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『帰ってきたウルトラマン』を観ました。(1話〜10話まで)

まえがき

 『ウルトラ』シリーズを観始めて、早くも7ヶ月が経ちました。今まで『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『ウルトラマンネクサス』『ウルトラマンネオス』『ウルトラマンティガ』などと、6作以上を駆け足で観てきました。けれども、これは2021年公開予定の映画『シン・ウルトラマン』鑑賞に備えてのことでした。
 『シン・ウルトラマン』は、『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』を監督された、庵野秀明監督が企画・脚本を担当される映画です。庵野秀明監督のウルトラマン好きは、『アオイホノオ』や『監督不行届』でも取り上げられる程のものとなっています。そんな庵野秀明監督が特に好きだとされているウルトラマン作品が『帰ってきたウルトラマン』だと言われています。今まで『ウルトラマン』『ウルトラセブン』と昭和のウルトラ作品を観てきたので、わたしは「これからやっと本格的に準備に入れる!」という気持ちでいっぱいになりました。

凡例のようなもの

 以下の感想は視聴当時(2020年7月26日〜2020年8月16日)にふせったー(指定した箇所を伏せ字にしてツイート出来るツール。追加で長文も付けることが出来る)を使用してツイートしたものです。省略した句読点の追加や、語句の統一程度の推敲はしましたが、ほぼそのまま掲載しています。
 今回は第1話から第10話までの分を扱いました。
 全体的にネタバレや、感想を読む方が視聴していることを前提とした内容です。まだ未視聴の方は、その点をご留意ください。

『帰ってきたウルトラマン』第1話を観ました。

 突然主人公が亡くなったと思いきや、突然ウルトラマンと一体化し、なし崩し的にMATに参加するという、初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』と違った導入が驚きでした。
 わたしが『ウルトラ』シリーズを観始めた目的は、2021年に公開が予定されている、庵野秀明監督が制作に関わる『シン・ウルトラマン』の鑑賞に備えてのことでした。そのために、今まで初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』を始めとする『ウルトラ』シリーズを観てきたのです。特にこれから観始める『帰ってきたウルトラマン』は、庵野秀明監督がお気に入りのシリーズとのことで、わたしは「これからやっと本格的に準備に入れる!」という気持ちでいっぱいです。
『 帰ってきたウルトラマン』のオープニングは、初代やセブンと違って、暗くてホラー的な感じではなく、映像と音楽共にきらきらした感じを強く受けました。赤みの強いオレンジが輝く様子は、紹介動画やパッケージで良く観る、夕陽を背景に立つウルトラマンを彷彿とさせます。MATのユニフォームもオレンジですし、『帰ってきたウルトラマン』のイメージカラーはこの時点で決まった感じがしますね。
 さて、『帰ってきたウルトラマン』はそれまで異常気象が連続して発生しており、ついには怪獣が現れるようになった世界のようです。主人公の郷秀樹は自動車工場で働き、カーレーサーを夢見る、しかし全ての命に優しい青年なのですね。前作までのウルトラマンやウルトラセブンに変身する二人と違って、怪獣や宇宙人との戦いとは遠いところで生きてきた人物というところが、際立った特徴だと思います。
 郷秀樹は怪獣に襲われたアパートから少年を救い出すために飛び込んで行き、攻撃を受けて崩れたアパートの下敷きとなり、少年や犬の命を救う代わりに自分の命を失ってしまいました。また、自分が乗るはずだったレーシングカーを、送り火の一部として燃やされてしまいます。ウルトラマンに命を預けられて復活したのは、その後のことでした。更には郷秀樹の復活を知ったMATの隊長によって、スカウトされていたのです。自分に選択の余地の無いまま、様々なことが起こってしまいました。
 命を失ったためにウルトラマンと一体化し、戦うことを運命付けられた例は、わたしの知っている中では初代『ウルトラマン』のハヤタ隊員と、2020年7月26日現在放送中の『ウルトラマンZ』のハルキくんのふたつがあります。前者はウルトラマンが宇宙怪獣護送中の衝突事故で、後者は宇宙怪獣との戦闘中に、命を失ってしまい、ウルトラマンと一体化しています。しかし両方とも、元から防衛隊的組織に所属している隊員という、共通した特徴があります。けれども郷秀樹は、カーレーサーです。たまたま現場に居合わせただけの、ただの一般人です。子供を助けるという勇敢な行動をしたかもしれませんが、戦闘を職業としていない人間に、それをしろと言うのは、酷ではないでしょうか。
 けれども郷秀樹は、そうした出来事に巻き込まれ、次々と運命を決めていかれながらも、冷静に対応している印象を受けます。自分の愛車であった流星1号を送り火にされてしまったのもあるのでしょうか。どこか吹っ切れている感じもあります。
 これから彼は過酷な戦いに身を投じていくのだと思いますが、郷秀樹の戦いを一緒に見届けたいと思います。

『帰ってきたウルトラマン』第2話を観ました。

 ウルトラマンの能力に溺れそうになった郷を仲間達が諭す回でしたね。
 ウルトラマンと一心同体となったタイプの主人公のシリーズには恒例の、ウルトラマンの能力に溺れそうになった主人公を周囲の仲間達が諭す回でした。郷秀樹の場合は、その「能力に溺れそうに」なる動機が衝撃的だと思います。
 ウルトラマンと一体化した郷秀樹は、一度失った命を取り戻すどころか、戦闘能力が飛躍的に上昇し、段位持ちの剣道の達人達を次々と倒し、柔道の達人を投げ飛ばした上に受け止め、更には射撃の腕は文字通り百発百中となっていました。人間技を軽々と超越したその様子は、傍から見れば不気味ですらあります。しかし、その能力を認めた隊長はMATに郷をスカウトしたことを益々喜ぶのでした。
 郷はそのウルトラマンと一体化したことで得た能力で自信過剰となっていました。作戦を無視して怪獣を攻撃し、逆に返り討ちになってしまったのです。その上、ウルトラマンに変身することも出来ず、郷はMATを去ることになってしまいました。
 後のシリーズでも、ウルトラマンとなれる能力を手にしたことで自信過剰になった主人公達が描かれています。
 『ウルトラマンマックス』では、ウルトラマンマックスが人類の味方であり、勇士であることを証明しようとして無茶な行動に走ったカイト隊員が描かれました。ウルトラマンマックスは変身するための条件として、「自分の力だけでは皆の命を守れないと感じた時に」と例示をしていました。変身出来なかったのは、自分の手で怪獣に対処出来る時にそうしなかったことが原因でしょう。
 『ウルトラマンZ』でもウルトラマンゼットに変身しようとして出来なかったハルキくんの問いに、ゼットが「ちゃんとギリギリまで頑張って、俺達の気持ちが『グッ』と出来上がってからじゃないと、ウルトラマンにはなれないんでございますよ」と諭す場面がありました。
 今回も上記2作と同様で、自分達人間の手で怪獣に対処出来る時にそうせず、すぐにウルトラマンの力に頼ろうとしたので、ウルトラマンに変身出来なかったのだと思います。初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の最終回でも、「我々地球人の手で」守っていかなければならない、と隊長達が言っています。ウルトラマンはどうしても地球人の手には負えない時に、手助けをしてくれる存在なのだと思います。
 郷秀樹は、隊長や坂田さん達に突き放されつつも見守られていたお陰で立ち直ることが出来ました。そして頑張って人々を助けようとする姿勢を見せた時、光が輝き、ウルトラマンに変身することが出来たのでした。
 再び隊長や坂田さんに認められたことで、流星2号の製作にも取り掛かれるようで良かったです。急に強大な力を手にしたことで、戸惑いもあったと思いますが、郷にはそれに付き合えるようになって欲しいです。

『帰ってきたウルトラマン』第3話を観ました。

 ただひとりでも、信頼してくれる人がいることは素敵だなと感じました。
 霧吹山に怪獣がいるかいないかで、郷と他の隊員達が揉めるという内容でした。
 郷秀樹は前回で取り上げられた通り、ウルトラマンの能力を得たことで五感が鋭くなっているのですね。それで他の隊員達のように、能力を磨いた一般的な人間以上の、超人的な聴力や視力、認識能力を持ってしまっているのでしょう。今回は郷秀樹が未だに自分の能力に振り回されているために誤解が生じてしまったと言っても過言では無いと思います。
 そんな中で、加藤隊長は中立的な立場で揉め事を仲裁しようとしてくれました。「怪獣を見た」「怪獣の声を聴いた」、また「バカバカしい、ノイローゼだ」「見間違いだよ」という意見の対立を、自分が自ら現場検証することによって判断しようとしてくれたのは、素晴らしかったです。
 結果、加藤隊長の現場検証の時に無事に怪獣は発見され、怪獣を退治することが出来ました。もし、隊長が霧吹山へ赴かず、司令室の机で多数決によって郷の意見が黙殺されていたら、怪獣が原因による事故は続いていたかもしれません。
 また、今回は郷秀樹の休暇が描かれました。たった一日という期間でしたが、坂田さんと共に流星2号の設計に勤しんだり、音楽を教えたり、趣味を目一杯楽しんでいるようで安心しました。初代『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』までは主人公達を始めとする隊員達の休暇は描かれず、ずっと働き詰めで、心配になるほどでした。『ウルトラセブン』に至っては働き詰めで戦い続けていたために消耗し、地球を去る結果になっているので尚更です。坂田さんも「怪獣の声が聞こえる」という郷の体調を気遣ってくれたのが嬉しかったです。アキさんの言う通り、5分でも貴重な休みを楽しんで欲しいです。

『帰ってきたウルトラマン』第4話を観ました。

 初めてウルトラマンが敗北し、主人公とMATがそれぞれ怪獣に対して対策をする様子が描かれました。
 キングザウルス3世は、正面にバリアを張る能力を持っていました。その能力から、正面からのビーム攻撃には無敵を誇るという難敵でした。角による攻撃も強力で、それによってウルトラマン=郷秀樹は左脚に怪我を負ってしまいました。しかも、ただ叩いただけでは折れるどころかこちらの手刀が痛むだけという有様です。
 これに対し、MATは対策を講じます。正面からの攻撃を避け、直上から攻撃する訓練を開始しました。郷秀樹も寝ているばかりではおれないと無茶をし、病院を抜け出してジャンプキックの特訓を行います。
 今までウルトラマンの能力に振り回され、頼り切っていた郷が、逆にウルトラマンの力に頼るまいと特訓を始めたのです。ウルトラマンの力に頼らず、変身者の側が特訓をして対策をするのは、『ウルトラマンZ』でもありましたね。ウルトラマンの力のみではどうしようも無かった部分を、変身者の側でアイデアを出し、特訓をすることでカバーするのは、初代やセブンでは見られなかった部分なので、変身者の意識を残したまま一体化したウルトラマンに特有のパターンなのかなとも思います。こうしてウルトラマンと変身者が協力しあって怪獣に対処していくのは、とても好きなシーンです。
 無事に訓練の成果が出、キングザウルス3世の角を蹴り折った時は「やった!」と思いました。サブタイトルからすると、これが「流星キック」なのでしょうか。
 また、郷を見舞いにハイヒールで歩いて病院や平井峠まで行くアキさんはすごいと思いました。アキさんは郷に対して恋心を抱いているのかなと思いますが、わざわざハイヒールを履いていくのは、少しでも美しい自分を見せるための努力なのかと考えました。アキさんの恋が叶う日が来ることを、願って止みません。

『帰ってきたウルトラマン』第5話を観ました。

 グドンとツインテール、そしてその卵を前に、仲間割れしたり、上司へ意見したりパワハラされたり、不安が尽きません。
 工事現場で見つかった怪獣の卵を前に、郷と岸田隊員の意見が割れるところからストーリーは始まりました。卵はマットシュートで焼かれたものの、郷はもっと調査するべきだと意見を頑なにしますが、長官の叔父を持つ岸田隊員は処分したのだから済んだことだと跳ね除けます。勿論、防衛隊であるMATは加藤隊長の言う通り、即断即決の場面が多いと思います。しかし、わたしは郷の言う通り、怪獣の卵である以上、研究機関に回して調査するべきではと思いました。
 グドンを初めて発見した時もそうです。少女が居る可能性がある以上、攻撃行動は控えるべきだったでしょう。岸田隊員の「自分に恨みがあったから、反抗したのだ」という意見は、自分の叔父が長官であるという、強力なコネクションや、自分が郷よりも先輩だというプライドの面から感情的になりすぎていると言わざるを得ません。
 いよいよ長官が怪獣の卵をMM爆弾で破壊しろと命令し、それに郷が意見した時は、長官が「自分に反抗する気か。長官の命令に逆らうとは、どういうことか分かっているのか」と脅しを掛けました。郷は直前の怪獣が起こした地震によって、アキさんをはじめとする人々が生き埋めになっていることもあって、作戦の実行を遅らせるよう意見したのです。長官は東京全体の人口と、生き埋めになった人々を天秤に掛け、郷の意見を聞かないどころか、「なあに、いざとなったらウルトラマンが助けてくれるさ」と気にもしない様子でした。長官はパラハラどころか、ウルトラマンの存在意義すら勘違いしているようです。
 前も書きましたが、ウルトラマンはどうしても地球人の手には負えない時に、手助けをしてくれる存在であって、安易に頼ってはならないものなのだと思います。
 しかし、いよいよツインテールが卵から孵り、生き埋め現場に危機が迫った時、郷はウルトラマンに変身しました。けれどもツインテールは手強く、時同じくしてグドンもそこへ来襲します。今のところ、このウルトラマンにはピンチか敗北の印象が強いのですが、勝てるのでしょうか?

『帰ってきたウルトラマン』第6話を観ました。

 MATの隊員達の結束を観て、郷は本当に良い仲間達に恵まれたと思いました。
 グドンとツインテール、2体の怪獣達が生態系を表現しているのがすごく良いと思います。グドンはツインテールを常食とすることは、前回明らかになりましたが、グドンがツインテールを追って行動すること、餌とするために攻撃を行う様子は、グドンを頂点とする生態系、そして怪獣が自然の一部なのだということを思い出させてくれました。
 結局ウルトラマンが怪獣を取り逃がしたことにより、事態は悪化していきます。前回使用が示唆されていたMM爆弾を使用するも、グドンには効き目がありませんでした。それを見た長官と参謀は、小型水爆にも匹敵する威力を持ち、鉄やコンクリートをも溶かす爆弾スパイナーを使うことを検討します。それが郷の前に明らかになった時、原爆を受けた後の広島・長崎の写真が使われたのが印象的でした。
 この場面で思い出したのは、映画『シン・ゴジラ』で東京に熱核兵器を使用することがいよいよ明らかになった時です。あの時も広島・長崎の写真が使用され、熱核兵器の具体的な恐ろしさが表現されました。『シン・ゴジラ』を手掛けたのは庵野秀明監督ですが、『帰ってきたウルトラマン』へのオマージュが強い『新世紀エヴァンゲリオン』を製作されたあたり、この場面が念頭にあったのではないかと思われてなりません。
 上層部へスパイナー使用を思いとどまらせるために、MAT全員で結束を固めたのは素晴らしかったです。それぞれがそれぞれの立場で、最悪の事態を避けるために行動する様子は、観ていて感動します。加藤隊長から、岸田隊員まで、皆が知恵を出し、麻酔弾を使用して戦うことを提案したのです。長官からは「これで失敗したら、MATは解散だぞ」と言われながらも、果敢に怪獣に立ち向かっていく様子は、それこそ『シン・ゴジラ』でのヤシオリ作戦を彷彿とさせました。
 泥だらけになりながらウルトラマンを援護して戦い、グドンを撃破した後、全員の笑顔が見れたのは、本当に嬉しかったです。これだけで、次もきっとMATが活躍しているのを観れると安心します。

『帰ってきたウルトラマン』第7話を観ました。

 MATが団結して事に当たっていたのがとても良かったです。
 『帰ってきたウルトラマン』には休暇の描写が多くあるのが良いですね。ただ、怪獣と戦う職業であるが故に、緊急事態には即応しなければならなかったり、身の回りの異変にも気を配らなければならなかったりと、休暇中も気が抜けないのは残念なところではあるのですが。今回も休暇中に岩の傷跡に気づいたことで、事件が発覚します。
 写真であっても、それが子供の撮ったものというだけで手掛かりに成り得ないのは驚きでした。写真はそこにあった物体そのものをありのままに写すものなので、大人が描いたスケッチよりも信憑性が高そうなものですが、そういうものなのでしょうか。郷の意見がウルトラマンの能力が合わさって、超人的な鋭さを持っており、人間の感覚を超越したものになってしまい、逆に信じて貰えないのと違った悔しさがありますね。
 しかし今回は今までよりスムーズに作戦が実行された感じがあります。前回までのストーリーを経て、MATの結束が深まったということでしょうか。郷の勘を信じ、作戦を実行させた加藤隊長は、彼を推薦しただけあると思います。
 また、ウルトラマンも順調に戦闘状況を進めていました。今作のウルトラマンは前回までの印象から打たれ弱い感じがしていたのですが、相手の火炎を腕をクロスして受け止めるなど、落ち着いて対応しています。そして止めだけはスペシウム光線を使っていますが、ほぼ格闘技をメインにして戦っており、体力勝負も引けを取らないと思います。戦闘の経験値は相当ありそうです。
 次回もこの調子で戦ってくれることを願います。

『帰ってきたウルトラマン』第8話を観ました。

 自分のミスが祟ったとは言え、大切にしている鉢植えを壊された郷が不憫です。
 郷が自分で言う通り、ウルトラマンと一体化した郷秀樹は、最早誰とも比肩しない強さを持っています。銃の腕も、柔道の腕も、2話で発覚した通り抜きん出ています。しかし唯一無二とも言える弱点が、今回明らかになりました。
 怪獣を発見した時、隊員の殆どが油断していました。「この程度の相手なら、2、3体束になって掛かって来ても良い」だの、「田舎のうちの牧場でも飼っておけそうだ」だのと、余裕をこいていました。その影響が悪い意味で郷にも出たのです。確かに、いつもの郷なら慎重に撃てば、X弾の威力でもって一発で仕留めていたでしょう。でも油断をしており、緊張感が無かったからこそ、炎を吐きかけられることへの警戒感も無かったのだと思います。
 また、自分の気付きを、些細なことであっても報告しなかったのも良くなかったと思います。「そんな感じがします」ではなく、あの後思考したことをそのまま隊員達に説明していれば、作戦をもっと考えて貰えたはずです。
前作までのシリーズでも、同様のことはありましたが、この頃は未だ独断専行が通用していたのでしょうか。その周辺の考え方をもっと知れれば、ストーリーへの更なる理解が深まりそうです。
 そして今回は、怪獣の進路上に都市部があったことで、避難命令が出される場面がありました。グドン来襲の回でも、街に避難命令が出され、疎開させられる場面がありましたが、今回もその様子が詳細に表現されたと思います。次郎くんの友達の家へ、親戚が避難してきたことが取り上げられたのは、街の様子を知ることが出来る良い機会だったと思います。
 今回の戦いは、怪獣が爆弾で爆発するまでの時間との戦いでしたね。体力が尽きるや否や、そこへ文字通り胡座をかいて座り込んでしまう怪獣を、どうにかしてニトログリセリン工場から遠ざけることが求められました。
 『帰ってきたウルトラマン』は毎回、何らかの形でピンチが訪れるのが、見どころだと思います。
 更に、今回は視聴者の不安を煽るかのように、2度も怪獣が工場の側で大爆発するという映像が差し込まれました。観ていて本当に驚きました。拡大されて表示される時計の文字盤と、刻々と時を刻む秒針の音も、それに大きな役割を果たしました。
 最終的に地面からウルトラマンが飛び出し、空中で処理されることで戦いが終わりましたが、本当に驚かされてばかりでした。

『帰ってきたウルトラマン』第9話を観ました。

 飛行時間の制限を設けているMAT、メンバーへの仕事への管理が行き届いているのがすごく好感が持てます。
 南隊員の活躍が際立った回でした。郷の入隊当初から好意的に接してくれる南隊員が、郷秀樹から先輩を付けて呼ばれるのが、すごく微笑ましいですね。後輩に対して偉ぶったりせず、むしろ休暇を予定通りに取れるように気を使ってくれたり、冗談を言ったりする一方で、自分の仕事に責任を持ち、モンスター・ソナーの状態を心配したり、不時着した島に怪獣が居れば、自分の体調を省みることなく立ち向かっていくのはすごいですね。
 また、今回も郷秀樹が人並み外れた能力を発揮しました。MATジャイロやアローが解体されているのに、そこから1時間で組み上げてしまうとは。元々自動車工場で働いていたので、メカいじりの経験はあったのでしょうが、プロが工程5時間と見積もっていたのを短縮してしまうのには、驚きを隠せません。
 ですが急ぐあまり、燃料補給を途中で切り上げてしまうのは、今回のように怪獣の来襲を想定しないあたりに、やっぱりというか、郷らしい油断があるなと思ってしまいました。
 今回の怪獣との戦いでは、久し振りに怪獣への部位破壊攻撃が見られました。最近観たところでは、『ウルトラマンZ』でエリマキテレスドンの襟巻きを引き千切って取っていた場面がありましたが、あれすら新鮮に感じた覚えがあります。怪獣は皆爆発して終わるので、部位破壊はしなくても良い風潮があるのでしょうか。
 前作までと違い、途中で中断されたり、日程を変更される可能性があるとは言え、休暇を積極的に取らせて貰えるMAT、良い組織ですね。飛行時間の制限があり、それを超過した場合の罰則規定もあるあたり、隊員達の仕事への管理と福利厚生が行き届いている感じがして、すごく好感が持てます。
 そもそも、隊員が休暇を取っている描写は、前作までや、平成に製作されたシリーズと比べても多い気がします。郷秀樹は毎回休暇を取っているのではないでしょうか。隊員の休暇が重視されるような社会的状況だったのでしょうか。製作当時の状況が気になります。

『帰ってきたウルトラマン』第10話を観ました。

 地面に埋まった怪獣の心音を確認出来る程の聴力を持っている郷には、毎回のことながら驚きです。
 今回は子供達のロマン、恐竜に焦点が当たりました。今も昔も、恐竜発掘は子供の夢なのだと思いました。
 私事ですが、小学生の頃は地学を研究なさっていた先生は、理科の時間ではアイドルでした。一回古い地層が露出しているところを掘り、実際に化石を発掘できる授業があり、とても楽しかった記憶があります。
 きっと今回登場した恐竜研究会も、そういった子供達の集まりなのでしょう。
 しかし、怪獣となれば話は別です。以前、怪獣の脅威に晒されて疎開させられそうになったり、怪獣の来襲が予想されたために親戚の家に避難して来た子も知ったのに、怪獣を未だに愛し、怪獣ごっこに勤しみ、自分達の目の前で人間を殺した怪獣に対しても「殺さないで」と言える子供達の気持ちは分かりません。大地震や津波に襲われた子供達が「地震ごっこ」や「津波ごっこ」を行っていたという事例は聴いたことがありますが、あれと似たようなことなのでしょうか。
 また、人間に被害が出たにも関わらず、「子供達の願いだ」という名目で「爆破しないでください」と言える郷や先生の気持ちも分かりません。「生き物全てに優しい」と「子供に優しい」は違うと思います。後者は前者のうちの、限られたカテゴリーだからです。わたしには、失われた命を無視しているようにも見えてなりません。隊長のふたつの意見、「あのままでは工事に支障を来す」「あの溶解液は恐るべき凶器」のうち、後者は理に叶っていると思います。人間を危険から守る、それだけで爆破命令に賛成できます。
 今回は『ウルトラマン』でガヴァドンが登場した時のように、ウルトラマンが子供達から支持されない戦いでした。戦いを野次馬に来た子供達に「ウルトラマン、ステゴンを殺さないで!」と叫ばれたのです。しかし、怪獣ステゴンが子供達のスターであるように、ウルトラマンも同様に子供達のヒーローに変わりありませんでした。ウルトラマンがステゴンの攻撃を受けた時、子供達の態度が一変して「ウルトラマン、頑張れ!」になったのは、驚きですらありましたが、それだけでウルトラマンの存在意義が確認出来た気がします。
 ステゴンは星になりましたが、ステゴンもまた、ガヴァドンと同じように空から見守っているのでしょうか。

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