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【伝えておきたいブルースのこと】⑳カクテル・ブルースに酔う

ロサンゼルス〜西海岸の洒脱なブルース

 カリフォルニア州ロサンゼルスを中心とした、1940年代後半から50年代にかけての西海岸のリズム&ブルース・シーンは、ルイ・ジョーダン&ティンパニー・ファイヴの成功の影響もあったのか、スモール・コンボの活躍が目立つ。

 1946年から53年にかけてジューク・ボックス/スペシャルティ・レコードから19曲連続でR&Bチャートのトップ10に送り込んだロイ・ミルトン。45〜51年にエクスクルーシヴ・レコードとスペシャルティから合わせて13曲を同チャート10位以内に送ったジョー・リギンズ。いずれもスモール・コンボでの洗練されたリズム&ブルースを聴かせた。前者の初ヒット〈R・M・ブルース〉は、エルモア・ジェイムズのバンドでも活躍したシカゴのピアニスト、ジョニー・ジョーンズが〈ホイ・ホイ〉として録音、後者の〈ザ・ハニードリッパー(パート1&2)〉は、マディ・ウォーターズが〈エヴァンズ・シャッフル〉に改作している。レコードやラジオの普及による、地域を越えた全国的な影響が、この時期に一層鮮明になった。

 ピアノ/ヴォーカル担当のチャールズ・ブラウンを擁したジョニー・ムーアズ・スリー・ブレイザーズを筆頭とする、軽妙洒脱なスタイルは「カクテル・ブルース」とも呼ばれ、この地の特色となった。サム・クックの憧れの人でもあったブラウンは非常に強い影響力を持ったシンガーで、彼の唱法に倣ったシンガーは各地に出現した。レイ・チャールズもその一人だ。

 「R&Bのゴッドファーザー」と言われるジョニー・オーティスもロスで活動の地盤を固めている。彼の元にはリトル・エスター、〈ハウンド・ドッグ〉のビッグ・ママ・ソーントン、エタ・ジェイムズ、ビッグ・ジェイ・マクニーリーなど、錚々たるシンガー/ミュージシャンが集った。

 卓越したブギ・ウギ・ピアニストでもあるエイモス・ミルバーン、リトル・ウィリー・リトルフィールド、フロイド・ディクスンはいずれもテキサス出身。西海岸にはテキサスから移住して来たミュージシャンが多い。Tボーン・ウォーカーから直接ギターを教わったピー・ウィー・クレイトンや、ダイナミックなギターと歌で魅了したジョニー・ギター・ワトスンもそうだ。

 ベイ・エリアのオークランドもブルース・タウンとして忘れられない。テキサスやルイジアナから流入したブルースは南部の香りを強く残しており、ロサンゼルスの洗練されたサウンドとはまた異なる西海岸ブルースを生み出した。

Surefire Hits on Central Avenue: The South Central R&B Scene
(Ace CDCHD 884) [2003]
第2次大戦後の西海岸のR&Bシーンから出たヒット曲を収録。1946〜56年作品

文:濱田廣也

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