生徒とシャボン玉

放課後。このまま帰っても塾に行くだけだから、ぐずぐずと校庭で遊んでいる子たちを校舎の窓からただ眺めていた。なにかが動いた気がして顔を上げると、空にシャボン玉が浮かんでいた。虹色に光を反射させて、ふわふわと揺れている。シャボン玉にしか見えなかったけど、かなり大きかった。直径1メートルくらいある。
校庭で遊んでいる子も、何人かが気づいて空を見上げている。ゆっくりと降りてきたシャボン玉に一人の子が手を伸ばして触った。ぱちんとシャボン玉がはじけた瞬間、その子も消えてしまった。
何が起こったのかわからなくて固まっていた。別の子がシャボン玉に手を伸ばす。触れた瞬間、シャボン玉ははじけて、触った子もやっぱり消えてしまった。ぼくと同じように呆然としている子が何人かいる。シャボン玉自体に気づかずに遊んでいる子もいる。鬼ごっこの鬼から逃げて笑いながら走っている子にシャボン玉が近づいていく。風に流されてるんじゃなくてまるで意思を持って追いかけているようだった。男の子の背中にシャボン玉がぶつかって弾けると、男の子も消えてしまった。それを見ていた4~5人の子がパニックになって逃げだす。泣いてる子もいた。シャボン玉が追いかけていく。みんなが必死になって逃げれば逃げるほどシャボン玉は吸い寄せられるようにスピードを上げる。
逃げられた子は一人もいなかった。シャボン玉も子どもたちも消えてしまった。空っぽになった校庭をどれくらい眺めていたのか。どうしたんだ、と先生に肩を叩かれてはじめて我に返った。
何人もの子たちが一度に行方不明になって、当然大騒ぎになった。先生や警察に見たままを話したけれど、誰も信じなかった。消えた子たちはそれきり行方不明のままだ。


ろきせの今日のお題は「生徒」「シャボン玉」
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