トレーダー。犯収法について
richmanbtcです。
今回、おそらく犯収法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)が関係しているだろう事象に遭遇しました。ノイズ情報も含まれていますが、自分で見返したときに思い出しやすいので、そのまま書きました。見出しには、口座凍結からの大体の日数を書いています。2021年初旬の出来事です。
突然の口座凍結 (day 1)
ある日、国内取引所から海外取引所に仮想通貨を送ろうと思ったら、送金制限がかかっていました。すべての仮想通貨と日本円に出金制限がかかっています。同じように送金制限がかかっている人をぐぐりましたが、居なかったので私だけのようです。後で気付きましたが、これは口座凍結というものです。
国内取引所には3億円以上入っていました。
問い合わせ1 (day 1)
取引所に問い合わせたところ、2ヶ月前くらいに送ったメールに回答していなかったから制限したとのことでした。メールの質問項目は、取引目的などでした。
メールに返信して、待ちました。待てば解除されるだろうと考えていたので、その後も5000万円くらい入金しました。後で考えると入金は愚かな行動でした。
問い合わせ2 (day 8)
一週間経っても解除されなかったので、再度、取引所に電話で問い合わせました。なにかの法令により出金制限している。詳細は教えられないとのことでした。たまたま住所変更を忘れていたので、そのせいかと聞きましたが、それは関係無いとのことでした。
金融庁などに相談 (day 8)
金融庁、国民生活センター、JVCEA、finmacなどに相談しましたが、解決されませんでした。
利用規約の確認 (day 8)
資産が戻ってこないリスクを見積もるために、取引所の利用規約を確認しました。利用規約上は、戻ってこないリスクはそこそこあるような気がしました。
犯収法を見つける (day 9)
いろいろぐぐっていたら、犯収法というものを見つけました。
メールで聞かれた項目は第4条の項目でした。第5条で、質問に答えない場合は、義務の履行を拒めるとされています。第8条で、疑わしい取引の疑いをかけていることや届け出をしたことを、顧客に伝えてはいけないとされています。問い合わせても、何も教えてくれないことと整合します。
おそらく、疑わしい取引の嫌疑をかけられていると推測しました。疑わしい取引は通称ウタトリと言うらしいです。
交渉のための電話 (day 9)
疑わしい取引の届け出をされたくないので、交渉のために電話しました。
こちらからもっと詳細な情報は提供できる。法令に基づいているとしても、1週間以上、3億円以上の資産を明確な理由説明なしに凍結されている。もう少し長引いたら訴訟を検討していることを伝えました。
訴訟について言及するのは言い過ぎたかなとも思いました。心象が悪くなって疑わしい取引にされる可能性が高くなるかと思いましたが、以下の判断例を見たところ、プラスに働いた可能性もあると思いました。
>捜査に備えて、同行で対象口座の1つを凍結した。40万ドルの残高があったが、口座保有者からは強硬な抗議はなく、彼らの弁護士も行動を起こさなかった。
刑事事件の弁護士に相談 (day 9)
犯収法を読んだところ、顧客に刑事罰が発生する可能性もあるみたいです。
刑事罰にならなくても、疑わしい取引の届け出がされた場合、必要に応じてその情報が国税や検察などに共有されるみたいです(第十三条)。
終わった。銀行口座とか作れなくなるのか。とか思いました
刑事事件専門の弁護士事務所を検索してお問い合わせしました。すでになにか犯罪をおかしましたか?と聞かれました。まだです。と答えました。
吐きそうになりました。1日で1億円失っても平気ですが、社会的に信用を失うリスクは怖かったです。タクシーで行ったので車酔いかもですが。
弁護士に相談したところ、私が刑事罰になる可能性は低いだろうとのことでした。安心しました。
取引所に登録してある資産額と年収を最新のものにする (day 9)
取引所のウェブUIから、資産と年収を最新のものに更新しました。更新前はどちらも100万円以下でした。100万円以下の人が1億円以上のお金を動かしていたら、疑いたくなる気持ちもわかります。
補足情報をメール送付 (day 9)
疑わしい取引の届け出をされたくないので、補足情報をメールで送りました。
資産と年収をどうやって稼いだかの詳細を書きました。
自動売買や海外取引所を使ったことも書きました。犯収法で問題となるのは、多分、虚偽や口座の貸し借りです。海外取引所は印象が悪いですが、多分、犯収法的には問題とならないのではと思います。
最初の質問メールが送られた付近の取引を詳細に説明しました。
定期的な海外からの入金は、海外取引所の利益を定期的に送っていると説明しました。
確定申告書を送りました。必要であれば全取引データも送ると伝えました。
法人口座から出金 (day 9)
巻き添えを喰らいたくなかったので、同じ取引所に開設していた法人口座から資産のほとんどを出金しました。
弁護士に相談 (day 10)
資産を取り返す方法について別の弁護士に相談しました。
経験上、すぐ動いたほうが良いとのことでした。訴訟をおすすめされました。実行前に取引所からメールが来て進捗したので、アクションは実行していません。
取引所からメール (day 11)
初めて取引所から返信が来ました。
なぜか、UIから住所を変更できなかったので、その旨を伝えていたのですが、再度試してみるように指示されました。再度試したらなぜか変更できました。
今まで先方からの連絡はありませんでした。推測ですが、疑わしい取引の嫌疑をかけている場合、連絡を取らず、お問い合わせがあっても一切情報を伝えないような運用になっているのではないかと思います。
先方から返信が来たということは、疑わしい取引の疑いが晴れたと推理しました。
出金制限解除 (day 13)
出金制限が解除されました。
ネット情報だと、出金制限が解除された事例を見つけられませんでしたが、シロなら解除されるケースもあるということです。
出金完了 (day 14)
資産のほとんどを出金しました。実行に1日かかりました。実行までの時間が長くて、少し不安になりましたが、額が大きいからだと思います。小さい額のテスト送金はすぐ実行されました。
結局、なんだったのか?
以下、推測です。
最初の取引目的確認メールが届いたのは2021/01/01の深夜でした。タイミング的に自動送信だと思います。
このメールは以下のようなものをトリガーとして送られたのではないかと思います。
・取引所に登録していた資産額と実際の資産額の乖離が大きかった (100倍以上)
・前月の入金額が大きかった (BTCで1億円以上相当)
メール返信の期限は一週間に設定されていましたが、2ヶ月以上回答がなかったので、口座凍結したのではないかと思います。
自主的に送った確定申告書などの追加情報や、訴訟について言及することが、凍結解除を加速させた、または、本来凍結解除されないフローに入っていたものを覆したかどうかはわかりません。特に何もアクションしなくても、待てば凍結解除されていた可能性もあります。
疑わしい取引の届出がされたかどうかはわかりません。
トレーダーが気をつけること
犯収法違反をしない。
具体的には、取引目的を聞かれたら、すぐに虚偽なく答える。口座の共有、貸し借りをしない。
発端となった、取引目的を聞くメールは一通のみで催促メールや電話はありませんでした。そのようなメールはフィルターで検知できるようにすると良いかもしれません。以下のようなキーワードを含んでいました。
氏名、住居、生年月日、取引の目的、職業、勤務先、資金の性質、資金源
口座の共有は、親子でもダメという噂もあります。推測なので、全然関係無い理由かもですが。
住所変更や資産、年収、職業の変更はすぐに行うと良いかもしれません。実際、効果があるかわかりませんが。以下の事例では、IPアドレスを見るケースもあるようです。住所変更を忘れていると他の人が使っていることを疑われるかもしれません。
出金制限されたら、最悪ケースを想定して、それ以上入金しないほうが良いと思います。私のようにシロなら解除される場合もありますが、ネット情報だと解除されたケースは見つけられませんでした。
次、同じことが起きたら、初動から民事訴訟で動こうと思います。弁護士にはまず内容証明を送るように勧められました。今回は送る前に解除されたので、送りませんでした。
感想
冤罪になる人の気持ちが少しわかったかもしれない。
自分が悪いことをしてるんじゃないか?っていう思考になってしまった。自分は口座凍結されている、口座凍結されている自分はきっと悪いことをしたんだ。っていう感じで。弁護士と話すとそこがニュートラルに戻った。今まで国内取引所は信用してたから、国内取引所がこんなひどい仕打ちをするわけがない。きっと僕が悪いんだ。トレーダーって汚い仕事なんだって自分を責めてしまった。
20万円が一年で2億円になるわけないだろ、こいつ、なにか悪いことやってるだろ。コンプラ会議で僕の案件をそういうふうに議論している絵が浮かんだ。不良が勉強して100点とったら、カンニングを疑われるような。そういう気持ちになった。
なによりショックだったのは金額の多寡ではなくて、権利侵害された感覚。財産ってかんたんに剥奪されるんだって思った。トレーダーが楽して稼いだお金は凍結して良い。仮想通貨は凍結して良い。そういう考えも浮かんだ。結局僕たちはまだメインストリームではない。本物の富裕層が入ってこないと、この辺の質は上がっていかないのかと思った。
参考リンク
まとめ
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