マインドセットに変化を起こす7つのステップGESTURE
アフターコロナに向けて、皆が変化に適応していかなければいけない時代になりましたね。
これまで新入社員から管理職まで、数多くの方の「変化への適応」に関わってきました。
・学生から社会人への社会的変化への適応
・プレイヤーからマネージャーへの機能的変化への適応
この時、難しいのが、この変化への適応を妨げているのがマインドセットであることが多く、スキルだけでなく、マインドセットも同時に変えていかなければなりません。ですが、マインドセットを変えるのは、結構難しいですよね。
今回は、人材育成に携わる中で、スキルだけでなく、「マインドセットも同時に変えてもらいたい」と思う社員や部下がいたときに、どのようなステップを踏むべきか、私の考えを共有させていただきます。
※自分が学んだ理論と研修講師としての実践を通して得た、現時点での私の知見をまとめたものです。
<STEP0>前提となる知識
①マインドセットとは何か
マインドセットとは、グロービス経営大学院のWEBサイトによると、
経験、教育、先入観などから形成される思考様式、心理状態。暗黙の了解事項、思い込み(パラダイム)、価値観、信念などがこれに含まれる。
とあります。
類似の言葉に「メンタルモデル」があります。研修の中で概念を説明する時には、メンタルモデルをよく使います。厳密には、これらの定義は異なり、マインドセットの方が広い概念かなと思いますが、それほど大きな問題がないので、いまのところ、だいたい同じ意味で捉えています。
②人が抱える2種類の問題
ハーバード大学でリーダーシップを教えるロナルド・A・ハイフェッツ教授によると、人が抱える問題には、2種類の問題があります。
「技術的な問題」と「適応を必要とする問題」
「技術的な問題」とは、解き方が既にわかっている問題のことであり、
「適応を必要とする問題」とは、既成の手段では解決できず、実験的な取り組みをしながら、自らの思考様式を変容させることでしか解決できない問題のことです。
例えば、営業が「うまく自社商品を説明できない」という問題を抱えている時に、「商品知識を増やす」「先輩の営業トークを覚える」などの手法で解決できるのであれば、技術的な問題です。一方、「営業とは相手を騙してでも納得させて商品を売ることだ」と考えてしまうことで、商品説明の際に罪悪感を感じていることから、「うまく言葉が出てこない」「過度に緊張してしまう」という場合には、適応を要する課題となります。
上記の例のように、問題の真因は異なるため、人の成長を考える場合には、この2つの問題を分けて考え、いま解決したい問題がどちらの問題なのかを見極める必要があります。ハイフェッツ教授によれば、この見極めを失敗して、解決できずにいる人が多いようです。実際に、営業で成果が出ない部下への指導において間違って指導している人も結構いるんじゃないかと思います。
そして、マインドセットを変えるというのは、当然「適応を要する課題を解決する」ということです。
では、どのようにすれば、マインドセットが変わっていくのでしょうか。
そのステップをご紹介します。それぞれのステップの英単語の頭文字をとるとGESTUREとまとめることができました。
<STEP1>Goal(成長した姿をイメージする)
まずは、成長してもらいたい対象者(以降、学習者と呼ぶ)に、どのように成長してもらいたいのかをイメージします。1人1人個性が異なるので、皆と同じ姿を目指す必要はありません。
と同時に、学習者自身はどうなりたいと思っているのかを確認し、成長後のゴールイメージをすり合わせることが第一歩となります。
<STEP2>Edit(体験を編集する)
次に定めたゴールイメージに到達する上で、できるようになる必要があり、かつ、獲得すべきマインドセットを備えていないと成功できないような体験やプロジェクトに編集します。
人は、いくら言葉で課題を指摘されても、本人が課題だと認識しない限り、人はピンときません。そのため、自分で課題認識をできるような体験を編集する必要があります。
ただ、研修では体験を緻密に設計する必要がありますが、普段の仕事の中で変化をつくるのであれば、「目標設定を見直す」「役割を与える」「仕事の仕方に制限を加える」などの方法だけで大丈夫かと思います。
<STEP3>Safe(心理的に安全な場をつくる)
マインドセットを扱う、ということは、人の内面のデリケートな部分を引き出さないといけないので、そのためには、心理的に安全な場をつくることが大事です。本音を語ってもらえないような関係性であれば、内面的な話はしないと思います。
まずは、いまうまくいかない原因を、本人がどのように捉えているのかに耳を傾けること。他責でもOKです。
<STEP4>Try(スキルでの解決を試行錯誤する)
いくらうまくいっていないからと言って、「お前の考え方がダメだ」と言われても納得しないと思います。なので、まずは、ひたすらスキルの向上に努めます。もし、スキルが向上することで成果が出るのであれば、技術的な問題だったということです。その場合には、意味もなくマインドセットを変える必要はありません。反対に、どれだけスキルが向上しても成果が出ない場合には、「真因はどこにあるのか?」を学習者と一緒に考えてあげましょう。
<STEP5>Uneasy(原因がわからず落ち着かなくなる)
STEP4まで踏んでくると「色々な方法を試しているのに、なぜ問題が解決できないのか?」「なぜ毎回同じような問題が起きてしまうのか?」と学習者が疑問に感じるようになります。そうなると、学習者自身は、落ち着かなくなり、混乱してきます。そうなると、深く内省できる土台が整ったことになります。
<STEP6>Reflection(内省で、パターンを特定する)
ここからコーチング的に内省をサポートします。なぜ問題が解決できないのか、毎回起こっている自身の行動パターンを探っていきます。
この行動パターンを把握する上で重要なのが、「言動の不一致が生じているのはどこか」「過度に一般化しているのはどこか」です。
人は、日々の経験からの帰納法で学んでいきます。ですが、ステージ、環境、役割などが変わると、長年正しいと信じてきたことが通用しないことがあります。にも関わらず、その考えを新たな環境の中でも正しいとすることによって、問題が生じます。
例えば、「仕事とは、絶対に失敗してはいけない」と考えている人は、絶対に大きなチャレンジはしません。「会議では発言しないといる意味がない。」と考えている人は、間違っていようがとにかく発言します。
どんな考えも絶対的に正しいというものはなく、全ては置かれた文脈次第で正誤は決まりますが、無条件で正しいと信じてしまうと、このような過度な一般化が起こります。
この問題を解決する方法としては、
・コーチング
・Immunity to Change(免疫マップ)
があります。
私は、Immunity to Changeのファシリテーターでもあるので、必要に応じて研修でも使います。
<STEP7>Experiment(新しい行動を実験する)
最後のステップは実験です。自分の行動パターンのメカニズムがわかったからと言って、すぐに行動が変わるわけではありません。自分がこれまでの人生で培ってきた信念にも近い考えを変えていくわけですから、簡単に変えることはできませんし、大きく変えようとすると失敗します。
そのため、大事なことは、小さく1歩目の行動を設計することです。小さな行動と言っても、本人にとっては勇気が必要な行動です。その心理状態をしっかり理解し、共感した上で、1歩目をサポートしていきましょう。
そして、1歩目の行動を踏み出せたら、まずは踏み出せたことを承認し、どう感じたかを振り返ります。それを繰り返すことで、少しずつマインドセットをアップデートしていくことができるのです。
まとめ
ざっくり各ステップの概要だけまとめてみました。また時間あるときに、ステップごとの詳細もまとめてみようと思います。
マインドセットが変わる、ということは、いままでの延長線上の成長から外れることであり、それがブレイクスルーに繋がると考えています。その成長に貢献できることは私の喜びです。
ぜひみなさんも実践していただき、多くの方にブレイクスルーとなる経験が提供するきっかけとなれたら嬉しいです。
読了ありがとうございました。
柳瀬浩之
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