灰と絵本

灰の中にちらりと赤いものが見える。拾い上げてみるとそれは本だった。灰を払うと真っ赤な表紙が現れる。
最初のページには灰が描かれている。ページをめくると、灰のまんなかが微かに赤く見える。ページをめくる。赤いものは小さな火種だ。さらにページをめくると、火種が赤々と燃える炎になる。透明な赤、黄、青。金色の火の粉。ページをめくるたび、さまざまな表情の炎が現れる。
最後のページをめくると、本を取り落としそうになる。ページの上で本物の炎が踊っていたからだ。炎はめらめらとページを舐め大きくなる。持っていられなくなり、本はどさりと灰の山の上に落ちた。炎は本をまるごと飲みこんで大きくなる。表紙やページが黒くそれから白く灰になっていく。炎はだんだんと小さくなっていく。すべてが燃え尽きると炎は消えて、灰の山だけが残る。
風が吹いて灰の山が少し崩れる。灰の中にちらりと赤いものが見える。


ろきせの今日のお題は「灰」「絵本」
https://shindanmaker.com/981568

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?