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20240720 俺に姪っ子を可愛がる義理はない

今日は家の近くで祭りがある。だから、実家に姉の家族が遊びに来ている。姪っ子は今年小学生の女の子(以下、Y)と、今年1歳半の男の子(以下、K)。どちらの姪っ子も可愛い。しかし、どちらもうるさい。それは俺の中で共存している感情。俺に姪っ子を可愛がる義理はない。だから、適度に無視をするし、適度に愛でる。

自室のベランダで煙草を吸っていると、母屋の方から母が俺を呼ぶ。「ご飯できたから、みんなで食べよう」。正直面倒くさい。ご飯会場に降りていくと、襖の前にシリコンで出来たゴキブリが落ちていた。お姉ちゃんのYの仕業だろう。驚きはしたけど、声に出す程じゃない。だから、昼食の場に顔を出して「Yが置いたの?びっくりした」とだけ伝えた。Yはニヤニヤして、恥ずかしがっていた。姉は「よかったねー、成功だね」と言っている。全然成功じゃないよ。やるなら俺の肝が冷えるほどビビらせてくれ。

でも、相手をびっくりさせようとするサプライズ精神には素直に関心した。自分本位じゃなく、相手がどう思うかを考えられるって素敵だと思う。そこは俺が最近忘れてた感性だから、ありがとう姪っ子よ。それに感化されて、俺は次タイミングがあったら驚かせてやろうと、自室にあった釣り用の疑似餌のワームをポケットに忍ばせておいた。

シリコンのゴキブリ

昼食をとっている間、Yはずっと喋っている。弟のKは、1歳半だからまだあまり喋れない。「K、ぐんて!ぐんてって言って!」とYが騒いでいる。姉は「ぐんてって言えるの?」と聞くと、「ううん!Kは軍手が嫌いだから!」と言う。姉は優しい反応を示すように「なんだそれ~」と言う。俺は黙々と飯を食う。子供が軍手と言えるかどうかは、俺はさほど興味がないから。

サラダを食べていると、Yは「Yね、歯が沢山抜けたんだよ。1個目は9月とー、もう一個は何月でしょう?当ててみて!」と父親に聞いている。父親は「うーん、いつだろー?」と優しそうな回答。「何月ーー!」と回答を迫るY。黙々と飯を食う俺。俺に回答権がなくてよかった。サラダに入っているブロッコリースプラウトを見ながら思う。

ご飯を食べることに飽きたのかYは、「パパ、スマホ貸して!Yが自転車乗ってる時の動画見せて」と言っている。たぶん、自転車に乗れたときのことを自慢したいのだろう。Yは、父親からその動画が再生されているスマホを受け取って、食卓に置く。食卓についている全員に、観ろと促している。俺は飯が食いたいな。コーンのピザが結構旨いんだよ。動画の内容は、姉の家の近所を、Yが補助輪なしで自転車に乗っているところ。チャリはいいよな。風を感じられて。俺の母親と姉は「すごいねー、1人で乗れたんだねー」と優しく褒めている。俺は2枚目のピザに手を伸ばしている。

Yは次に、食卓にいる全員に、弟のKが産まれてまもないころに、Kに人形で会話をしている動画を見せてきた。俺は「Yがきゃーきゃーはしゃいでる動画だな」と言った。それが俺の素直な感想。あと、いまはご飯が食べたい。母親に「このピザ美味いね」と話す。「そう?」と母親。

俺に子育てはわからない。けど、俺は他者としてそのまま居るだけでいいんじゃないかと、最近は思う。姉も旦那さんも、Yに優しい。Yの起こすアクションに対して、「そうか~!」とか、「そうなんだねー!」と打ち返している。何が正解とかはないけど、俺にそうする義理はない。

昼食を食べ終わって、姉たちは子守りで忙しそうだったので、俺は食事の済んだ食器を片していた。そのとき、Yがふいにお皿を俺に差しだしてきた。そのお皿には、さきほどのシリコンのゴキブリが乗っていた。俺は、大人を舐めるなと思った。だから、そのお皿にのったシリコンのゴキブリをそのまま口に放り込み、代わりにポッケに入っていたワームをお皿に載せて、「お返し」と言った。Yは「え?」と言っていた。俺はそのままYから受け取った皿を、キッチンへ運んで行った。かましてやったと思った。

疑似餌のワーム

意図通りに動かないのが他者だ。Yよ、キミは優しい大人たちに囲まれている。興味をもってくれる大人たちに。だが俺は違う。俺の気を引きたければ、もっと魅力的でなきゃだめだ。もっと命をかけて俺の心を掴みにこい。大人気ないなんて言われる筋合いはない。俺にお前を可愛がる義理はないんだから。

食器を片付けて、居間に戻ると、Yはさきほどのことを姉に話している。「なにこの芋虫ー、気持ち悪いー」姉が疑似餌に反応している。Yは、俺に「にぃに、さっきのゴキブリ食べちゃったの?」と聞いてくる。「お皿にのってるから、食べていいのかと思ってたべちゃったよ」と言う。実際は、キッチンに行ってから吐き出して、しっかり水洗いしてキッチンのテーブルに置いておいた。「うん!食べていいよー」と笑顔で言うY。「おいしかったよー」という俺。大人は嘘つきなんだ。ピザの方が断然美味かった。

その後も、Yはもじもじして、俺と遊んでほしそうにしてたけど、それは言わなきゃ伝わらない。俺は俺のことで頭がいっぱいなんだ。奪いにおいで。俺はYを放って、自室に戻る。俺に姪っ子を可愛がる義理はない。

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