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柳家喬太郎×田島貴男 ペルソナとソウルの粋な戯れ「一期一会」

…というFM COCOLO主催のイベントに行って来ました!落語家とミュージシャンとのコラボ、いったいどのように絡むんだ(-ω- ?)と?マークが頭の中を飛びかってましたが、終わってみればこれが素晴らしく融合していて大変良かった!会場はZeppダイバーシティ。今回のライブは配信もされるため、最前列と次の列を撤去して本格的なカメラが設置されていました。
 
座席について舞台に目をやると、上手(かみて)に高座が作られていて、下手にはギターが置いてあり、座って弾き語りするらしきステージング。落語の舞台らしく"めくり"もあってそこには『一期一会』の文字が。とりあえず田島さんが先にパフォーマンスするだろう、ということは想像出来たのですが、その後のコラボの展開は想像出来なかった!!まずはお二人が漫才コンビのように揃って舞台に登場。喬太郎さんの青い羽織が鮮やか。ここでの出囃子が落語で使われる感じの三味線とかで演奏された「接吻」で笑ってしまった!超レア!(笑)

そしてお二人のトーク。田島さんが一人で弾き語りの舞台をするようになった頃に喬太郎師匠の寄席を観て喬太郎さんみたいに弾き語りしたいと思った、とか、場の作り方がすごくて尊敬するに至った、などまずは田島さんが喬太郎さんのファンになった経緯などを説明。それを聞いた喬太郎さん、音楽やってるのになんで落語を参考にするの!みたいに突っ込んでたのが面白かった(かなり照れ隠しもあっての突っ込みかと想像)。なのにここで田島さんがまさかの喬太郎さんの年齢を知らないことが判明!

聞けば喬太郎さんは田島さんより3つ歳上だそうですが、白髪で貫禄もありかなり歳上に見えます。これはやっぱり落語家とロックミュージシャンというジャンルの違いかな、と。つまり、落語って高座に上がるのに若ければ若いほど観客から舐められる確率が高くなると思うんですよね。寄席に来るのは男性が多いだろうし年齢層も高いだろうから、その中でいつまでも若手っぽくヒヨっこのような見た目だと不利なんではないかと思われます。ミュージシャンだと若く見られることが有利に働いても、落語家では逆かと。なのでお二人はそれぞれがそれぞれのジャンルにおいてプロフェッショナルなんだな、と見た目からもわかる気がするのでした。

と、話がそれましたが(今回かなり長文のライブレポートになる予感)、次の演目は田島貴男による弾き語り。まずはリゾネーターギターをスライドさせたりしながらハワイアンの曲を。それがちらっとではなく結構長めだったので、何か意味があってやってるのかも、と思いました。全部を観終わって思うに、あれは落語でいう"枕"だったのかなと。いきなり本題に入らずに今回のイベントに合わせ場の空気を作る、ということをしたのかもしれないなあ、と思いました。ハワイアンということも後々答え合わせのようにわかってくるのですがそれは後ほど。

1曲目はリゾネーターギターで「フィエスタ」、続いてアコースティックギターに持ち替え「遊びたがり」(これがゴキゲンな演奏で良かった!)、さらにジャズギターでの「接吻」と続きましたが、めちゃ雰囲気のある「接吻」が奏でられているこの同じステージには座布団が置いてあるんだよな、と思うとちょっと可笑しかった(笑)と、次に「喬太郎さんと同じステージに立てて夢のよう」だというMCがあってから「築地オーライ」に。おお、これは座布団とも合う曲だぞ!と思った私。

下町の粋を歌うこの歌の途中、田島さんの歌が歌というよりは語り口調になり始めました。そういうことはたまにあるのでそれかな、と思ったけど、どうやらいつもとちょっと様子が違う。なので「?」と思いながら注意深く聴いていると、「おっ、喬太郎の寄席がやってるから入ってみるか」というような語りがあり、「歌が聴こえてきたぞ」と…そこでようやく「え?!まさかのここで喬太郎師匠が登場するの?!」と気付いたのでした。

田島さんの振りにこたえてステージに現れた喬太郎さんはマイクを持ってゴキゲンな感じ!ここで喬太郎さんはご自身の持ち歌「東京ホテトル音頭」を披露!私はまだこのとき喬太郎さんが歌を出していたことを知らなかったので「歌も歌うんだ!」とびっくり!(何年か前に『スプリング、ハズ、カム』という演劇で喬太郎さんを観たことあるので、いろんなことをやる人だとはなんとなく存じ上げてはいましたが)。時事ネタも盛り込んだこの歌に会場はやんややんや、と大盛り上がり!!喬太郎さんが歌ってる間は伴奏者に徹した田島さんもまたレアな姿でした。

途中おしりをフリフリしたりと楽しげに一曲歌い上げた喬太郎さんが舞台からはけると、田島さん、最後はアコースティックギターで「Bird」を。穏やかな曲で舞台をリセットした感じになったところで続くは喬太郎師匠の出番!テレビで喬太郎さんの落語を観たことあるけど生ではお初なので超楽しみにしていました。だけど歌い終わった田島さんが下がるかと思いきやなぜか舞台に留まったまま。さらにリゾネーターギターを手にするじゃないですか!「?」と一瞬思ったのですが「そうか!」と気付きました。最初の「接吻」の出囃子がヒントになりました。田島さん、喬太郎さんの出囃子をやるつもりなんだ!と。

後から知ったことですが喬太郎さんの出囃子は"まかしょ"という曲らしいです。それをまさかのリゾネーターギターで演奏!ここも超レアでめっちゃ盛り上がりました。出囃子が終わったあと「空前絶後の出囃子!」と喬太郎さんが感想述べてたのも面白かった!いやー、めちゃくちゃレアなもの観た!!( 写真は田島さんがSNSであげてた"まかしょ"のラフな譜面)。

さてさて、ここからはいよいよ喬太郎師匠の高座。待ってました!おそらく田島ファンが多めだったかと思われる今回の客席。会場自体もライブハウスだし、いろんな意味でアウェーだったであろう喬太郎さんは、実際そう思ったのだとも思うけれど田島さんのことを「めちゃめちゃカッコいい!」、挙げ句の果てに「抱かれたい」とも言って褒める!(爆笑)田島ファンとしてはそう言われて当然嬉しい訳で、完全に田島ファンも自分の味方につけた喬太郎さん。さらに少々くだらないネタで場をほぐしたところで、急によく通る声で狩猟者(?)に成りきって荒っぽい感じで言葉を発しはじめました。

その突然の大声にびっくりした私、「あれ?Σ( ゚Д゚)本題始まった?!」と思いました。ところがなんてことはない、近頃の濃厚接触の話題をうけての、濃厚と農耕とを掛けたネタだったようです。急に大声を出されたことで鳩が豆鉄砲くらった感じになったのですが、これは喬太郎さんの狙いだったのかもしれません。今までのムードが完全に立ち切られ、いよいよ喬太郎師匠の噺が始まるんだ、という感じがしました。

羽織をスッと脱いで本題が始まると、今回の演目はどうやら新作落語らしい。舞台は上越高田。登場人物はおじいちゃんと孫娘(この時は知らずに聴いていましたが、この落語は「布哇(ハワイ)の雪」というタイトルだそう。ここで最初の田島さんのハワイアンとが点と点でつながるわけです)。熱々で飲めないくらいのお茶をおじいちゃんに出したりもするけど、おじいちゃん想いの孫娘と人の良さそうなおじいちゃんとの会話がテンポもよく面白い。

お話の内容としては、おじいちゃんがかつて結婚の約束もした幼なじみのちーちゃんの家族から突然おじいちゃん宛にエアメールが届くところから始まります。ちーちゃんはおじいちゃんとの結婚の約束を破り、ハワイへ移住して他の人と所帯を持ち暮らしていましたが、その手紙はちーちゃんが間もなくお迎えも来ようという状態だということを知らせるものでした。最初こそちーちゃんになぞ未練はない、と言ったおじいちゃんでしたが、とある手段でおじいちゃんと孫娘はハワイ行きの切符を手にすることになり…といったお話。

お話の内容も面白いんだけど、言葉のチョイスもめちゃくちゃ面白い!"越後のトビウオ"とか、"高田のサルスベリ"とか、それどういう意味?!っていう(笑)かと思うと、葛籠(つづら)とか行李(こおり)とか古典落語で出てくるような単語も。熱々のお茶を飲むときの所作もさすがだし、おじいちゃん役になるときは総入れ歯で話しているような話し方も本当におじいちゃんに見えてすごい!まさに"ペルソナ"。演技力半端ないなあ、と思いました。

しかし今回観て喬太郎さんの何がすごいと思ったかって、その場の作り方!田島さんも最初のトークでそうお話していたけれど、おそらく喬太郎さんはその時の客席の空気を自在に操ることが出来る方なんだと思います。そういうのを今回目の当たりにして、喬太郎さんて本当にやべーな!と思ったと同時に、落語の無観客なんてやっぱりあり得ないな、と思いました。こんなご時世で簡単に無観客って言うけれど、観客がいることではじめて芸事って成り立つんだなあと思いました。

ラストシーンはおじいちゃんとちーちゃんとの再会を祝福してか珍しくもハワイに降る雪をバックに繰り広げられ…喬太郎さんが仰ぐ天からは本当に雪が降ってきているかのように見えました。と、ここで途中から高座の横でスタンバイしていた田島さんによる「プライマル」の演奏が始まりました。この曲には「夜明け過ぎの 2月の雪」という歌詞がありますが、そこを"ハワイの雪"と歌い替えての演奏。田島さんが歌っている間もずーっと喬太郎さんは役に入ったままでした。いやー、すごいもの観た!

喬太郎さんの噺は笑いも満載なんだけど、最後にはホロリとさせられ、マスクに涙が染み込み…。ちょっと今後「プライマル」を聴く度にこの時のことを思い出してしまいそうなくらい、めちゃくちゃ良かったです!本編がすべて終わって喬太郎師匠と田島さんが前に出てきて二人で挨拶をしたところで舞台装置から雪がパアッと舞ったのですが、それをなんだか夢のようにぼうっと眺めていた私でした。 

↓その時の様子がYouTubeにあげられてました!雰囲気伝わるかと。(2021.8.29追記)

…というわけで今回の公演は驚いたり笑ったり泣いたりと忙しく、こんなにあわただしく感情が動くこともそうそうないな、と思いましたし、忘れられない一夜となりました。落語も音楽ライブも本当に良いものですね…!以上、長くなりましたが「一期一会」のライブレポートでした!

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