするので、「俺にはパワーがある!」「そうだ、その通りだ!」という気分を、わたしは受け取った。ゴールデンコラールで好きなだけ食べても、食べれば食べるほど飢えている。この飢えは、手に入れるものが大きくなればなるほど、生まれる、新しい満たされない部分。どこまで行っても満足しない。諦められない。俺はそういう変わったタイプみたいだ。
j-hopeくんが、くいくいと誘う。trainに乗って、地下から出て、地上に出て、屋上へ、高いところへ、Coleのところへ、一緒に行こうぜ。
ここで、最も基本の、わたくし存じ上げなかったんですが…
アルバム『Cole World』が先!
ミックステープ『Hope World』が、後だったんですね…!!!
もっと強くなる。登れば登るほど、まだ自分にやるべきことがあるのが見えてくる。それが自分を強くする。
耐えられる。
j-hope、君もそうだな?
f.コーラス
そしてすでに聴いたはずのコーラス。
こうなってくると、すでに聴いて知っているはずのコーラスが、まるで違う意味になる。彼がこれまで進んできた道が、苦労の多い道だったことを知っている。ラップを手放そうかと考えていることも知っている。それは娘を見送るような辛い、でも耐えなければならない意味のある苦さなのかもしれない。
でも、そうであったとしても、自分はやっぱり手放せない。ラップを続けるという苦難の道を、もっともっと、それは俺を鍛える、より強くする。
だから、
俺はこれからも、
いつでも歩き続ける
走り続ける
戦場でどんな風にも動ける
みんなのために見続ける
どんな状況に陥っても人を愛し
希望を持ち続ける
なにがあろうといつもそうする
それはみんなのためならできる
俺はお前がいる路上にいる、今も
J.Coleがラップを手放さないのは、ラップに、それを聴く人々の心を掬い続けることが、こんなにも出来るからだ。その仕事がまだまだ高みへ行く余地がある、と、そう思うからだろう。ラッパーは、つまり優れた詩人は、それを聴く人々の中にある言葉にならない怒りを、寂しさを、苦さを、絶望を、ユーモアを、愛を、汲み取って、目の前に広げて見せる。
そうだ、これは俺の話だ
そして、それを広げて、一段別の高みへ持ち上げる。
その瞬間、彼らの苦しみや、苦悩や、困惑や、怒りが癒され、彼らは、美しく、新しいエネルギーを発する。
彼らはこの曲を通して、生まれ変わってる。
そのくらいドラマチックな変化が起きていた。
Coleに、続けて欲しいと望んだ。
だけど、ああ…、彼がこの困難を続けられるのは、俺たちのためだった、
それが苦痛であろうと、すべて味わって、その行動の全て、音楽に変えて俺たちに渡すことが出来るからだ、
そう思って、彼らはColeの存在全てが愛情であるのと、その引き受けた重い覚悟を、
人生の苦味と、深い多幸感を、
ただただ心地いビートに浸されたまま、
深いところでこれ以上ないくらいに受け取っていた。
for usではっとする目が、すごかった。
usは確実に自分たちだ。だけどj-hopeとJ.Coleがusというなら、二人のバックグラウンドにある人々、ブラック、イエロー、その他限りなく全部が「俺たち」になる。
いきなり世界がぶわっと、彼らの目の前に広がるの見えるようだった。
そして、それを実現させたのはj-hopeだ。
このコーラスを書いたのは、j-hopeか。
J.Coleにバックコーラスを歌わせているのも。
この愛を、媒介して、俺たちに届く形にしたのは、j-hopeだった。
一番最初のコーラス部分で述べた、シンプルすぎるくらいにシンプルで、「普通」、そして「うつくしい」言葉で作られた、何の嫌味もないメロディが、ただ心地よいビートに乗せられているのが、
シンプルだからそこ一回で覚えたメロディーが、シンプルだからこそ曲の終盤で、ものすごく広い大きな感情を、J.Coleからのギフトを受け取ってなお、変質させずに支え、ハピネスをより高める。
彼らはその価値を深く味わっていた。
おわりに
この曲を通して知った、彼らの音楽の聴き方は本当に新鮮だった。
J.Coleのバースで食い入るように見る目。全部丸ごと取り込んで、深く同意する聴き方。リズムトラックが感情と気分を与えると書いた。そこにライムで刻まれたリリックが、脳内に直接だーんだーんと打ち込まれて、すごいドーパミンが出てる状態で、恍惚感と一体感を味わう。今、お前の言ってること、俺はすっかり分かってる。その「分かっている」を共有している、「hole」の感じ。一体感。
hip-hopってすごいなあ…と思った。
最後に握手をするJ.Coleとj-hopeを見て、本当にみんなが幸せそうな顔をするんだ。感謝。自分たちはとても美しい感情を味わった、という。
最も歌詞を聴く人たち。リズムに込められた感情を聴く人たち。j-hopeくんが一番聴かれたい人たちはhip-hopの人たちだったかもな、と思った。彼のクリエイションを最も深く理解し、最も評価できる人たち。
少年ホソクが光州の路上で踊っていた時、hip-hopを聴きながら頭に描いた景色は、まさにMVの映像と同じものだったんじゃないだろうか。この音楽が作られた場所、ニューヨークの路上で踊るような時が来るだろうか。まさかJ.Coleとのコラボで?道路を通行止めにして?まさか!
思いの確かさと、
堅実さと、
ブレなさが、
ものすごいな!!!!!
【on the street】の中にある、当時の音楽の気分。それを光州で聴いていた少年には、今のような苦悩は何一つなかったろう。
辛くても、困難でもこの道を行ける、
いつでも、
それがみんなのためなら。
その、幸せな、古き良きスタイルのビートの上で、二人が語ったこと。それがとてつもなく重い覚悟で語られているのが、聴いている側にほとんど同じ分量で伝わっている。
それがhip-hopだった。
ということで。
それでは、また!
(※2023.3.21追記)
…よく分かる!わたしが今回のnoteで知識や認識がなかった部分について、とても丁寧に説明されておりました!j-hopeくんがJ.Coleを聴き始めたのは練習生になってからだったんですね。
ところで、番組収録でon the streeet、他の曲でのダンサーも含め、本当に90年代の衣装だった。あのくすんだ重たいカラーよ!髪も皆さん黒かったしな。weverseの公開直前ライブで着ていたネルシャツも、本当、あれ、ああいうの(Right Onとかジーンズメイトとかで売ってる方のやつ)、高校生大学生みんな着てたのよ…特にあの色…!
参考動画
j-hope 'on the street (With J. Cole) | FIRST REACTION
j-hope 'on the street (with J. Cole)' Official MV *REACTION*
j-hope 'on the street (with J. Cole)' (REACTION)
J. COLE FAN REACTS TO J. HOPE 'ON THE STREET' | COLE WORLD!
OMG J. COLE & BTS J-HOPE?! | j-hope 'on the street (with J. Cole)' Official MV (REACTION)
J Hope on the street 🔥 🔥 ❤️🔥❤️🔥with J Cole official MV IS THIS THE END
J COLE LEFT EARTH!! J-hope 'on the street (with J. Cole)' Official MV REACTION!!!
j-hope 'on the street (with J. Cole)' Official MV |BrothersReaction!
J. COLE WENT AT YA TOP 10 RAPPERS! | j-hope 'on the street (with J. Cole)' (REACTION!!!)
BTS ARMY I OWE YOU AN APOLOGY! j-hope 'on the street (with J. Cole)' Official MV
RAP GROUP Reacts to j-hope 'on the street (with J. Cole)' FIRST TIME REACTION! W/ VETLYFE
j-hope 'on the street (with J. Cole)' REACTION
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