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【伝えておきたいブルースのこと】㉑ワイルドなヴァイタリティ

ヒューストンの泥臭ジャンプ・ブルース

 「ジャンプ・ブルース」(略してジャンプ)も曖昧なサブ・ジャンル名だ。直訳すれば、跳び上がるような、小躍りするようなブルースということになるか。ジョー・ターナーの〈(ウィア・ゴナ)ジャンプ・フォー・ジョイ〉を聴いてみるとその感じがわかるかもしれない。

 ジャンプはリズム&ブルースとほぼ同義語ともいえる。主に1940年代から50年代にかけて生まれた、ブギのリズムをベースにしたブルースで、管楽器がジャズ的ハーモニーを付けるバンド・サウンドが特徴となる。また、30年代から40年代にかけて白人の間でブームとなった「スウィング(・ミュージック)」と対照的な、黒人の楽団による駆動感あるビッグ・バンド・サウンドを指すこともある。

 ジャンプはブルースの定型となる「1コーラス12小節で、トニック、サブドミナント、ドミナントからなる3コードを用いる」ものを主に指す、とすれば用語としてリズム&ブルースと差別化できそうだ。

 ジャンプ・ブルースの代表的シンガーには、ロイ・ブラウン、ワイノニー・ハリス、ジョー・ターナー、エディ・クリーンヘッド・ヴィンスン、ジミー・ウィザースプーン、タイニー・ブラッドショウらがいる。ジャンプには「シャウター」と呼ばれる、声を張り上げて歌うタイプが多いが、ここで上げたシンガーもその系統にある。

 豪放なサックス奏者を指す「ホンカー(ホンク・テナー)」もジャンプに欠かせぬ要素だ。ライオネル・ハンプトン楽団でのイリノイ・ジャケーの〈フライング・ホーム〉がその元祖と言われ、ビッグ・ジェイ・マクニーリーの〈ディーコンズ・ホップ〉、ハル・シンガーの〈コーンブレッド〉、ウィリス・ジャクスンの〈ゲイターテイル〉等が代表的な曲となる。
 ジャンプは都市型ブルースであり、各地で発展しリズム&ブルースへと繋がっていくが、なかでもテキサス州ヒューストンにおけるジャンプ・ブルースは「ヒューストン・ジャンプ」として親しまれている。ギタリストがフロントに立つバンドも多く、荒々しく泥臭い、ヴァイタリティ溢れる豪快なサウンドが醍醐味だ。

 その総大将となるのがクラレンス・ゲイトマウス・ブラウン。彼が1949〜59年にピーコック・レコードに吹込んだ作品はヒューストン・ジャンプのマスターピースだ。ゲイトマウスはTボーン・ウォーカーと同じく、エレクトリック・ブルース・ギターの革新者で、トリッキーなプレイはジョニー・ギター・ワトスンやギター・スリム、コーネル・デュプリー他、多くの追随者を生んだ。その男臭くダンディなヴォーカルも魅力だ。

ヒューストン・ジャンプといえばこの人、クレランス・ゲイトマウス・ブラウン。1950年代にピーコック・レコードに残した作品はヒューストン・ジャンプの最高峰として名高い。その後、幅広い音楽性を披露したアルバムを制作している。

 他に、ギタリストのゴリー・カーター、アルバート・コリンズ、ピアニスト/バンド・リーダーのコニー・マクブッカーもヒューストン・ジャンプの要人となる。

Houston Shuffle - Texas R&B 1955-1966
(Krazy Kat KK 7425) [1984]
本盤はアルバート・コリンズの58年録音を収めた、強力なヒューストン・ジャンプ集

文:濱田廣也

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