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なぜ、「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」は大ヒットしているのか?

※鬼滅の刃が好きすぎて妻の「馬場愛子」が勝手に分析したものを特別に投稿いたします!

「鬼滅の刃」とは2016年より週刊少年ジャンプで連載開始された、吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)氏による大人気漫画です。鬼に家族を殺された主人公が鬼狩りになるという暗めの内容にもかかわらず、小さな子どもから大人まで幅広いファンがいます。コミックスの販売は1巻から22巻までのコミックス累計発行部数が、電子版を含めて1億部を突破、またこの秋から上映された映画「無限列車編」は初日の興行収入が46億円を超えて映画界の救世主と謳われています。

「鬼滅の刃」の連載がスタートした2016年当時のジャンプには、「ONE PIECE」などの大人気作が揃っていました。そんな中、「鬼滅の刃」の滑り出しは決して好調とはいえませんでした。作者の吾峠呼世晴は本作が初連載。ジャンプ作品らしからぬ暗さを孕んだシリアスな作風や、鬼が人を襲う残酷なシーンもあり、マイナー扱いをされていました。では、どのようにマイナーからメジャーな存在へ変化していったのかポイントを見ていきましょう! 

① 人々の心に勇気を与える原作ストーリーとキャラクター構成

大前提として、原作の世界観やキャラクターの魅力、作家の言葉選びの巧みさ、設定の秀逸さなど、原作のクオリティが非常に高かったことがあります。「鬼滅の刃」の作中には多くの登場人物が現れますが、キャラクターの特徴がとても明確で、難しい名前にもかかわらず小さな子どもにも覚えられるほどユニークです。また、登場人物がなぜ今のようになったのか、その背景や心情描写がきちんと描かれているため、読み手が感情移入しやすくなっています。
(あまり書くとネタバレになるため、ややぼかしますが)特に、主人公の炭治郎が心優しくセンシティブな人物として描かれていました。炭治郎は自分がどんな過酷な状況におかれようと、相手の痛みや辛い境遇を想像し、どんな気持ちだったのだろうと思いやる優しさを忘れません。しかし完璧かというとそうではなく、痛いときには弱音も吐くし、炭治郎よりも強いキャラクターも沢山登場します。修行や戦いの中でボロボロになっていく仲間とともに、炭治郎が成長していく過程に、読者は感動を覚えていきます。

キメツ1

また、ただの戦闘ものではなく、マンガ全体の根底に、「鬼」という不条理な社会悪の存在によってもたらされた悲しみや怒りが流れ、シリアスなストーリーの雰囲気を作っています。妙に現代社会とかぶるのです。
敵である鬼たちも、彼らが抱える「鬼にならざるをえなかった」不幸な生い立ちや悲惨な境遇を持っており、よくあるすっきりとした勧善懲悪とはなっていません。味方も敵も、苦悩を持ち、命の重さを知りながら命のやりとりをする様子が描かれます。その「割り切れない感じ」が妙にリアルなところも、人気の秘密と思われます。

個人的に一番「そうきたか!」と思ったのは、主人公たちの技が呼吸法を使って繰り出されること。「呼吸が浅い」と言われている現代社会において、「呼吸」の重要性に意識をむけた人も多いのではないでしょうか。そして、主人公の特技が「鼻が利く」こと、仲間の一人の特技が「耳が良い」ことなど、自分の身体を活かした戦い方も、「鬼滅」の世界をなんとなく身近に感じてしまう理由かもしれません。
伏線も多く、思わず「ここにつながるの?」と驚くような展開も多数あり、読者を多いに愉しませてくれるストーリー構成なのです。また名セリフも多く、「つらい毎日を生きていくための勇気をもらった」という感想を持つ人も多いようです。
一方で、連載開始時は「絵が粗い」「読みにくい」などの評価もあり、原作漫画としては低空飛行を続けていました。

② 妥協なきクオリティのアニメ化により人気が爆発

鬼滅の刃の戦略がすごいのはここからです。当初のマイナー的な立ち位置も、アニメ化により一転することとなります。2019年4~9月に放送されたテレビアニメが人気となり、コミックスの売り上げが急増したのです。テレビアニメ開始時の2019年4月のシリーズ累計発行部数は約350万部で、その後約1年半で約29倍の発行部数一億冊越えとなりました。

キメツ2

原作漫画のアニメ化はよくあるパターンですが、なぜ鬼滅の刃だけがアニメ化により爆発的に売り上げが伸びたのでしょうか。その背景には、「鬼滅の刃」のアニメを手がけたアニメ制作スタジオ「ufotable」(ユーフォ―テーブル)の存在があります。

ufotableは現在、最も勢いのあるアニメ制作スタジオです。ufotable制作のアニメの最大の特徴は、2D(作画)と3D(CG)が融合した美麗な作画。そのクオリティは、演出・作画・背景・3DCGなどほぼ全てを内製で行い、スタジオ内で精度の高いコミュニケーションを取っているからこそ生まれるものだといいます。

キメツ3

「鬼滅の刃」原作の暗く残酷な世界観をそのまま残しつつ、作画として美しく精密な作品としてアニメ化を実現しました。
次の2つの画像を比較しても、アニメの方がよりリアルに世界を再現し、しかも美しく表現されているのがわかると思います。(アニメの方(下)が作画が整っています。)画像だけでなく、妥協のない声優の選定や、主題歌やBGMのコンセプトも見事に統一され、世界観を創り出していました。

(上は漫画1巻第1話から、下は同じシーンのアニメバージョン)

キメツ4 (2)

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つまり、アニメ自体のクオリティがとてつもなく良い出来であったということがまず1つ目の理由です。

③ 「オンデマンド配信サイト」や「映画化」多メディアを使っての情報発信

次に、このよくできたアニメが、TV放映だけでなく、大手配信サイトであるNetflixやAmazonプライム、U‐NEXTなどの20のオンデマンド配信先と提携したことが、視聴者との接点を増やし、知名度が伸びた大きな原因と言われています。
テレビ放映なら一度見逃すともう見られませんが、配信サイトではいつでも何回でも視聴できます。ちょうどここ数年、テレビ離れが進み、スマホやパソコンで好きな時に好きな番組を視聴する層が広がりました。さらに、コロナ禍でのステイホームにより、動画配信サイトへ入会する人たちが激増したことも追い風になりました。アニメがランキング上位に上がり、口コミで広がり、ますます「鬼滅の刃」はのファンが膨大に増えたのでした。

さらに驚くべきことに、NetflixやAmazonプライムでアニメを見て、「鬼滅の刃」のファンとなった人たちが、マンガの単行本を買うという流れができました。というのも、アニメの全26話は、原作単行本でいうと第1巻から第7巻の途中までの話であり、「アニメの続きが知りたい」と思えば、単行本の7巻以降で読むことができたのです。(単行本は2020年10月現在22巻まで発売中)。
つまり、「アニメの続きが見たい!」と思わせる内容でアニメ最終話が終わっており、その続きを読みたくてマンガ本を買う、という流れにはまった消費者がとても多かったのでした。(かくいう私も、アニメを見終わったあとに、大人買いドットコムで全巻大人買いをしてしまいました。)。この「マンガ→アニメ→マンガ」という視聴者の購買行動の流れにより、コミックスが爆発的に売れたのでした。「続きが読みたい」という衝動的ニーズを上手く利用して購買につなげる、めちゃくちゃ上手い戦略だといえます。

④ 自社のことのみならず業界全体の利益を考える姿勢

同作は、今年5月に人気絶頂の中、約4年3カ月にわたる「週刊少年ジャンプ」で最終回となりましたが、その後も映画化や、コラボグッズの販売への積極的な取り組みを行っています。また、「鬼滅の刃」は数多くの店舗と提携して大々的なキャンペーンを実施しており、ローソンなどのコンビニ他、ドン・キホーテ、くら寿司などの大手外食チェーン、ビックリマンチョコ、などの商品が販売されています。ユニクロが『鬼滅の刃』とコラボした結果、売り上げが29.8%も増加したというニュースもあります。今や「鬼滅」という字を見ない日はないほどの広がりを見せています。
日本の2020年前半は、コロナ禍で売り上げが下がる企業が激増し、経済が低迷していました。
しかし、そんな中「鬼滅の刃」の経済効果は現時点で約500億円といわれており、映画が公開される下半期以降もさらに右肩上がりに上昇すると予測されます。コロナ禍で止まりかけていたお金の流れの川が、鬼滅の刃ブームのおかげでまたお金の川が流れ始めた、そんなイメージです。

多くの映画がコロナの影響で封切りを延期するなか、10月16日に映画「無限列車編」を公開した鬼滅の刃。その決断も「映画界を復活させるためにリスクを負って公開した」とも一部で言われています。まさに「仲間を助けるために自分のリスクを負ってでも戦う炭治郎」と重なります。先行きの見えない時代の「コロナ禍」や「人々の不安」という鬼を滅するため、戦ってくれているのかもしれません。

以上から

① 人々の心に勇気を与える原作ストーリーとキャラクター構成
② 妥協なきクオリティのアニメ化により人気が爆発
③ 「オンデマンド配信サイト」や「映画化」多メディアを使って情報発信
④ 自社のことのみならず業界全体の利益を考える姿勢

という4つが、「鬼滅の刃」ブームの理由という分析でした。

今回は鬼滅の刃が大好きな妻による記事でしたがいかがでしたでしょうか?それではまたお会いしましょう!

※投稿内の写真は『鬼滅の刃』公式サイトより引用。漫画は「鬼滅の刃」より引用しました。

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